ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。菅新総裁が自民党の役員人事を発表した報道を受け、菅新政権の今後について解説した。
自民党~役員人事を正式決定
自民党の菅新総裁は9月15日、党の役員人事を行い、正式に発表した。二階幹事長と森山国対委員長は続投、総務会長に佐藤勉元総務大臣、政調会長に下村博文選対委員長、新たな選対委員長には山口泰明組織運動本部長を起用することなどが正式に決定した。
飯田)昨日(15日)はこうした人事が臨時総務会で了承され、会見も行われました。組閣も含めて、いろいろな人の名前が挙がっています。
佐々木)役員人事の平均年齢が71歳と揶揄されていました。でも、党内人事とはそういうものです。若手を入れてどうのということではないので、しっかり固めてやりたいのでしょう。実際、閣僚を見ても手堅いです。派閥にも気を配り、バランスよくつくっています。実務者内閣と言われますが、こういうところなのでしょう。安倍政権の継承で、哲学そのものを変えないということであれば、この方法はいいと思います。
官僚を巧みに掌握している菅氏~安倍政権継承以上の政治哲学があるかどうか
佐々木)菅さんの最大の武器は、8年近く官房長官をやって来たので、霞が関の官僚の掌握が巧みだということです。どこをどう押せば官僚が動くのかをよく知っています。昔、民主党政権の前の2000年代前半くらいまで、「官僚支配打破」とよく言われていました。中曽根政権時代の行財政改革のころから、ずっと言われていました。それを民主党政権のときに変えようとしたのですが、民主党はお友達内閣のようになってしまいました。外部の有識者を呼んだのだけれど、怪しげな人が多かったですね。当時、私は総務省の情報通信審議会で、専門部会の委員をやっていたのですが、民主党政権になったらテレビのコメンテーターのような人を委員に呼んで来て、的外れな発言をして、みんなが唖然とするシーンがいくつかありました。結局、仲のいい人を入れるだけというやり方になり、官僚支配を打破することはできませんでした。そして安倍政権になり、内閣人事局をつくりました。それをいま、「官邸の支配だ」と朝日新聞が言っていましたが、「官僚支配打破」とさんざん言っていたのに、どの口が言うのかと思います。
飯田)政治主導が素晴らしいと言っていました。
佐々木)立憲民主党まで言っているのですが、前身の民主党は官僚支配打破を旗頭に政権交代をしたので、何を言っているのかという感じでした。内閣人事局をつくった7~8年の間は、すごい勢いで掌握しまくり、ほとんど官僚の首根っこをつかんでいます。やりすぎだという意見もありますが、それをやり切ったということは、菅さんにとって大きな力になっているでしょうし、今後の実行力としては最高だと思います。その実行力の根幹にある政治哲学に、安倍さんを継承する以上のものがあるかどうかです。
飯田)いまのところ、まだ見えない。
佐々木)意外と実務内閣で実行力があるから、長続きすると思います。
飯田)ワンポイントリリーフのように見られるし、報じられますが、意外と長い政権に。
佐々木)前任者が亡くなったり、病気で辞めたりして継承した内閣は、意外と強靭です。
飯田)かなり過去の例になりますが、大平正芳さんが選挙中に亡くなって、鈴木善幸さんがやりましたけれど、大平さんより長かったですよね。
気がかりは外交と安全保障~中国との間で尖閣をめぐって武力衝突が起きた場合、どこまで決断できるか
佐々木)そういうケースがけっこうあります。1つだけ気がかりなのは外交、安全保障です。外交、安全保障について菅さんは未知数ですし、あまり上手ではなさそうです。過去に訪米したという実績はありますが、さほど評価されていません。何も起きない平常時に、着々と安倍政権の哲学に基づいて実務的にやるのはうまく行くと思いますが、仮に菅政権になってから、中国との間で尖閣をめぐって武力衝突が起きたときにどうするか、ということは気になります。どこまで決断できるのか。
飯田)国家安全保障会議のような役割が、重要になって来るかも知れませんね。
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