映画をもう一度やろうと思わせてくれた高橋三千綱の男気とは?

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3月21日放送  ゲスト:映画監督・演出家 和泉聖治 第3回

映画をもう一度やろうと思わせてくれた高橋三千綱の男気とは?

テレビ朝日で3月放送のアガサ・クリスティ二夜連続ドラマスペシャル、『大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて』で監督を務める。前作『そして誰もいなくなった』に続く、アガサ・クリスティ作品!


和泉監督の分岐点

黒木)毎日、さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺っていくあさナビ、ゲストは、映画監督・演出家の、和泉聖治さんです。
「和泉監督ってどんな監督?」と聞かれたら、私は「優しい監督」と言いますね。でもいま知り合ったら「恐いのかな」と思うかもしれませんが、20代のときに出会っていますので、優しかったですよ。いまの方がもしかして恐いですか?

和泉)いや、いまの方が優しいですよ。見た目がね、ちょっと恐く見られますが。

黒木)恐くないですよ、ぜんぜん(笑)

和泉)もう「恐い」と誤解されている人がずいぶんいるみたいですが、基本的には、自分で言うのも変ですが「優しい」と思っています。いろいろな意味で。

黒木)45年間で、監督のなかで作品は沢山あると思いますけど、ご自分にとって分岐点となった作品とか、おありですか?

和泉)最初に松竹で撮った『オン・ザ・ロード』という作品ですが、これを作るときに……。

黒木)映画デビューの作品ですよね。

和泉)そうです。まず映画制作費を半分作るというとここから始まりました。配給会社がそういう条件で、「それができるならやってみよう!」ということだったので、大変でしたね。

黒木)どうやって半分調達したのですか?

和泉)僕の友人で芥川賞作家の、高橋三千綱という作家がいるのですが、当時、原宿をぶらぶらしてたら千疋屋から下駄の音が聞こえて。「和泉、暗い顔してどうしたんだ?」と。「いや、ちょっと映画を作ろうとしてるんだけど大金で、まだぜんぜん届いてなくて諦めるしかないかな、というところまで追いつめられてる」と話したら、「僕が出すよ」と言うんですよ。

黒木)えぇ~っ!

和泉)でも、「最低でも4,000~5,000万円作ってくれ」と言われていたんですよ。それで(高橋は)「そこまでは出せないけど、100万出すよ」と。ぜんぜん足りないですが、そのときにものすごく救われたというか、「もう1度がんばろう!」という気持ちになれたのは、彼のその一言があって。いま思うと、いいヤツだったなと思いますね。

黒木)男気というか、「映画を作りたい」という思いが伝わったのでしょうね。

和泉)そうでしょうね。


『オン・ザ・ロード』からはオファーが続く

黒木)それでデビューなさって、みなさんの評価はどうでしたか? 何か、変わりましたか?

和泉)それからすぐに、沖縄を舞台にした復讐劇の『南へ走れ、海の道を!』という映画を撮ったのですが、その話はすぐに来ましたね。

黒木)『さらば愛しのやくざ』というのは、そのすぐ後ですか?

和泉)その後、東映の方から、『オン・ザ・ロード』や『南へ走れ』を見た若いプロデューサーたちから声がかかって、みんな繋がっていって。当時、ニューウェーヴ陣内孝則、柳葉敏郎とか、いろいろ人たちが東映でヤクザ映画を撮ろうと。いままでみたいな実録物のヤクザ映画じゃない物を撮りたい、という話の何作目かが回ってきて。それが『さらば愛しのやくざ』だったかな。

黒木)そうなんですね。「このカテゴリーが好き」というのはありますか?

和泉)「巡り会える作品」というのをやりたいです。自分で「こういう作品を撮ろう」というのもありますが、その後いろいろ「こういう作品も撮れますか?」みたいな以来がけっこう来て。脚本を読んでみると、けっこう入っていける。「じゃあ楽しんで撮ろう」という気持ちになってきて。それから、ちょっとそういう作品が続いてきますけど。

黒木)1年間でどれくらい……今年、ご一緒したときはお忙しかったんですけど。

和泉)忙しいときは1年に映画を3本撮りました。東映の仕事がスゴく多い時代があって。

黒木)その頃はずっと忙しかったですか?

和泉)そうですね。1年中、映画の現場に携わっているというか。

黒木)じゃあ、体調管理が一番大切ですね。

和泉)そうですね。昔はよくお酒を飲んだので、その辺でちょっと失敗したこともありますけど。最近は体調管理も仕事と思って、ちゃんとやっていますよ。

(2018年3月21日放送分より)

映画をもう一度やろうと思わせてくれた高橋三千綱の男気とは?

和泉聖治/映画監督 
1946年9月25日、神奈川県横須賀市出身。
父は彫刻家・劇作家・舞台演出家、元俳優で映画監督の木俣堯喬(あきたか)。
1972年に成人映画『赤い空洞』で監督デビュー。
1982年、36歳の時に『オン・ザ・ロード』で一般映画デビュー。
『さらば愛しのヤクザ』『南へ走れ、海の道を!』『お日柄もよくご愁傷様』など、数々の映画・ドラマの監督を務め、2000年からはテレビ映画『相棒』シリーズのメイン監督を務めるなど、監督・演出として幅広く活躍。
テレビ朝日で3月放送のアガサ・クリスティ 二夜連続ドラマスペシャル、『大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて』で監督を務める。前作『そして誰もいなくなった』に続く、アガサ・クリスティ作品!

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