柔道と何が違う? パラ注目競技 視覚障害者柔道を新行市佳リポート!

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ニッポン放送アナウンサーの新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見するための連載企画「パラスポヒーロー列伝」。
今回は、視覚障害者柔道について特集します。

クリスマスが終わり・・いよいよ年末感が出てきました。新年を迎える準備はできましたか?
今年2019年は東京オリンピックパラリンピックのリハーサル的位置づけのプレ大会が多く開催されましたが、開催国枠で出場が決定している競技もあれば、出場枠をかけて戦い続けている選手もいます。
視覚障害者柔道の選手も今まさに東京パラリンピックの出場を勝ち取るために挑戦している真最中です。先日12月8日に文京区の講道館で開かれた「第34回 全日本視覚障害者柔道大会」の取材に行ってきました。
会場の講道館・新館、大道場には嘉納治五郎さんの肖像画が飾られており、まさに柔道の聖地で行われた大会でした。来年2020年に向けて視覚障害者柔道に注目が集まっており、マスコミも殺到。私は畳に座って試合を見ていましたが、床がグラグラ揺れるのを感じるほど激しい試合が繰り広げられました。今日はそんな視覚障害者柔道について紹介します!

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全日本視覚障害者柔道大会の様子

まずは視覚障害者柔道のルールについて。
基本的には柔道と同じです。選手によって視力や視野の程度は違いますが、全ての選手が体重による階級に分かれて試合を行います。男子は7階級、女子は6階級に分かれています。
柔道と何が違う? パラ注目競技 視覚障害者柔道を新行市佳リポート!大きな違いは、組み合った状態から始めるということ。試合中に両手が離れたり場外に出てしまった場合は、審判が試合場の中央に選手を戻し、再度組み合ってから再開します。組み手争いがないので試合は序盤から技の応酬、しかも一本で決まることがほとんどで、選手は組み合った手の感覚から相手の動きを察知して技をかけあっているんです。
視覚障害者柔道の選手は来年4月にイギリスで行われる東京パラリンピックを最終選考を兼ねた国際大会に向けてしのぎを削っています。日本選手権では、特に男子66キロ級で火花が散りました。
これまでパラリンピックに5大会出場、出場した全てのパラリンピックでメダルを獲得、3度金メダルに輝いたレジェンドの藤本聰選手が、19歳のルーキー瀬戸勇次郎選手に背負い投げで敗れました。
大会を終えた藤本選手は「(瀬戸選手が)また強くなっているなという感じがしました。前半は自分のペースだったんですけれど、最後寝技に行ったときに足の力を使いすぎてしまって、そこを狙われた感じがして。(東京パラ出場を目指して)最後まであきらめずに、できることをきっちりやっていく・・・それだけです。巴投げと背負い投げの精度を上げていくしかないですね。」と振り返りました。

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藤本聰選手

この大会オール一本勝ちを果たした瀬戸勇次郎は「ホッとしました。」と安堵の表情を浮かべました。
「最初、藤本選手と対戦した時は格の違いを見せつけられて、この人がしばらくの目標と思っていたのですが。ようやく越えるところまできていると思っています。」と藤本選手との一戦について言及し、東京パラ出場への意欲をのぞかせながらも「目の前のことを一つ一つやろうと思います。」と、この時挙げた2つの課題にコツコツと取り組んでいく姿勢を明かしました。(積極的に攻めていくこと、技の数を増やすことの2点)
藤本選手も瀬戸選手も互いの印象を聞かれると「ライバル」と答えていたのも印象的でした。

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瀬戸勇次郎選手

2020年東京パラリンピックへ夫婦で出場、メダル獲得を目指している廣瀬悠選手、廣瀬順子選手は、それぞれ男子90キロ級、女子57キロ級で見事優勝。一緒に練習することも多いお二人ですが、ともに高め合っている関係でもあります。
廣瀬順子選手はリオ大会では銅メダルに輝いており、積極的に攻撃を仕掛けていく選手です。ご主人の悠選手は「元々自分は守り主体の選手だったんですけど、それでは勝てなくなってきたので、順子さんのスタイルを取り入れてみました。海外の選手相手でも調子良くなってきています。」と自信を見せました。また、順子選手のライバル選手の得意技を悠選手が一緒に練習している松山東雲女子大学の柔道部員に伝え、対応する準備を着々と進めているようです。
夫婦で表彰台への夢へ。

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廣瀬順子選手、廣瀬悠選手

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廣瀬悠選手

ロンドン大会で金メダルに輝き、リオでは銅メダルを獲得。悔し涙を流していたのが印象的でもあった正木健人選手は、100キロ超級で優勝。勝利後のインタビューでは、海外選手の現状について言及しました。
「払い腰が得意技なんですが、それを警戒されて(海外選手に)対策されています。得意技を活かせるように足技を使ったり、相手をもっと動かしたりするように、今まであまりしてこなかったことを覚えるようにしています。」
東京パラリンピック優勝を目指していますが、大会が終わったときに悔いが残らないような試合をしたいと抱負語っていました。

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正木健人選手

いよいよ来年2020年は東京パラリンピックイヤーです。「新行市佳のパラスポヒーロー列伝」では、引き続きパラスポーチの魅力や注目選手についてなど紹介していきますので、来年もよろしくお願いします。
それでは、良いお年をお迎えください!

【新行市佳のパラスポヒーロー列伝 第29回】

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