安田純平さんが解放されるまでの経緯～3年間でシリアの戦局が逆転

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2018-10-25 　更新：2021-01-25

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（10月25日放送）にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。電話出演した国際政治学者の高橋和夫と共に、シリアで拘束されていた安田純平氏が解放された経緯について解説した。

安田純平（ヤスダジュンペイ）さんジャーナリスト=（2004年4月撮影）　写真提供：時事通信

シリアで40カ月拘束された安田純平さん解放～きょうにも帰国

河野外務大臣は昨日、2015年に内戦下のシリアに入り、武装勢力に拘束されたとされるフリージャーナリストの安田純平さんについて、「無事を確認した」と発表された。安田さん解放の情報は中東カタールからもたらされ、昨日は滞在先のトルコで日本大使館員が面会した。健康状態のチェックを受けた上で帰国する。

飯田）「日本の警察は刑法に基づき捜査に乗り出すと見られる」と情報が入りました。解明には高いハードルがある現実ですが、主権国家としてはやらなければいけませんね。

鈴木）当然ですね。「無事に帰ってきてよかった」で終わりではありません。同じようなケースは現在も続いています。偶然、日本の安田さんが人質になってしまいましたが、他の海外ジャーナリストが人質にされて拘束、身代金を要求される。これは現在も続いていることです。紛争が続く限り、永遠にあるわけです。だから、きちんとケジメをつける必要があるし、捜査は当然です。

飯田）以下は、河野外務大臣と安倍総理が記者団の質問に答えた模様です。

河野外務大臣）無事が確認できたということは、非常に喜ばしく思っております。

安倍総理）安田純平さんご本人であることが確認されました。準備が整い次第帰国できるように、対応して行きたいと思っています。

飯田）イスタンブールから日本に向かっていて、今夜にも帰国する予定です。続いて、解放後インタビューに答える安田さんと、日本で会見した安田さんのお父さんの声です。

安田）私は安田純平。日本のジャーナリストです。シリアで40カ月拘束されていました。いまはトルコにいて安全です。ありがとう。

安田さんの父）とにかく何が何でも、元気な姿が早く見たい。それだけです。3年間よく頑張った。いまの状態は分かりませんが、帰ってきたら「よく頑張ったな」の一言です。

反体制派が追い詰められ、安田さんを解放することに

飯田）中東情勢に詳しい国際政治学者の高橋和夫さんに、安田純平さんの解放にどのような経緯があったのかお聞きしました。
まず、安田純平さんが解放に至った背景には、何かシリアで情勢の変化があったのでしょうか？

高橋）そうです。安田純平さんが捕らわれたのは、40カ月前。つまり3年4カ月前です。2015年のシリア情勢は、安田さんが捕まったとされる反体制派の組織が優位に立っていて、軍事的にはアサド政権が劣勢でした。アサド政権が倒れそうな状況で、安田さんは人質になったのです。
しかし、40カ月の間にロシアの大規模な軍事介入が始まり、戦局が逆転しました。アサド政権側が優位に立ち、反体制派は追いつめられて、最後の拠点と言える、トルコ国境の狭い地域イドリブに追い込まれている。安田さんはそこに捕らわれていましたが、おそらく反体制派組織は「死ぬまで戦うか、武器を捨てトルコへ逃げるか」の状況に追い込まれている。そのため安田さんを手放さざるを得ない状況に追い込まれたのだと思います。それが当時との大きな状況の変化だと思います。
先月、この件に関わっていたであろう元外交官が日本に帰って来たのでこの件について尋ねたのですが、凍り付いたように「何も話せません！」と言われました。「厳しい箝口令が敷かれている。つまり交渉が動いているのでは」と期待していましたが、良かったです。

飯田）この種の交渉は事前に漏れてしまうとダメになりますからね。

高橋）そうですね。元外交官は非常に親しい人で、普通なら何でも教えてくれるのに「話せない」と身構えた感じでした。だから、聞いてはいけないし、非常に交渉が機微な状況にあると想像していました。

今年7月から事態は大きく進展していたと考えられる

飯田）箝口令はかなり敷かれていたのでしょうか？

鈴木）絶対的に外に話すことではないし、今回もいろいろな裏で動いた政府のチームの存在について言われていますが、本当に限られた人たちだけで情報共有して進めて来たのだと思います。
ただし、我々が表から見ても分かる出来事が実は今年7月にあり、永田町で話題になりました。2年間安田さんの消息が分からなかったのに、去年撮影した彼の映像が急に流れました。「なぜ去年の映像が急に？」と思っていたら、直後に間髪入れずに最新の映像が流れました。そこで、我々記者は「こういう映像が出て来たということは、何か動いているのでは？」と思ったのです。私も政権幹部に質問をぶつけましたが、当然ながら何も言いませんでした。ただ、自民党議員は「交渉も含めて事態が動いているから、こういう映像が出てくると見ていいのでは」と分析していました。7月頃はその話題でざわざわしていました。ただ、その時点では助かる方向に進むのか、逆に進むのか分からなかった。しかし、何かが動いている感じはありました。本当に助かって良かったですね。

飯田）今夜、日本に帰国するようです。本人は何を喋るのでしょうか？

鈴木）再発防止も含めてですが、事実関係ですね。テロに関しては、オープンにできないことがきっと多くあると思います。だけど、できる限り検証していくことも大事です。安田さんの口から何をどこまで話すのか、警察の捜査も全部ひっくるめて、まだ事件は続いていると考えた方がいいでしょう。