巨人に移籍する岩隈が現役を続ける理由
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、6日に巨人との来季の契約合意が発表された、前シアトル・マリナーズ、岩隈久志投手のエピソードを取り上げる。
「非常に強い味方が1人、チームに加わったという感想。今まで培ったキャリアに胸を張って、思いきってジャイアンツで戦ってもらいたい」(巨人・原監督)
5年ぶりのペナント奪回に向け、今オフは例年にも増して積極的な補強に取り組んでいるジャイアンツ。ここまで、現役メジャーリーガーのビヤヌエバ、オリックスを退団した中島宏之、FAで西武から炭谷銀仁朗、広島から丸佳浩を獲得。
以上はすべて野手でしたが、続いては投手陣の番と、マリナーズを退団した日米通算170勝投手・岩隈の獲得に成功しました。元エースの復帰を熱望する古巣・楽天との争奪戦になりましたが、先発陣の補強を望む原監督の熱意が実る形となりました。
「いろんな意味で、岩隈とは信頼関係があると自負しています」
岩隈も、中島同様、原監督が日本代表の指揮を執った2009年の第2回WBCメンバー。松坂・ダルビッシュとともに日本の3本柱を担いました。原監督が岩隈獲得を望んだのは、彼らの豊富な経験値がチームの立て直しに必要と考えているからです。
岩隈の起用法について、原監督は、
「私の中ではスターター(先発)一本」
と明言。今季、巨人の先発陣で2ケタ勝利を挙げたのはエース・菅野だけ。
岩隈は、右肩故障の影響で去年・今年と未勝利ながら、楽天時代の2008年にシーズン21勝を挙げ、マリナーズでも3度、2ケタ勝利を挙げています。「肩のコンディションさえ万全なら、10勝は堅い」と原監督はふんでいるのです。岩隈自身も、
「2年間(未勝利で)結果を残せず悔しかったが、まだまだできるという思いがある」
岩隈が現役を続ける上で、励みになっている人物がいます。今季、古巣・マリナーズに復帰したイチローです。5月に球団と「会長付特別補佐」の契約を結び、「試合には出ないが、チームに帯同し、ゲーム前の練習には参加する」という形で合意。
「50歳現役」を目指し、必要であればいつでも試合に復帰できるようコンディションを整えているイチローの姿勢に、岩隈は深い感銘を受けているのです。
今季限りでの退団が決まった後、岩隈は9月26日、始球式に登板。シアトルのファンに別れを告げましたが、そのとき、サプライズでキャッチャー役を買って出たのがイチローでした。イチローは現在45歳。岩隈は37歳。日米通算200勝も狙える位置にあり、まだまだ老け込んではいられません。
マリナーズは来季、東京ドームでアスレチックスとMLB開幕戦を行いますが、球団首脳は「特に東京で、イチローが(試合出場のため)ユニホームを着る姿を見られる可能性が高い」と明言。その前に、マリナーズと巨人のプレシーズンゲームが行われる見込みで、もしかすると「岩隈VSイチロー対決」が見られるかもしれません。