森永卓郎が問う~マスクの転売禁止は経済的に正しかったのか
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「垣花正 あなたとハッピー!」(4月8日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。緊急事態宣言が発令されたが、いまもって、マスクは手に入らない。政府の行ったマスクの転売禁止は正しかったのか——。森永卓郎が経済的な視点から解説する。
どこに行っても買えないマスク
マスクは未だに、どこに行っても買えません。そんななかで政府は、一部の人が買い占めて転売し、大儲けしているマスクの転売を3月10日に禁止しました。転売禁止が本当に正しかったのかということに、私は大きな疑問を持っています。転売を禁止しても、正確な統計がないとわからないのですが、需要全体のせいぜい1%くらいのわずかな割合です。転売を放置すると、マスクを買ってすぐに売るということですから、供給量は変わりません。
一時的に高値にすることの必然~需要があれば価格は下がる
あるドラッグストアが50枚入りのマスクを3000円で売って、袋叩きに遭うという事件がありましたが、私は一時的に高値にするということをやったほうがよかったと思います。マスクが高く売れるということがわかれば、儲かるので「うちもつくろう」と思う企業が出て来ます。マスクをつくることは、それほど高い技術を必要としません。製造業の大半はできるはずなのですが、高値で売ると袋叩きに遭うのでやらないのです。しかし、自由価格設定にして、高い値段でも売っていいというルールをつくれば、企業も乗って来ます。価格は需要と供給のバランスで決まります。一時的に高くなっても、供給が増えればもとの値段に戻るのです。
政府がやるべきは“即時償却の導入”
政府がやるべき方法は、即時償却の導入です。即時償却というのは、例えば企業がマスクの製造設備を買います。そうすると、経費にできるのは減価償却費だけです。マスクが何年償却になっているのか正確にはわかりませんが、仮に10年償却だとすると、1000万円の設備を導入しても、その年の経費になるのは100万円だけです。1000万円を導入して、回収は10年かけてするということです。マスクの需要が下がったら、その後で9年間の赤字が続きます。即時償却というのは、設備投資した額をその年の経費として落としていいというやり方です。1000万円を設備投資したら、その年のうちに1000万円もらえるから、思い切ってやれる。短期勝負に出ることができます。
東日本大震災の際には太陽光発電の設備に認められた即時償却
政府は東日本大震災の直後の2012年に、太陽光発電の設備に関しては、即時償却を認めました。その際、参入する企業がとてつもなく増えました。企業とはそういうものです。10年先なんて見えないから、とりあえず経費で落とせるのならばと。あのとき電力不足が叫ばれていたのですが、実は太陽光発電が日本の電力危機を救ったのです。電気が足りずに国民生活がだめになるということで決断できたのであれば、マスクがなくて国民が困っているいま、やるべきではないでしょうか。
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