「右!右おりた!右おりた!」
「橋、橋の上、まだいるよ!」
「左シマネ、俺やるわ」
「ナイス―!」
2月16日(土)渋谷ヒカリエの高層部のオフィスの一室から、威勢のいい声が飛び交う。皆ヘッドホンを装着し、ゲーム機のコントローラーを持ち座っている4人一組のグループ。男性だけ、女性だけのグループもいれば、男女混成のグループも…みな画面を挟むように向かい合わせにしてゲームをしている。
「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2」
プロ野球12球団に指名された4人1組のチームが Nintendo Switchソフト『スプラトゥーン2』を使って競うeスポーツ(ゲーム)の大会。大会への出場をかけた「オフライン選考会」が行われていた。一般社団法人 日本野球機構(以下、NPB)はすでに去年11月からKONAMIの「実況パワフルプロ野球2018」を競技種目とする「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」を共催するなどスポーツ文化全体の発展を目指しeスポーツとの取り組みを始めている。今回は「子どもから大人まで一緒にプレイでき、シンプルなルールと競技性の高さから多くの方々に親しまれている」という観点、さらに「年齢・性別等を問わず、どのような方にも楽しんで頂ける取り組み」(以上、大会HP)として開催に至った。
Nintendo Switch「スプラトゥーン2」
そして今回の種目である「ナワバリバトル」とは4人と4人の2チームが地面をインクで塗りあい、3分間で塗った面積(ナワバリ)が大きいチームが勝利となるルール。緻密な戦略はもちろん、直感的かつ、研ぎ澄まされた反射神経を駆使していかに相手陣地を制圧できるか。トップレベルのプレーは目にもとまらぬ速さと正確性、創造性のあるプレーが特徴的だ。チームで戦うという部分では、冒頭にあったような“相手がどこにいるか”“自分の状態を味方に知らせる”「声かけ」がモノをいうことがある。「オフライン選考会」には全国大会「スプラトゥーン甲子園4」に出場したチームなどがエントリー可能となっているが、先日幕張で行われた同大会の決勝には幕張メッセの1ホールを埋め尽くすほどの人であふれ動画再生回数も60万回を越えていることからも、いかに「スプラトゥーン2」の注目度が大きいかがわかる。
今回集まった18チームは2日間・4グループに分かれ、面接やチーム同士による「ナワバリバトル」の実技確認に臨んだ。集まった18チームは最年少11歳の小学生(複数)から30代までの男女。年齢、性別を超えた71人(1人欠席)。全国大会の常連チームや、すでにスポンサーのサポートを受けているプロチームなども多く、格好も普段着からプロチームのユニフォーム姿、さらに面接を見据えてか?リクルートスーツ姿のチームもおりバラエティに富んだラインナップに。
初めにプレイヤーの前でNPBの高田浩一郎総合企画室長が挨拶を行い、その後、およそ2時間にわたり実技確認・写真撮影・VTR撮影・グループ面接に分かれて行われたオフライン選考会。プレイヤーは慣れない面接や撮影にとまどい、はじめは「緊張しました」という声が多く聞かれたが、慣れ親しんだ実技確認の時間になると落ち着きを取り戻し、いつもの自分たちのプレ―に一喜一憂していた。
今回のオフライン選考会の初日を終え、高田室長は「予想はしていたのですが、面接でスポーツ歴を聞くと圧倒的にサッカー経験者が多かったですね。野球経験者は少ない。これが現実だと思いました。ただ、今後の野球ファンの底辺拡大につなげていくかという意味では、この取り組みは正解だったと改めて思います。」と前を向いた。開催にあたりスプラトゥーン甲子園など各種イベントも視察し、今回の実技も確認した高田室長は「パワプロ(実況パワフルプロ野球)の大会と違う意味で4人一組の団体戦ですから、スプラトゥーンもチームワークが大事になりますよね。我々も見ていて勉強になりました。この経験はプレイヤーにとって将来間違いなくプラスになるし、きょうの実技では緊張感の中で感情も入っていて、皆さんの本気度も感じました」と手ごたえを口にした。そして「チームとして本気でやることの大切さ、これを実感して今後の人生に活かしてほしいですね。そういう部分も狙いではあります。今回の取り組みはスプラトゥーンのコミュニティの人たちにプロ野球に興味を持ってもらうことが第一のステップ。その人たちとプロ野球をどう融合してもらうかが第2ステップ。しっかり次の構想を練りたいと思います」と期待を寄せていた。
今後「NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2」は3月3日にドラフト会議を行い、18チームから12チームが各球団に選考される。そして、3月24日の入団発表・キャンプ、4月14日のオープン戦を経て、本戦は東京ビックサイトで行われる5月18日(土)、19日(日)。リーグ戦、トーナメント戦の末、「パワプロ・プロリーグ」と同じくe日本シリーズでスプラトゥーン日本一が決定する。
詳しくは→https://splatoon2.npb-esports.jp
eスポーツといえば、担当した「パワプロ・プロリーグ」でも実感したが、大会の盛り上がりにはプレイヤーの存在が不可欠。とくに「スプラトゥーン2」は男女や年齢も様々でバラエティに富んだチーム構成も個性的だった。ということで、次回はオフライン選考会(初日)に参加した注目プレイヤー・チームをインタビューを交えてご紹介する。
(清水久嗣)