第6回 セイントフォー『太陽を抱きしめろ』
最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。
チャ:野球は巨人……じゃなくて中日、司会は巨泉……じゃなくて、こんにちは、チャッピー加藤です。
相澤:チャッピーさん、完全に野球モードですね! こんにちは、相澤瞬です。
チャ:実はわがドラゴンズ、いま東京ドームで巨人と戦ってる真っ最中なのよ。しかも土曜は松坂が投げるからね! 原稿と観戦が重なって、もぉ、たーいへんなんスから!(By先代・林家三平)
相澤:それはそうと、前回のセイントフォーにけっこう反響をいただいて、嬉しいです!
チャ:そういや、こないだニッポン放送にいたとき、館内で流れてた『金曜ブラボー。』を聴いてたら、ゲストにすみぺが来てて。
相澤:歌手で声優の上坂すみれさんですね!
チャ:「私が大好きな80年代アイドルBest3」みたいな企画をやってたんだけど……1位、何だったと思う?
相澤:え? まさか……セイントフォー!?
チャ:正解!! いやー、ビックリしたよー。前回取り上げた『不思議Tokyoシンデレラ』がラジオでかかってんだもん。
相澤:えーっ!! マジですか?!
チャ:すみぺ、「今度再結成するんですよー! ライヴ観たいですー!」って、瞬くんとおんなじこと言ってた(笑)。偶然だけど、この連載と完全にシンクロしてるじゃん!
相澤:いやー、セイントフォー、やっぱり来てますね!
チャ:この連載、ハヤリとは無縁だと思ってたけど、オレたち、けっこうタイムリーなことやってんじゃん!(笑)もうこうなったら、来る波にはガンガン乗っかっちゃおう!
相澤:乗るしかない! このビッグウェーヴに!(笑)
■「担当:後方宙返り」
チャ:てなわけで、再びお題はセイントフォーなんだけど、今回はこの曲、いってみよう!
チャ:1985年3月21日発売、デビュー曲『不思議Tokyoシンデレラ』に次ぐ、セイントフォーのセカンドシングル『太陽を抱きしめろ』。
オリコンも最高15位とアップ。……オレはこっちのほうが印象に残ってるね。
相澤:僕、この曲も大好きなんですよー。しかも、後から映像観たんですけど、アクロバットがさらにパワーアップしてるし!
チャ:さっそく、当時出たドーナツ盤で聴いてみよう。
(♪ターンテーブルに乗せて、演奏)
チャ:もう、イントロからキテるよなー。アレンジが大げさ!!
相澤:なんかもう、いろいろたまんないです! このサビの独唱とか……
チャ:あー、そうそう! サビは濱田範子が一人で歌ってた!……なんかいろいろ思い出してきたゾ!(笑)
相澤:(聴き終えて)いやー! この曲も素晴らしいです! 最高!
チャ:全体的にいろんなものが過剰だけど(笑)、いい曲だなー。
相澤:デビュー曲もそうですけど、「曲がマッチョ」ですよね。
チャ:その表現、わかるわー。作曲&プロデュースの加瀬邦彦さん、ジュリーだけじゃなく、こういうのも手掛けてたってスゴいよなー。「新しいエンターテイメントを創ろう」という意気込みを感じるね。
相澤:これ、当時TVで歌ってるときの映像を観たんですけど……一人が補助して、バック宙とかやってるじゃないですか?
チャ:そう、この曲はバック宙に尽きる! セイントフォーって確か、メンバーそれぞれに「担当技」があったんだよね。
相澤:僕、調べました! 岩間沙織さんが「側宙」、濱田範子さんが「後方宙返り」、鈴木幸恵さんが「ピルエット」、板谷祐三子さんが「バック転」です。
チャ:「ピルエット」ってバレエでよくやる、片脚だけでコマみたいにクルクル回るヤツでしょ? それはまだわかる。「担当:後方宙返り」ってナニ??(笑)
相澤:確かに、全員に担当技があるってヤバイですよね!
チャ:しかもときどき失敗して、ドーン! と下に落ちてたんだよなー。……どうなの、それ?
相澤:濱田さん、それでヒザに水がたまちゃったんですかね…!
