中国では米優先で日本の専門家が苦しい時代
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月31日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国の新駐日大使の就任について解説した。
中国の新たな駐日大使が着任
中国の新たな駐日大使に任命された孔鉉佑氏が5月30日に来日し、着任した。59歳の孔氏は大学時代に日本語を専攻し、外務省に入省した後は日本で14年以上勤務した知日派として知られている。駐日大使就任の前は外務次官兼、朝鮮半島問題特別代表を務めていた。
飯田)G20の首脳会議間近であり、その調整なども、ということは記事でも紹介されています。
宮家)孔さん自身は立派な人ですよ。前の程永華さんもそうだったと思います。その意味ではおめでとうと言いたいのだけれども、もっと大きな視野で言うと、日中ともにお互い日本語と中国語の専門家がいるでしょう。そうした専門家にとって今は受難の時代だと思っているのですよ。
アメリカとの関係が優先されるようになった中国
宮家)なぜかと言うと、昔は日本の外務省だったら中国語の専門家がアジア局長をやって、アジア政策に大きな役割を果たした。でも中国は変わってしまったのですよね。では中国はどうかと言うと、昔は唐家璇(とう・かせん)さんとか、いまだったら外相の王毅さん。彼らも日本語の専門家で外務大臣、中国では外交部長ですね、それから国務委員もやりました。しかし程永華さんはそういう訳ではない。昔中国のエリートは主に日本に来て勉強していたのだけれど、最近では、おそらく日本との関係よりも、アメリカとの関係が重要になって来たのでしょう。
以前は日本にしか留学できなかったから、官民ともに優秀な人が日本にバンバン来たのですよ。いまは状況が変わって、優秀な人がイギリスやアメリカにも流れている実態がある。それから、中国のなかにもアメリカの専門という人たちがいる。さらに言うと、中国で本当に外交をやれるのは共産党だから、外交部はあくまで実施機関でしかなくて、必ずしも政策の立案機関ではないのですよ。もちろん彼らなりに頑張ってはいるのですが、圧倒的に党の力が強いので、結局は党のなかで影響力を持たないとダメだと思うのです。
日本の専門家が苦しい時代に
宮家)日本の外務大臣は、どんなことがあっても内閣で5本の指には入るでしょう。普通だったらナンバー3ですよ。しかし中国のナンバー3が誰かと言ったら、共産党の7人しかいない常務委員の一人なのです。その人たちのなかで、外交をやっている人はこれまでほとんど居ないのですよ。最近1人出て来たかもしれないけれど、実務をやっているわけではない。実務の外交をちゃんと見る人はトップ7人の中はいないのです。
飯田)楊潔篪(よう・けつち)さんという人も、トップ7には入っていないですよね。
宮家)残念ながらそうですよ。せいぜい政治局委員になったかならないか、しかも一昔前は中央委員でしかなかったのですよね。中央委員だったら200人以上はいます。政治局委員で25人だから、25人のなかに入って初めて日本で言う閣僚級ですよ。人口が10倍だから違うかと言えば、そんなことは無い。小さな国も大きな国も、トップ3はトップ3でしょう。そういう意味では、これから日本語の専門家が影響力を維持できるのかが気になります。もし今のような状況は王毅さんまでで、これから潮目が変わっていくのだとしたら、さらに中国の日本語専門家にとっては苦しい受難の時代になる。それはとても不健全だと思うのですよ。日本でも同じようにアジア政策の立案過程に中国の専門家を登用しなければいけないと思うけれど、同じことは中国でも起きているかもしれないのです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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