巨人・田中豊樹が上原から受け継いだ背番号「19番」の意味

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月26日に支配下選手契約を勝ち取り、即1軍登板を果たした巨人・田中豊樹投手にまつわるエピソードを取り上げる。

【プロ野球ヤクルト対巨人】支配下登録から1軍昇格の巨人・田中豊樹 ユニホームが間に合わず3桁の背番号018=2020年7月26日 神宮球場 写真提供:産経新聞社

「一度、戦力外を経験して、何とかもう一度、1軍の舞台でやりたかった。やっとスタート地点に立てたというのが、率直な思いです」(田中豊樹)

7月26日に神宮球場で行われたヤクルト-巨人戦。首位・巨人は、初回に5点を奪うと、投げては先発・桜井が8回途中まで4失点に抑え、9-4で快勝。2位・ヤクルトとの3連戦を1勝1敗1分けのイーブンで終え、ゲーム差を再び3.5差に広げました。

24日の初戦は、8投手を注ぎ込み引き分け。25日の2戦目は、6投手を使いながらサヨナラ負けを喫した後だけに、この試合を落とすと嫌なムードが漂ったところ。3投手で逃げ切り、中継ぎ陣を温存した上での勝利は、チームにとっても大きな1勝でした。

注目は、9回に3番手として今季初登板した田中豊樹です。田中は前日まで育成選手で、この日の試合前に支配下選手契約を結んだばかりでした。即1軍登録され、そのまま神宮球場へ直行。いきなり登板機会がめぐって来たのです。

育成選手はみな3ケタの背番号を背負っており、支配下登録されると2ケタ以下の背番号に変わります。ところが、田中の場合は即1軍出場となったため、新しいユニフォームが間に合わず、育成選手のユニフォーム「018」でマウンドに立つことになりました。

5点リードの最終回、下位打線相手の楽な場面ではありましたが、エスコバーを左飛、廣岡を3ゴロ、上田を中飛に仕留め、打者3人でゲームを締めくくったのは十分合格点。リリーフ陣がフル稼働し、故障者や2軍降格者も相次いでいる今シーズン、原監督にとっては嬉しい救世主の出現でした。

「育成選手(出身)とはいえ、経験は持っている投手。物怖じせず、本来の投球をやってくれたんじゃないですかね」(原監督)

26歳の右腕・田中は、もともと日本ハムの選手でした。2015年、ドラフト5位で入団。日本ハムでの通算成績は、4年間で31試合(すべてリリーフ)に登板し、0勝0敗4ホールド。昨シーズン(2019年)は2軍で31試合に登板しましたが、1軍登板の機会はなく、オフに戦力外通告を受けました。

現役続行を希望する田中は、昨年オフに行われた12球団トライアウトに参加。巨人が育成選手として契約を結びました。今シーズン(2020年)は2軍戦で開幕から抑えを任され、10試合に登板し、1勝0敗3セーブ、防御率1.93。特筆すべきは、9回1/3を投げ17奪三振と、1イニングに平均2個近く三振を奪っているのです。その投手が1試合完投した場合、三振を何個取れるかを示す「奪三振率」は「16.39」。これが昇格の決め手になりました。

田中が日本ハム時代に伸び悩んだ理由は、コーチからのさまざまなアドバイスを聞き過ぎて迷い、本来のフォームを見失ったことにありました。戦力外通告を受けた後、福井にある整骨院で股関節の治療とともに、ステップ幅などフォームの見直しを行った結果、無理のないスムーズなフォームを取り戻しました。球速も上がって三振を奪えるようになり、2軍での好成績→支配下登録につながりました。

ところで、巨人での1軍デビュー戦で披露できなかった田中の新しい背番号ですが、何と「19」に決まりました。かつて上原浩治、菅野智之らがつけていた番号です。

「宮本投手コーチと話をしたら、『苦労人だし、いい番号をあげて欲しい』ということだったので、じゃあ19番にしようと」(原監督)

他にも空き番号があるなか、原監督が「じゃあ19に」と決めたのは理由があります。田中の前に「19」を背負っていた上原浩治も、大阪体育大学には浪人して入学。大学時代も華々しい成績とは無縁で、決して入団前からエリート街道を歩んでいたわけではありませんでした。上原が「19」を選んだのは、アルバイトも経験した浪人時代の年齢(19歳)を背番号にすることで、「当時のことを忘れないようにしよう」という思いも込められていたのです。

「背番号19」について、田中は「自分もエリートじゃなかった。上原さんのような“雑草魂”ではい上がって行きたい」とコメント。佐賀出身で「がばいパワー」が売り物の田中がリリーフ陣に加わることは、首脳陣にとっても心強い限りです。

「(田中は1軍昇格を)力でもぎとった。ジャイアンツにとっては、69番目(の支配下選手)。非常に大事な1枠を彼に使った。期待というのは、そこで理解してくれるといいですね」(原監督)

ちなみに、田中の生まれ年は1993年。「華の93年組」(1993年4月~1994年3月生まれ)桜井俊貴・中川皓太・今村信貴・田中俊太・山本泰寛・若林晃弘・増田大輝・重信慎之介・石川慎吾・C.C.メルセデスらと同期生です。田中が彼らに負けない活躍をして、連覇への救世主になれるのか? 「19番」で登板する次戦以降のピッチングに注目です。

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