米国のイラン制裁~選択肢のないイランはどこまで我慢できるか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月22日放送)に国際政治学者の高橋和夫が出演。アメリカによるイランの制裁について解説した。
アメリカが非常事態に備えて備蓄した石油を放出へ
アメリカ・エネルギー省は20日、災害による輸入停止など非常事態に備えた戦略石油備蓄を、10月1日から放出すると発表した。アメリカは11月上旬までに各国にイラン産原油の輸入停止をするよう求めていて、供給量の減少によるエネルギー価格の上昇を抑える狙いがあるとみられる。
飯田)これに関してですが、“瀬戸は夕凪”さんから頂いております。「トランプ政権、そもそも備蓄を減らす方針でしたよね。これは方針転換にあたらないのでしょうか」と頂きましたが、備蓄を出して、ガソリンの値段を抑えるということですよね。
高橋)そうですよね。備蓄というのはそもそも石油の値段が上がったときに放出する為に持っているわけですから、放出するというのは予定通りの行動です。特別な方針転換ということではなくて、問題はなぜいまやるかということです。
飯田)その部分ですけが、イランとの関係でということになっていますが、イランとは制裁も再開して、バチバチやっていますよね。
高橋)日本をはじめとした国際社会に対してイランの石油を買ってくれるなとしているので、100万バレルくらいのイランの原油が市場から消えると予想されています。その分サウジアラビアに増産を依頼しましたが、急には増産できないということで石油の価格が上がっているので、このカードを切ってきたのだと思います。いつか切ってくるだろうと思っていましたが、やはりこの時期かということです。
飯田)11月にアメリカは中間選挙を控えていますが、まだ少し期間があります。
高橋)恐らくアメリカでガソリンの需要が増えるのは、いまなのですね。夏は長距離ドライブに行きますから、ガソリンの値段をもう少し下げたいということでしょう。車に乗るたびにトランプさんがいろいろなことをやって、ガソリンが高くなったぞと思われたくないでしょうから。ただ、今度出すという量は限られています。まだまだ増やすことができるんですね、備蓄の切り崩しは。アメリカの石油を30日間賄うくらいありますから。
飯田)全米の需要を30日間。
高橋)半分は輸入というのがアメリカの石油事情です。海外から石油が止まっても、60日分は有ります。ですから、アメリカとしてはそこまで大した量を出したことではない。市場に「値段を上げたら、どんどん出すぞ」というメッセージを送るには、これで十分だと思います。
ヨーロッパからの反応が悪いイランは中国に行くしかない
飯田)今回発端となったイランとの関係ですが、イラン側ももうアメリカとは静観するけれども、交渉はしないという立場を取っていますよね。そうすると膠着状態が続くということですか?
高橋)そうですね。11月6日の中間選挙で、共和党が負けてトランプさんの立場が弱くなるということをイランは待っています。トランプさんとしては、それまでにイランを叩いて、「これだけやってるぞ」ということを選挙面に見せたいということで、イランの石油を買うのは止めてくれという期限が11月4日までと言っているんですね。その48時間後に中間選挙で、「ほら、俺がイランを叩いたから成果が出ているだろう」と言いたい。どちらも中間選挙を見ているということだと思います。
飯田)イランとしては、対アメリカ外交はそうそう動かないとわかっている。そこで、いまヨーロッパに対して、「一緒にやろうぜ」とキャンペーンしていますが、これも上手くいかない。
高橋)そうすると追い詰められて、ロシアに行く、中国に行くということになるわけですが、ロシアは産油国ですからイランの石油は買ってくれない。そうするともう中国にしがみつくしかないんですね。でも中国にしがみつくと、足下を見られて値切られるので面白くない。イラクとしてはもうチョイスが無いというところですね。
アメリカとの根競べに我慢するしかないイラン
飯田)イラン国内はかなりインフレが進んでいるという報道もありますが、どうなのでしょう?
高橋)イランのメディアやSNSを見ていると、日々物価が上がって暴動もありますし、デモもあります。そして今年のイランは日照りです。水も無い。油でいじめられて水もなく、イランは本当に大変で、じっと耐えているという状況ですね。
飯田)そうすると、政情不安になってきますか?
高橋)だからアメリカが期待しているのは、ずっと締め付けていれば政権がひっくり返るかもしれないということです。
飯田)そこまで見ているのですか?
高橋)ええ。そこでイラン政府が期待しているのは、アメリカにいじめられていたら、国民が団結して政府についてくれるだろうということです。これもどちらに転ぶかわからないですがね。
飯田)宗教の最高指導者のハーメネイ―氏に対する反対のデモが出てきていますよね。そうすると、一枚岩になっていないという感じですか?
高橋)ええ。実はイランという国は我々が思う以上に民主的で、アメリカと同じで国内政治があって、大統領は国内の世論を見ながら外交をやる。国内でいろいろな議論があるとアメリカは民主主義だと言われて、イランで国内が割れていると言われています。私はフェアじゃないなと思うのですけれどね。
飯田)なるほど。ここは根競べをやるしかないと。
高橋)しばらくは根競べでじっと我慢ですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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