プロ野球 選手会が導入を要望する「現役ドラフト」という制度

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、22日に行われたNPBとプロ野球選手会の事務折衝で、巨人・丸佳浩選手ら、選手会側が要望した「現役ドラフト」について取り上げる。

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【プロ野球巨人】巨人の室内練習場を見学する丸佳浩=2018年12月12日 ジャイアンツ球場 写真提供:産経新聞社

「広島で2軍の選手らが“現役ドラフトがあったらいい”と話していたことなどを伝えさせてもらった。なかなかない機会で、これからも歩み寄れたら」(丸)

22日、日本野球機構(NPB)と労組・プロ野球選手会の事務折衝が、NPB事務局で行われました。選手会側からは、西武・秋山翔吾(30)と巨人・丸佳浩(29)が出席。意見交換が行われました。

2人は選手会の役員ではありませんが(会長は巨人・炭谷銀仁朗)、セ・パを代表する主力級の選手が、自主トレを中断してまでわざわざ出席したのは異例のこと。これは議題に「侍ジャパン(野球日本代表)の待遇改善」が挙がっていたこともあり、代表経験も豊富な2人に声が掛かったようです。

基本、侍ジャパンの試合はオフシーズンに行われます。もしそこで不可抗力による大ケガをして、ペナントレースを長期離脱した場合、減俸分は誰が補償してくれるのか? 選手会側の「リスクだけ背負わされて、見返りが少しではやっていられない」という気持ちもよく分かります。

「(侍ジャパンを)トップ選手が集まりやすく、目標とする組織にできれば。事務局を通じて話を聞くのとはニュアンスが違うものもある。貴重な場だった」(秋山)

そして、丸の冒頭のコメントにもあるように、選手会側は、かねてから検討課題に挙げて来た「現役ドラフト」の導入についても、NPB側と意見を交換しました。この制度は、実力がありながらチーム事情で1軍昇格の機会を与えられていない選手を救済するもので、一定期間1軍登録されていない選手を、他球団が指名できる、というものです。

これはメジャーリーグが行っている「ルール5(ファイブ)ドラフト」に近いもので、MLB規約の第5条に規定されているので、この名前が付いています。対象となるのは、メジャー40人枠に入っていないマイナーリーグの選手で、入団時の年齢によって変わるのですが、入団から4〜5年が経過したプレーヤーです。

指名はウェーバー制で、成績下位チームから指名ができます。そして指名した選手は、旧所属球団に譲渡金を支払った上で、メジャーの試合に出場できる25人枠に「必ず」入れないといけません(マイナーでの飼い殺しを防ぐ制度なので、獲った選手はメジャーで使わないといけないのです)。

この制度の面白い点は、もし指名した選手が期待外れだった場合、元の所属球団に選手を返すことができるという点です(その場合、支払った譲渡金の半額が返って来ます)。獲る側からすると「あの選手、ウチなら活躍の場がありそうだから、ちょっと獲ってみるか。ダメなら返せばいいし」ということで、選手の流動化が進む、というのがルール5ドラフトの趣旨です。

この他にもいろいろ複雑なルールがあるのですが、実際に無名のマイナーリーガーがこの制度で他球団に指名され、スター選手になった例もいくつかあります。

ただし、これを日本のプロ野球で適用する場合、いろいろと難しい問題が出て来そうです。高卒の有望な選手を、じっくり4年かけて育成しているチームの場合、それを飼い殺しと見なされて、他球団に指名されては「せっかく育てたのに……」ということになってしまいます。指名を防ぐために、いったん1軍に上げるという裏ワザを使うところも出て来そうですが。またベテラン選手は対象になるのか、プロテクトはできるのか……?

選手の流動化策としては、サッカーのように、選手の保有権は旧所属球団が持ったまま、期限付きで移籍する「レンタル移籍」を認める、という方法もありますが、いずれにせよこういう話し合いが、丸・秋山のような主力級の選手とNPB側で行われたのは、1つの進歩と言えるでしょう。特定のチームが得をする制度ではなく、球界全体が活性化するような新制度を作っていってほしいと思います。それがファンのためにもなるのですから。

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