巨人・ビヤヌエバ 原監督の“グータッチ”を復活させた攻守の活躍
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、6月4日の楽天戦で、9回逆転2ランを放ち、5日もピンチで好守備を披露した巨人・ビヤヌエバ選手のエピソードを取り上げる。
「1、2打席目が悪い内容で三振してしまったので、最後をこのような形で締めくくれて、本当に良かったです」
6月4日、楽天生命パーク宮城で行われたセ・パ交流戦初戦の、楽天-巨人戦。9回表、巨人は1-2とリードされ、マウンド上にはリーグトップのセーブ数を誇る守護神・松井裕樹。敗色濃厚な場面で、起死回生の逆転2ランをスタンドに叩き込んだのが、この日7番で起用されたビヤヌエバでした。
「高めのボールを狙って打席に入ってました。(松井は)いいピッチャーで、なかなか失投はないんですけど、うまく捉えることができました」
このコメントから窺えるのは、ビヤヌエバの研究熱心さです。データが少ないパ・リーグの投手から「高めのボールを狙って打てた」のは、スコアラーからの情報以外に、自分でもデータを集めていたからこそ。周囲の選手や、他チームの投手に詳しい阿部からも情報を収集。その努力が、絶体絶命の場面でみごとに活きました。
「交流戦なんで、そんなに多くのデータを持っていないんですけど、1日1日大事に戦っていきたいな、と思っています」
貢献しているのは、バッティングだけではありません。守備でも再三、好プレーを披露していますが、5日の試合でもこんなシーンがありました。
0-1とリードされた3回ウラ、巨人先発・田口が無死満塁のピンチを招き、バッターは4番・ウィーラー。三塁線へ鋭い打球が飛びましたが、これをサード・ビヤヌエバが滑り込んでキャッチ。起き上がって三塁を踏むと(二塁走者封殺)、すかさず本塁へ送球。捕手・小林が三塁走者の茂木にタッチしてダブルプレー。
田口は続く銀次を右飛に抑えて、無失点で窮地を切り抜けました。試合は終盤、リリーフ陣が打たれ敗れましたが、打ってはチャンスに強く、守ってはピンチを救ってくれるビヤヌエバは、チーム内で日に日に存在感を増しています。
外国人枠を巡る競争が激しいジャイアンツですが、昨季、サンディエゴ・パドレスで20ホーマーを打ったビヤヌエバには原監督の期待も大きく、背番号「33」も指揮官自ら決めました。入団会見にも同席し「背番号以上、ホームランを打ってほしいという願いを込めました」と語った原監督。
しかし、日本の野球に慣れるのはなかなか容易ではなく、開幕から29試合で打率.235、5本塁打と低迷。5月6日に出場選手登録を抹消されました。なまじメジャーでの実績があると、2軍に落とされてやる気をなくす、というのは外国人選手によくあるパターンですが、真面目でひたむきなメキシカン・ビヤヌエバに「腐る」という言葉は無縁です。
ファームであらためて自分のバッティングを見直し、なぜ打てなかったのかを再検証。2軍戦でそれを確認しながら、復調の兆しをつかんで行きました。
5月31日、1軍に再昇格。翌6月1日、復帰2戦目の中日戦で、三塁守備から途中出場すると、0-4と劣勢の6回、無死満塁のチャンスで打席が回って来ました。そこで、代わったばかりの中日・田島の初球を叩くと、打球はバックスクリーンに飛び込む同点満塁弾に!
「ファームでやってきたことができた」
原監督も、この1発には興奮を隠しきれず、復帰以来1度も見せていなかったおなじみの「グータッチ」を、ついに初披露。
その後、代打で登場した阿部が通算400号アーチで勝ち越し。最終回、いったん同点に追い付かれますが、坂本勇がサヨナラ打を放って巨人が勝利。ファンにとっては最高のゲームになりましたが、そのお膳立てをしたのはビヤヌエバなのです。
お立ち台は、チームの顔である阿部と坂本に譲った影のヒーローは、試合後にこうコメントしました。
「ひと振りで同点にできて良かった。勝って締めくくれてよかったし、また(原監督と)グータッチしたいね!」