アメリカが貿易摩擦を仕掛けるのは勝てる国ばかり

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2018-08-29 　更新：2021-01-27

ニッポン放送「高橋洋一のOK! Cozy up!」（8月29日放送）に数量政策学者の高橋洋一が出演。アメリカの貿易政策について解説した。

アメリカとメキシコ、NAFTA再交渉で大筋合意

アメリカのトランプ大統領は27日、北米自由貿易協定（NAFTA）の再交渉について、メキシコとの2国間で大筋合意したと発表した。今後はカナダが合流して、3ヵ国で最終決着できるかが焦点となる。

新行）もともと、トランプ大統領が大統領になる前からNAFTAについては否定的だったと思うのですが、どういう面で最初は批判されていたのでしょうか？

高橋）トランプさんはいつも同じなのですけれども、オバマさんがやった前のことはだめだから俺がやり直すという、それだけなのですよ。だから今回もやり直しているのですが、大きく変わってはいない。専門的な用語で部品調達率というのがあるのですが、それを少し変えただけで、「俺がやり直した。名前を変えろ」という話なのです。部品調達率は、いろいろな新聞で「62.5から72.5に上がった、だから日本が大変になる」というのだけれども、それは論理的ではなくて。実は部品調達率のなかにいろいろな規定があって、「アメリカ産とメキシコ産を使え」というのが基本なのですが、このうちアメリカ産を少し多く使ってくれということが書いてある。ということは日本の方から輸出したものやメキシコの物は少なくなるから、日本も少し不利になっているのですが、そこまで大きな数字ではない。日本企業にとっては大した影響はないと思います。

新行）どこの国の部品を使うかで、その割合が少し変わってくると。

全体としても大きな影響にはならない

高橋）アメリカ品を少し多く使えと、これはトランプの意向を反映したのですよね。メキシコに日本の企業は工場を作っているから、日本の企業の打撃は少ないです。

新行）どこの部品を調達してくるか、考え直さないといけないということですよね。

高橋）でもそれは大きな変化ではなくて、トランプの顔を立てて名前を変えたのが主だと思います。そうすると、これにはカナダも乗る確率が高いと思いますよ。新聞は中身を読まないで大げさに書くのです。トランプは「俺がやった交渉だ」と言いたいだけの人だから、名前を変えたら満足してしまうのですよ。これはそれが表に出ています。

新行）トランプさんの発言では「カナダ無しでも構わない」みたいなことを言っています。

高橋）挑発はしているのだけれど、中身を見るとそこまで変わっていないので、たぶんカナダはトランプさんの顔を立てて参加する可能性が高いと思います。大きく変わっていたらカナダも大変なのですが、あまり変わっていないので。

日本はトランプ大統領とうまくやっている

新行）メールも関連して頂いています。これはアメリカと日本の話になってくるのですが、日米貿易についてです。「橋本」さんから頂きました、松戸市にお住まいの方です。「6月のトランプ、安倍会談で、安倍さんに対してトランプ大統領が“真珠湾攻撃を忘れないぞ”と言って“貿易でアメリカが有利にするように考えろ”と要求していたと知りました。高橋さんのご意見をお聞かせください」とのことです。

高橋）これは他のアメリカ人もよく言う話です。よくよく考えたら日本はあまりいじめられていなくて、中国の方がもっとすごいでしょう。だから中国とやりあっている間、日本は安泰なのですよ。日本の新聞が日本だけ取り上げて非常に大げさに書く傾向があるのだけれど、世界全体を見ると、隣国のカナダはまだやっているわけでしょう。中国はもっとやっている。他の国もやっているけれど、日本は全然出てこないじゃないですか。世界のなかで見ると、日本は比較的トランプと上手くやっていると思いますよ。でもその代わり、やや激しくやったように見せないとだめというのもあります。言葉だけの話で、別に大した話ではないです。

新行）貿易戦争ということで、中国とアメリカはけっこうガチンコですけれども、アメリカ側としては痛くも痒くもないということなのでしょうか。

高橋）報復関税をし合っても、アメリカから中国への輸出量と中国からアメリカへの輸出量の方が遥かに大きいから、最終的に中国の方が報復関税するものがなくなりますから、答えは見えていますよ。

新行）アメリカを見ていると、いろいろな国と貿易をめぐって対立しているので、こんなにいろいろな国とやって大丈夫かなと思いますが。

日本と争うのはアメリカにとってデメリットが多い

高橋）別にアメリカが痛むようなところはやっていませんからね。トルコもそうですが、いくらやってもアメリカが痛まないところとやっている。日本とやると痛む可能性が高いから、日本にはあまりやらないですよ。日本の方は昔アメリカと貿易摩擦をしたときに、現地生産と言ってアメリカにずいぶんと生産拠点を作りました。それを引き上げたらアメリカはもっと大変になってしまいますからね。

新行）アメリカは仕掛けても大丈夫な国にのみ、仕掛けていっていると。

高橋）もちろんそうです。日本はあまりやらない。