テニス界に、新たなニューヒロインが誕生しました。日本時間の昨日未明、アメリカ・カリフォルニア州のインディアンウェルズで行われた「BNPパリバ・オープン」の女子シングルス決勝で、世界ランク44位の大坂なおみ選手・20歳が、悲願のツアー初優勝を飾ったのです。
この「BNPパリバ・オープン」は、4大大会に次ぐ格付けの大会で、優勝しただけでも大変な快挙ですが、決勝までに破ってきた相手がこれまたすごい。
1回戦で、元世界ランク1位・ロシアのシャラポワ選手に勝ったのを皮切りに、2回戦では、元2位のラドワンスカ選手(ポーランド)、準々決勝では、元5位のプリスコバ選手(チェコ)、準決勝では、世界ランク1位のハレプ選手(ルーマニア)を撃破する大金星! そして決勝は、ロシアの新鋭、ダリア・カサトキナ選手との「20歳対決」をストレートで制して、みごと初の栄冠を手にしました。
大阪生まれの大坂選手は、お父さんがハイチ系アメリカ人、お母さんが日本人のハーフです。幼い頃から、父親のレオナルドさんが、自ら大坂選手を指導。4歳のときに一家でフロリダに移住し、テニスに打ち込んできました。
180センチの長身から繰り出す、時速200キロ近い強烈なサーブを武器に、一昨年、初めて参加した全豪オープンで、無名ながら3回戦に進出。全仏・全英・全米でも3回戦進出を果たし「近い将来、必ずブレークする逸材」と言われていましたが、ひとつ大きな課題だったのが「精神面」。
一昨年は、思い通りのプレーができないと試合中にカンシャクを起こし、ラケットをコートに叩き付けて壊す、というシーンもありましたが、20歳になった今は、精神的にも成長。そんなことも滅多になくなりました。
昨年末、コーチがサーシャ・バインに変わりました。この新コーチは常に選手第一。冠婚葬祭よりも選手を選ぶという33歳。2015年までの8年間、セリーナ・ウィリアムズの練習相手を務めるという経験を持っています。
当時のセリーナはグランドスラムを4度連続優勝というダントツの存在。そのセリーナの攻撃方法から精神面まで、身をもって知るサーシャ・バイン。彼が大坂の快進撃に少なからず影響していると言えるでしょう。
ラリー中は激しくても、コートを離れると、ちょっと「天然」なところがある大坂選手。優勝者によるスピーチで、何しろ初めての経験ですから何を話していいやら慌ててしまったようで、出てきた第一声は、
「ハロー! 私はナオミです!」
客席から「知ってるよ!」というツッコミが入りそうな出だしでしたが、まずは、支えてくれたスタッフに感謝。そして
「あ、ゴメン、忘れてた!」
と、決勝戦で戦ったカサトキナ選手を讃え、ついで家族に感謝、そしてスポンサーにも感謝しましたが、1社だけ言い忘れそうになるハプニングも。
「大丈夫かな?」と観客をヒヤヒヤさせましたが、最後の一言がよかった。
「これって、史上最悪のチャンピオンスピーチよね! 最後に、試合を観に来てくれたみなさんにも感謝したいと思います!」
紋切り型の言葉は一切なく、周囲の人たちへ感謝の気持ちを素直に述べただけの異色のスピーチでしたが、ツイッターでは
「史上最悪なんてとんでもない! 史上最高に楽しいスピーチだったよ!」
という絶賛の声があふれました。
これで世界ランクは44位から、自己最高の22位に急上昇。今シーズン中の4大大会制覇も決して夢ではなく、日本国籍で出場する見込みの、2年後の東京オリンピックでも、金メダル候補に名乗りを挙げました。
そのとき、どんなスピーチを聞かせてくれるのでしょうか。
3月20日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」