日本新記録を樹立した設楽悠太が刺激を受けたという大迫傑とは?
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昨日行われた東京マラソンで設楽悠太選手が2002年に高岡寿成選手が打ち立てた日本記録を5秒縮める「2時間6分11秒」でゴールイン。実に16年ぶりとなる日本新記録を樹立しました。レース全体でも、優勝したケニアのディクソン・チュンバ選手に次ぐ2位となり、2年後の東京オリンピック・男子マラソン代表に名乗りを挙げました。
今年の東京マラソンは去年とコースが変わり、開始前から「高速レースになる」と予想されていました。世界新記録を狙い、序盤からハイペースで飛ばす海外勢に食らいついていったのは、井上大仁選手と、設楽悠太選手でした。二人は、日本記録を大幅に上回るペースで中間点を駆け抜け、31キロを過ぎたあたりで、設楽選手は一瞬、遅れかけましたが、38.2キロ地点で井上選手に追い付き、日本人トップに立つと、さらに前を走っていた海外勢2人を抜き去り、2位に浮上。そのままペースを緩めず、みごと日本新のタイムでゴールイン。
レースを終え、
「32キロぐらいで負けたと思ったけど、30キロ以降は走力ではなく、応援の力で走れた」
と語った設楽選手。所属するホンダの応援団、そして家族の声援が沿道からしっかり本人の耳に届き、大いに励みになったそうです。
さらに、設楽選手が日本新を上回るペースで走っていると知った一部の観客から、こんな声援も飛びました。
「1億円、とってこい!!」
実は、日本記録を更新して日本人トップになった選手には、実業団マラソン特別強化プロジェクトから、1億円の報奨金が出ることになっていたのです。並の選手だったら、つい余計なことを考えてプレッシャーが掛かったかもしれませんが、設楽選手は違います。
「最後まで『1億円とってこい!』と声を掛けてくれる人がいたから、しっかり走りきることができた」
とコメント。設楽選手、ハートの強さも並じゃないようです。
東洋大学時代は、双子の兄・啓太選手とともに箱根駅伝に出場。2012年、14年と2度の総合優勝に貢献した設楽選手。マラソンに挑戦したのは、去年の東京マラソンが初めてで、今年と同じく、日本記録を超えるペースで飛ばしましたが、終盤に失速。タイムは2時間9分台の11位に終わりました。
1年後、その悔しさをバネにみごと日本記録を塗り替え、大金も手にした設楽選手。この快挙に大喜びしたのが、日本陸連のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーを務める、瀬古利彦さんです。
「やりました! 16年ぶりですからこんなにおめでたい話はない」
と手放しの喜びようで、
「短距離で9秒台を出した桐生選手の役目を、設楽選手がやってくれた。これで一気に東京オリンピックに向けて弾みがついた」
とコメント。
今回、日本人2位の井上選手も2時間6分台をマークしましたが、これからは設楽選手の新記録をみんなが目標にすることで、全体のレベルアップにつながる、というのが、瀬古さんの見方です。
しかし設楽選手自身も、実はある選手の活躍に刺激を受けていました。その選手とは、去年の12月に行われた福岡国際マラソンで、当時日本歴代5位の2時間7分19秒をマークし、3位に入った大迫傑選手です。
設楽選手と大迫選手は、同じ1991年生まれの26歳。去年、初マラソンを経験した点も共通しています。二人が同じレースに出て火花を散らせば、もしかすると、もっとすごい日本新記録が生まれるかもしれません。
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