チャ:先週も言ったけど「なんでアイドルにそこまでやらすんだ?」と思ったなー。
相澤:足が痛くて、動けなくなってる映像もありましたよ。
チャ:今だったら、確実に炎上案件だよね。……彼女たち、不思議に思わなかったのかな?「なんで私たち、ここまでしなきゃいけないんだろう?」って。
相澤:思ってたみたいですよ(笑)。
チャ:そうだよねー!……きっと、頑張っちゃったんだろうなー。「ザ・芸能界」だけど、今思えば「やらせてる大人、いいかげんにしろ!」だよ。
■復活ライヴ、一緒に行きましょう!
相澤:ちょっとB面も聴いてみませんか? これ、アナログ盤で聴いたことないんで。
チャ:B面曲、タイトルがスゴいよね。『ミリオン聖裸』と書いて「ミリオンセラー」(笑)。「聖なる裸」で「セラー」って、深いなー。
(♪ターンテーブルに乗せて、演奏)
相澤: これもいい曲だなー。A面のマッチョな感じから一転、女性が書いた曲だから、しなやかですよね。
チャ:作詞は岩里祐穂さんで、作曲にも関わってるのか。岩里さん、ももクロにも書いてるもんね。先週、ももクロのルーツをたどるとセイントフォーって言ったけど、つながった!
相澤:A面はヒーロー然とした立ち居振る舞いですけど、B面は浮気とか不倫とか、女性が遊ばれてるドロドロな内容なんですよね。
チャ:事務所側は最終的にどこに着地させたかったのか、まったくわからないけど、楽曲自体はA面・B面ともによくできてるよね。惜しいなぁ……。
相澤:そうなんですよ! セイントフォーの曲って、もっと楽曲自体が評価されてもいいと思うんですけど。
チャ:先週も言ったように、事務所とレコード会社がモメちゃって、わずか2年ちょっとで解散を余儀なくされるんだけど、彼女たちも不完全燃焼なところはあったんだろうね。
相澤:メンバーさんいわく「いちばん辛かったのがセイントフォーで、いちばん楽しかったのがセイントフォー」だそうです。
チャ:あー、じんわり来るセリフだなー。てか、みんなネタで語るんだよね、セイントフォーを。だけどメンバーたちは、周囲の大人たちの思惑はさておき、青春のすべてをこのグループに注いだわけじゃない? もっと総合的に評価してほしいってことだよね?
相澤:そうですね。……実は先日、板谷さんを除いた今の3人(岩間・濱田・鈴木)がTVで『不思議Tokyoシンデレラ』を歌ったんですよ。
チャ:えー、それ観てない!
相澤:僕、すごく感動しちゃって! 家で録画したのをiPhoneで撮ったので、チャッピーさんもぜひ観てください!
チャ:どれどれ……(観る)うわー、これ生歌だよね? アクロバットは、飛ぶ高さが低くなってるけど、グッと来るなー!
相澤:でしょ? いまこれ、話題になってるんですよ!
チャ:ああ、それで再結成なのか。謎が解けた! やっぱりさあ、本人たちの中でやりきってないというか、モヤモヤしてたんだね。
相澤:そうだと思います。
チャ:もっといろいろできたのに、周りの大人たちの勝手な都合で不完全燃焼に終わったから、もう一度ちゃんと完成形を見せたいって、それなんか分かるなあ。……いい話じゃん!(笑)
相澤:だから僕、今の3人をムッチャ応援してて。
チャ:そうかー、オレは「なんで再結成?」と思ってたんだけど、今の映像を観て理解した。これは応援しないと! ありがとう!(笑)
相澤:チャッピーさん、これはもう、復活ライヴ、行くしかないですよ! 6月17日、銀座ケネディハウスで5時開演です。チケット2枚、確保したんで!
チャ:6・17か。ちょっと待って……(何やら取り出し参照)
相澤:あれ?……チャッピーさん、何ですか、それ?
チャ:ドラゴンズの日程表。
相澤:ふつう手帳でしょう!(笑)
チャ:あー、6・17は所沢(メットライフドーム)で西武と交流戦だ! ドアラも来るし、これも行かないと! 1時開始か……
相澤:デーゲームなら間に合いますよ! ハシゴしましょう!
チャ:かなりハードだけど、なんとかする! しかし、球場からセイントフォーにハシゴするヤツは、たぶんオレだけだろうなー。(笑)
相澤:楽しみです!! その模様は、ここでレポートしますんで!
……次回は、沢田研二『許されない愛』について二人が熱く語ります。お楽しみに!
【チャッピー加藤/Chappy Kato】
昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。
【相澤瞬/Shun Aizawa】
昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。