サウジ記者殺害事件~トルコはアメリカとの取引のために幕引き図る
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月22日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。サウジアラビアの記者殺害事件に関する、アメリカとトルコそれぞれの思惑について解説した。
サウジ当局が記者死亡を認め幕引きを図るもトランプ大統領納得せず
サウジアラビアの著名反体制ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が行方不明になっている事件。週末サウジアラビアは、内部調査結果を発表。「トルコのイスタンブールのサウジ総領事館内で殴り合いの結果死亡した」ことを確認した。
しかし、世界各国はこの報告に納得しておらず、トランプ大統領も「制裁もあり得る」という立場をとっている。
飯田)殴り合いで死亡と言われていますが、どうなのでしょう?
須田)おそらくサウジアラビアと現地トルコの警察当局が合同捜査を行い、これで着地すると見ています。トルコの捜査当局も、これで了承・了解ということになると、これ以上真相解明は進まないでしょう。
トルコは今回の事件をアメリカとの取引に使おうとしている
須田)「トルコの真意はどこにあるのか?」が、今後いちばん大きなポイントになってきます。おそらく、アメリカ間の政治的取引の材料に使うのだと思います。いまトルコとアメリカの関係は、一方的にトルコがアメリカに追いつめられているような状況ですよね。報道されているようにアメリカ人牧師拘束によって対立しているわけではありません。もっと大きな問題をトルコは抱えているのです。トルコの国営銀行を使って、イランの資金(トルコリラで払われた石油代金)をドルや金に変えるマネーロンダリングを、トルコが主導する形で、エルドアン大統領が関与していた疑惑があるのです。アメリカ当局がそれを捜査している最中ですが、トルコ側が「捜査を止めろ!」と要求して来ている。しかし、アメリカは頑なにそれを聞かない。水面下で、激しい綱引きが行われていた状況なのです。
だから、トルコ、あるいはエルドアン政権としては、「捜査をストップする引き替えに、こういう幕引きでどうか?」としているのです。だからトランプ大統領としては、憎き相手のイランに塩を送る形になりかねない取引に乗りたくない。それが満足していないというところにつながっているのです。
サウジとの関係は悪化させたくない。程良いところで着地したい。それがトランプ大統領の真意、意向です。しかし、そのためにはトルコと協力しなければならない。この矛盾が、いま悩ましい部分だと思います。
飯田)サウジアラビアの皇太子と、トランプさん本人や義理の息子クシュナーさんはかなり仲良しと伺っています。サウジは武器もかなり買っていますよね。
須田)トランプさんとしてはことを荒立てたくない。穏当なラインで収めたい。けれど、そこにエルドアンさんが関与してくる部分があるのだと思います。
カタールのテレビ局「アルジャジーラ」が重要な情報を握っている
飯田)アップルウォッチの音声の話は、1部では「違うのではないか」という声もありますね。
須田)一方で、アルジャジーラ(カタールのテレビ局)がこの件について何かとんでもない情報を握っているようです。小出しではありますが、報道を先行しているのはアルジャジーラ、つまりカタールなのです。カタールはサウジアラビアと全面対決していて、イランに近い国です。ここもきな臭いですよね。
飯田)しかも、カタールが苦境に陥ったときにトルコのエルドアン大統領が支援の申し出をしましたよね。
須田)アルジャジーラが今回の記者殺害の音声データなどを持っている可能性が高くなっているのですよ。
ガソリンの値上がりに政治的思惑が絡んでいる可能性
飯田)トルコ政府が、あるいはリークをしている可能性がある。でも、トルコからすればこの事件はある意味転がり込んできたようなものですよね?
須田)そうです。ラッキーチャンスです。
飯田)なぜ、サウジアラビアはわざわざイスタンブールの大使館に呼んだのでしょうか?
須田)その辺ははっきり言って、サウジアラビア側のボーンヘッドです。おそらく「口論の末殴り殺された」もウソでしょう。だから、大きな失敗をしてしまったのではないでしょうか。
飯田)チェーンソーを運び込んだという話もありますからね、「口論の末~」は誰でもウソだと思いますよね。
でも、そうやって国際政治は1つの犯罪だけでなく思惑で動いていくという典型ですね。
須田)今回の出来事は、「主役級の人間が舞台に立っていないドラマ」です。それが大きく舞台の動きにも影響している。そんなわけの分からない演劇を観ている感じです。
飯田)これがあるから、ガソリンが値上がりしているのでしょうか?
須田)中東情勢の不安定化に加え、カードとしてイランが輸出量を減らしているのも、単純にガソリン、燃料価格の維持や上昇をねらっているのではありません。場合によっては、そこに何らかの政治的思惑もあるのかもしれませんね。
飯田)第1次オイルショック以降、石油は政治のカードになるとみんな思っているわけですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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