男子卓球・張本 これまでとの違いはベンチプレスで鍛えた肉体

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、史上最年少の15歳で、卓球ワールドツアー・グランドファイナルの男子シングルスを制した、張本智和選手のエピソードを取り上げる。

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卓球のグランドファイナル男子シングルスで史上最年少優勝を果たした張本智和=2018年12月16日、韓国・仁川(共同) 写真提供:共同通信社

「いやぁ、もう、最高としか言いようがない。優勝してこんなに興奮したことはなかった」

韓国の仁川(インチョン)で行われた、卓球ワールドツアー・グランドファイナル。最終日の16日に男子シングルスの決勝が行われ、世界ランキング5位の張本が、同4位の林高遠(中国)を4-1で撃破し、初優勝を飾りました。グランドファイナルのシングルスで、15歳の優勝は、男女通じて史上最年少記録です。

この日は、得点するたびにおなじみの雄叫び「チョレイ!」も響きわたりました。第1ゲーム、相手を圧倒して先取しながら、第2ゲームはジュースにもつれ、落としてしまった張本。しかし、第3・第4ゲームを連取して流れを引き戻すと、第5ゲームも7−9から4連続得点で、一気に試合を決めました。

最近は、勝った瞬間に「チョレイ!」を言わないのが張本のスタイル。この日も両手で頭を押さえ、喜びを噛みしめました。

「あれが自分の新しいルーティンなのかな。試合中にたくさん声を出しているんで」

今年は、世界ランキング17位でスタートした張本。パワーを補うため、本格的に筋力トレーニングに着手しました。6月の荻村杯ジャパン・オープンで、リオ五輪金の馬龍、ロンドン五輪金の張継科と、2人の中国人金メダリストを撃破して優勝。

このまま躍進が続くかと思いきや、ワールドツアーでは上位に進出できず、10月、日本選手団主将を務めたユース五輪では、シングルス、団体ともに決勝で敗れ銀メダル。優勝から半年ほど遠ざかってしまったのです。

それだけに、今回のグランドファイナル決勝に懸ける張本の意気込みは、並々ならぬものがありました。準決勝で、世界5位のカルデラノ(ブラジル)を破って決勝進出を決めた際、

「今年はたくさん悔しい思いをしてきた。(決勝に)勝てればチャラになる。ここだけは絶対に譲れない。この1年のすべてを、決勝にぶつけたい」

そう宣言した張本。まだまだ筋力が足りないと、夏場からベンチプレスも始め、最初は20キロだったのが、いまは40キロを持ち上げるようになりました。肉体的に逞しくなったことで自信も付き、メンタル面でもタフに。

決勝の相手・林高遠は、6月の中国オープンで1−4と完敗した相手でしたが、今回、真逆のスコアで圧勝できたのは、ちゃんとした計算もあったからです。

「前回は自分から攻めてカウンターを食らって負けた。やり方を変えれば、チャンスはあると思った」

失敗を明日への糧に変える、この高い学習能力が、張本の成長につながっているのです。
試合後、張本の口から、こんな頼もしい言葉も飛び出しました。

「今大会、初めて格上の選手だったし、この先、中国のトップに勝ち続けるためにも大きな1勝。この1年で間違いなく気持ちが成長した。実力を増して行けば、東京五輪で金メダルを取れる可能性が、もっと増えると思う」

今年は中国勢に8勝6敗と勝ち越し、4月には世界1位の樊振東も撃破した張本。しかしより高いレベルで成長して行かないと、2年後、東京での金は得られないことは、本人がいちばんよく分かっています。中学を卒業する来春、エリートアカデミーを前倒しで修了。神奈川・日大高へ進学する予定です。

ところで、今回の優勝で、賞金10万ドル(約1,130万円)をゲットした張本。試合後に使い道を問われると、こう即答しました。

「貯金ですね。せめて自分が19や20歳になるまでは、全部貯金です。いまはお金のことは考えずにやっています(笑)」

余計なことに惑わされず、最も大事な目標を見据え、決してぶれない姿勢……スーパー中学生から、我々が学ぶことは多そうです。

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