43歳で決勝アーチ 2軍戦にも志願する阪神・福留の原動力

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月16日のヤクルト戦で決勝ホームランを打った球界最年長、阪神・福留孝介選手にまつわるエピソードを取り上げる。

【プロ野球阪神対ヤクルト】8回、2点本塁打を放つ阪神・福留孝介=2020年7月16日 甲子園球場 写真提供:産経新聞社

「打った瞬間、届くと思った」

16日、甲子園球場で行われた阪神-ヤクルト戦。試合を決めたのは、日本球界最年長の43歳・福留孝介の一発でした。この試合、福留は2点ビハインドの6回、2死一・二塁のチャンスに代打で登場。ヤクルト2番手・近藤から、ライトオーバーの2点同点タイムリー二塁打を放ちました。福留にとっては、これが今季初打点でもありました。

そのままセンターの守備に入った福留。阪神は8回、ヤクルトに勝ち越しを許しますが、サンズのソロアーチで再び同点に追い付くと、梅野がヒットで続き、1死一塁で福留に2打席目が回って来ました。福留は、ヤクルト4番手・清水の初球、145キロの真っ直ぐをフルスイングで振り抜くと、打球はバックスクリーン左に飛び込む貴重な決勝2ランに!

これが待望の今季初ホームラン。43歳での一発は、阪神では金本知憲・前監督の44歳に次ぐ年長記録で、しかもこのアーチで、福留は日米通算2400本安打を達成しました。ですが、彼にとっては個人記録など二の次。試合後、お立ち台でこうコメントしました。

「走者を還すことができて、よかったです」「ファンの方々の目の前で野球ができることを、とてもありがたく思っています」

……この完璧なコメントはどうでしょう。この福留の活躍で逆転勝ちした阪神は、4カード連続勝ち越しで最下位を脱出。矢野監督も「ホンマに孝介のお陰」と敬礼したほどです。

メジャー時代も含め、今年(2020年)でプロ22年目の福留。1977年生まれで、4月26日に43歳の誕生日を迎えたばかりですが、同い年の選手はみな引退。チーム内で年が近い選手というと、現在41歳の能見(1979年5月28日生まれ)、今月40歳を迎える藤川(1980年7月21日生まれ)がいますが、いまなおこうしてチームを支える活躍ができるのは、本当に頭が下がります。

米国時代、シカゴ・カブスでプレーしていた福留ですが、カブスには「ブリーチャー・ネーション」という専門のメディアがあり、OBの動向もフォローしています。16日の試合後、公式ツイッター(@BleacherNation)が、ホームランシーンの映像付きで、こんなツイートをアップしました。

“ This is incredible. Old friend Kosuke Fukudome is now 43 years old ... and he's still hitting game-winning home runs over in Japan.”

(信じられない! われらが旧友・福留孝介は43歳にして、いまも日本で試合を決める一発を打っている)

この報せには、カブスファンも驚いたようで、「まだプレーしてたの? 信じられない!」「彼のことは、いまも忘れないよ」といった反響が多数寄せられています。

2011年のシーズン途中に、福留がカブスを去って9年が経ちますが、いまだに覚えているのは2008年、メジャーデビュー戦となった開幕戦で、9回、エリック・ガニエから打った起死回生の同点3ランです。

福留という選手は、ここぞという場面でチームを助けてくれる……PL学園でも、中日でも、日本代表でも、カブスでも、阪神でも、常に「フォア・ザ・チーム」の意識は変わりません。だからこそ彼は、ファンの記憶に残っているのです。

福留は今シーズン、開幕こそスタメンに名を連ねましたが、しばらく不振が続き、スタメンを外されることも増えました。新外国人の加入や、若手の台頭もあり、「いつまでも福留に頼っていてはいけない」という声も、当然耳に入っています。

しかし、そこはあくまで競争。若手にアドバイスはしますが、福留自身は常にレギュラーでの出場を目指していますし、「若手に譲る気はさらさらない」と公言しています。レギュラーになりたければ、自分の実力でつかめ。それがプロだろう……そう背中で語る福留の存在は、1軍にいるだけで、若手たちの手本になるのです。

驚いたのは、福留が大活躍をした翌日・17日の2軍戦にスタメンで出場したことです。福留は今シーズン、昼に2軍の試合で調整してから、夜に1軍の試合に出る、いわゆる「親子ゲーム」を実行しています。普通、これは1軍半の若手選手がやることで、43歳で親子ゲーム出場は前代未聞のこと。ナイターの疲れが残っていないか心配ですが、まだ借金を抱えるチームの状況を考えれば、それどころではないのでしょう。

その姿を見て、阪神の若手たちも「親子ゲーム」を志願。16日に1軍ベンチ入りしていた江越、北條、高山、上本たちも、福留と並んでスタメンに名を連ねました(ほとんど1軍ではないか、という声も……)。

変則日程のため開幕からロードが続いたこともあり、いきなり大きな借金を抱えた阪神ですが、福留が目指すのは阪神移籍後、まだ体験していない「優勝」です。5割も見えて来たいま、福留効果で虎が勢いを取り戻せば、セ・リーグはさらに面白くなりそうです。

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