サウジ記者行方不明事件~アメリカとの交渉材料に事件を利用するトルコ

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月15日放送)ジャーナリストの須田慎一郎が出演。記者行方不明事件を題材にトルコとサウジ、アメリカの政治的背景を解説した。

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トルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア総領事館前で、行方不明になったジャマル・カショギ記者のポスターを手に抗議デモを行う人たち=2018年10月8日(共同) 写真提供:共同通信社

サウジ記者行方不明事件~アップルウォッチに殺害の証拠か

サウジアラビア人の著名な反政府ジャーナリストがトルコで消息を絶った事件。トルコメディアは、ジャーナリストが身に付けていた腕時計型端末『アップルウォッチ』に、サウジ政府による殺害が行われたときの音声が録音されていたと伝えている。サウジ政府は一貫して事件への関与を否定しているが、アメリカのCNNやニューヨーク・タイムズなどが「今月下旬にサウジで開催される投資フォーラムへの参加を見合わせる」と表明するなど、事件の影響が出始めている。

飯田)反政府ジャーナリストのジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館を訪ねた後に行方不明になっているようです。報道では「領事館内で殺害された後バラバラにされた」など猟奇的なことが書かれています。

須田)彼はかなり著名なジャーナリストです。サウジアラビアの反政府系ジャーナリストとして、各国のマスメディアと連携していただけに、注目を集めていました。仮に、単純に反政府活動から殺害されたとしても、「反政府活動で殺害された」というだけでなく、国際や政治に関する背景で注目を集めているのだと思います。
ここ最近のキーワードはイランです。イランを巡り、中東での動きがある。必ずどこかにイランの影がチラついています。今回の背景を見てみると、やはりイランとトルコの関係があって、イランとサウジアラビアの対立関係がある。アメリカとイランも対立をしている。だから、アメリカとサウジは蜜月関係にあるのです。武器供与しているし、支援も行っている。その意味では、今回のジャーナリスト殺人事件は、アメリカにとっても手痛い動きなのです。

トルコとアメリカの駆け引き~最終的に真相は解明されずに終わる可能性が高い

須田)一方で、トルコはどうなのか。アメリカ人牧師の解放から、アメリカとの関係は融和的な方向に向かいつつありますが、アメリカとトルコの抱えている問題は牧師の問題だけではないのです。
もう1つ、イランに向けてのマネーロンダリング疑惑があります。疑惑というより、アメリカは完全に証拠を押さえていますから、表面上はアメリカ人牧師の問題ですが、「マネーロンダリング問題をどうするのか?」で綱引きが行われているなかで、トルコのエルドアン政権は、この問題で1ポイントゲットです。これを交渉材料に使うことも考えられると思います。
すると、アメリカ政府としては、いかにトランプさんでも、サウジがそんなことをしてしまっては、サウジに経済制裁などを含める必要がある。

飯田)「キツい制裁をする」とトランプさんは言っているようですね。

須田)これをどうにか着地させたい。1つ注目しているのは、ここに来てトルコがサウジアラビア政府当局と、合同の捜査班の結成を表明しました。「否定している相手と合同で開いてどうするの?」という部分がある。
トルコとしても、サウジの背後にいるアメリカに対して、メッセージを送っているのではないかな。最終的に真相は解明されることなく、政治決着が図られる気がしてなりません。

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遺体が発見されない限り殺人事件としては立件されない

飯田)報道では「サウジの皇太子が絡んでいたのではないか」と言われています。この皇太子はサウジの国内改革を行い、けっこう注目されていた人ですよね?

須田)それが人権的に真逆のことをやっていたとなると、やはり評価は大きく下がります。ただ、冒頭で飯田さんが話した「殺害後にバラバラにされた」というのはけっこう大きなポイントなのです。殺人事件は死体さえ出てこなければ、「殺人事件」として立件できないのです。死体がなければ、殺人事件もそこになかったことになる。

飯田)ただ行方不明になっているだけですね。

須田)いくらアップルウォッチの音声がクラウド上にアップされていたとしても、それは状況証拠でしかないのです。明確な物証にはならない。

飯田)そこまで計算しているのですか?

須田)もちろんです。だから遺体をバラバラにして、既に処理済みだと思います。

飯田)領事館内は治外法権ですが、こんなことをされるとトルコとしてはたまったものではないですよね?

須田)ただ、トルコとしては、エルドアン政権もそれに近いことは繰り返しやって来たわけですから、この件で頭に血が上り「人権違反だ!」とはならないです。これははっきり言って政治的なカードですからね。

飯田)冷酷な国際政治ですね。トルコとしてはこれを最大限生かす形で、でもアメリカの逆鱗にまでは触れないようにする。

須田)アメリカから譲歩を引き出すようにね。それが合同捜査本部ということになるのではないかな。古来から東西文化の十字路イスタンブールは、その意味では情報・諜報活動のメッカですからね。

飯田)何が起こってもおかしくないのですね。

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