ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（9月7日放送）に外交評論家の宮家邦彦が出演。11月に行われるアメリカの中間選挙について解説した。

アメリカ中間選挙～決戦まであと2ヵ月

現地時間11月6日に行われるアメリカ中間選挙まであと2ヵ月となるなか、各候補、陣営の動きが本格化している。この中間選挙で上院は100議席のうち3分の1が改選、今回は補欠選挙と合わせて35議席が対象となる。一方、下院は435ある全ての議席が対象となっている。

飯田）よく一般的に言われているのが、中間選挙というのは中間試験みたいなもので、大統領にとっては出来が悪いものになると。今回はどういう流れなのでしょうか？

宮家）大統領の問題は一般論としてあるかもしれませんが、トランプさんが出てきた背景を考えたときに、既存の政治勢力の信用度が落ちてきて、「移民やテロはけしからん」と言う人たちが出てきた。私は、共和党も民主党も流動化しているのではないかと思うのです。トランプさんの場合には共和党の中道であるマケインさんたちがいい例なのかもしれないけれど、ああいう人たちが力を失ってきて、トランプさんのクローンのような人たちがいっぱい出てきます。そうすると偏ってくる。
では民主党は良くなるかというと、トランプさんに似た人が出てくると、もっと真面目にやらなければならない、と左の方へ流れていってリベラル色の強い人が出てくる可能性がある。民主党が勝つ方向に動いているとは思うけれど、候補者をきちんと出せるのか、両極な状況になったときにしっかりと統治ができる政治家が選ばれるのか、という点で心配しています。

共和党の対抗馬として出てくる民主党の代表は？

飯田）民主党の方は大統領選挙の予備選のときに、結果ヒラリーさんが候補になりましたが、ギリギリまで鍔迫り合いをしていたのがバーニー・サンダースという方です。

宮家）あの人はもともと民主党の人ではないですけれどね。民主党系ではあるかもしれませんが、自分は社会主義者だと言っているのですから。
トランプさんが出てくるような状況は、民主党も同じように内部で変質が起きていると思っています。

若い世代の台頭がない

飯田）バーニー・サンダースさんはかなりお年を召していらっしゃる。トランプさんも70歳を超えていますが、両極の方で若い人たちが出てくるかというと、いまはどっちもそういう流れにはなっていないですか？

宮家）民主党の一部には若い人がいると思いますが、このような状況では極論を言う年配の人がいるのではないかなと心配しています。

飯田）それがあってのことなのか、民主党の遊説でキーマンとして挙げられているのが、オバマ前大統領です。

宮家）オバマさんがまだ昔の名前で出ているということは、逆に新しいリーダーが生まれていない。中間選挙ですから、次の世代の人たちが出て来ないといけません。けれど出てきていない。だからオバマさんがもてはやされるということですよ。

飯田）オバマさんに人気はあるのでしょうが、それだけではない理由で出てくるということですか？

宮家）でも過去の人ですから、これからトランプさんのような人に対抗馬を立てるとか、政権を本気で取り戻そうというのであれば、しっかりとした人が何人か出てきて競い合って、力をつけ合った上で戦わないとトランプさんは強いですよ。そんなに簡単に負けないと思います。

アメリカファーストの流れは強い

飯田）トランプさんもアメリカ国内回帰のような形で、米軍も引いていくのではないかと言われている。一方で、民主党のバーニー・サンダースさんの政策も、アメリカに引き戻してアメリカ国内の景気を良くしたらいいんじゃないかという。そこの部分では右と左が奇妙に一致していますね。

宮家）それは同じですよ。1945年以来、アメリカは犠牲を払い過ぎている割に実入りはなくて、結局良い思いをしているのは同盟国じゃないかと。そういう気持ちは右も左も、共和党も民主党も同じですから。典型的なのはNATOとの関係。それから中東もごちゃごちゃしています。それに比べたら日本との関係は、最近難しくなったとは言われていますが、まだまだ他の国々に比べたら良い方です。でも、アメリカ国内の変化を我々は敏感に見なければいけないと思います。

飯田）ここから2ヵ月でいったいどうなるかということですが。

宮家）共和党が大負けすることはないと思います。仮に大負けするとして、下院が票を取ったら弾劾裁判をするかもしれない。でも数議席ではとてもできないですよね。仮に弾劾裁判が始まったとしても、判決をするのは上院です。上院は3分の2ですから、なかなか大統領を弾劾するような議会の新しい勢力図は描けないと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00