北方領土問題~ロシア・ラブロフ外相が日本を牽制する理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月17日放送)に国際政治学者、慶応義塾大学教授の細谷雄一が出演。北方領土を取り巻く国際情勢について解説した。

ロシア・ラブロフ外相が「国連憲章上の義務に違反」と批判

ロシアのラブロフ外相は16日、モスクワで開いた年頭記者会見において、日本の北方領土返還要求について「国連憲章上の義務に明白に違反している」と批判した。来週22日に予定されている安倍総理とプーチン大統領の首脳会談を前に、平和条約締結交渉に関して改めて日本を牽制する形になっている。
飯田)国連憲章という言葉が出てきました。日本人は国連というとひれ伏してしまうようなところがありますが、これはどう見た方が良いですか?

細谷)これをニュースで聞いたときに、国連憲章と現在の北方領土をめぐる領有権とが、つまりどういう関係なのだろうかと思う方が多いと思います。重要な点として、あまりこれを真剣に受け止める必要はありません。ロシアは外交交渉をするときに、必ず強硬姿勢から始まって徐々に譲歩します。交渉の最初の段階で、ロシアは相当厳しい要求をしてくるわけですね。ロシアとしては北方領土を「ロシア領だ」と言いたいわけですが、実は戦後の領土を定めたサンフランシスコ講和条約に当時のソ連は調印していません。したがって、この条約をもとに自らの正当性を担保できません。ロシアの領有権を裏付ける根拠となる条約はないのです。ですので強引にこの国連憲章を引っ張ってきて、ロシアの領土だと語っているのですが、普通だったらまず繋がらないのでこれは苦しいのです。
何を根拠に北方領土がロシア領と言うか、ヤルタの密約も調印国ではない日本に対しては効力がないわけですから、日本に対する効力を持った正当な根拠として国連憲章を引かざるを得ないということです。

飯田)両国でちゃんと結んだ条約だと、ポーツマス条約まで戻らなければいけません。

細谷)日ソ中立条約はソ連が破ったわけですから、ロシアにとっては後ろめたい条約ということになるわけですね。

飯田)それを引いてというわけにはいきませんね。

ロ、在日米軍で回答要求  モスクワで記者会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)=2018年12月20日 写真提供:共同通信社

北方領土の戦略的な重要性が増している

細谷)何を根拠にするかということです。もう1つ考えられるのは、ここ最近の動きだと明らかに、ロシアは領土問題をめぐって立場を強硬化しています。北方領土が圧倒的に軍事的な重要性を帯びています。徐々に世界全体が、軍事的な緊張の局面になりました。そうすると、戦略的に北方領土が重要になります。いまや北極航路も重要になっており、中国もそこに積極的に進出しています。かつてよりも北方領土の戦略的な重要性が一気に上がっていて、だからこそロシアはこの問題をめぐって、以前よりもハードルを上げてきているということだと思います。

飯田)サンフランシスコ講和条約への経緯というのは、細谷さんが新潮社で書かれている『戦後史の解放』シリーズ、特に『自主独立とは何か』の前後編にかなり詳しく載っていますが、あのなかにサンフランシスコ講和条約に「千島列島は放棄」と書かれていますよね。これをどこまで範囲にするかで北方領土の交渉が変わってくるじゃないですか。国後・択捉はどちらに入るんだ、ということですね。

細谷)サンフランシスコ講和条約のなかでは細かいところまで明記していないわけですから、結局領有権に関する解釈をめぐって、日露間でいま対立しています。国際情勢が変われば、二国間の交渉も受けています。10年前に当たり前だったことが、国際情勢が変わると全く変わってしまうわけですね。いま、国際情勢が大きく動いていることによって、90年代の交渉のときよりも遥かに日露の交渉が難しくなっています。このことを、交渉の担当者や政府のなかで十分に認識することが必要になってくると思います。

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