陸上の世界選手権が4日(日本時間5日)、12年ロンドンオリンピックのメイン会場だったロンドン・スタジアムで開幕します。13日まで10日間の日程ですが、第1日の注目は男子100メートル予選。日本選手初の9秒台の期待がかかる3選手が準決勝進出を目指します。
東大阪市出身。中学時代は府の大会で100メートル5位入賞がある程度でした。しかし、花牟禮監督が「走りがいい。将来性がある」とスカウトし、研さんを積んでいます。卒業後、関西学院大へ進学。2017年6月10日、日本学生陸上で多田は素晴らしい走りを披露しました。準決勝で国内の競技会で日本人初の9秒台をマーク。追い風4.5メートルで参考記録になったものの、日本中が驚いた。決勝では、自己ベストを大幅に更新する10秒08で優勝。まぐれではないことを証明しています。
振り返れば、多田の名前が全国区となってからまだ3カ月も経っていません。5月21日、ゴールデングランプリ川崎で、リオデジャネイロオリンピック銀メダル、米国のジャスティン・ガトリンが優勝を飾っていますが、
「素晴らしいスタートを切った選手がいた。本当に驚いたよ」
2位のケンブリッジ飛鳥ではなく、3位だった多田の名前を最初にあげたのです。
急激に変わったのは今年になってから。大阪陸上協会が主催し、米国遠征が行われました。そこで、ジャマイカのアサファ・パウエルと合同練習するチャンスに恵まれ、スタートや筋力トレーニングのアドバイスを細かく受けたそうです。この出会いがターニングポイント。少しのヒントで眠っていた素質が開花したといいます。ちょっと信じられませんが、多田を取材した報道陣が異口同音話すのは、「賢い」。
これは高校時代、指導を受けた大阪桐蔭高陸上部・花牟禮(はなむれ)監督のおかげといえるでしょう。根性や忍耐などのいわゆるスポ根を排除。ただ、走るだけではなく、脳を活性化させるトレーニングを叩き込まれています。体育会系の部活では早朝練習を決まって行いますが、同校ではミーティングを通じ、脳トレやメンタルトレを推進しています。コツコツと積み上げ、パウエルとの出会いで開花しました。
体操の内村は「美しい体操」を目指していますが、多田のスタート、走りも実に美しい。日本陸連の伊東浩司強化委員長は、
「足の回転がこれほど美しいランナーを見たことがない」
と話しました。
勢いはロンドンへ移っても変わりません。
「プレッシャーは感じない。それが、ぼくの武器です。また、大会が大きくなればなるほど楽しい」
と言います。世界のトップとスピードを競う。まわりに引っ張られて、初の9秒台を、ぜひ。楽しみです。
8月4日(金) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」