黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にニュースキャスターの辛坊治郎が出演。ニュースキャスターとしての自らのあり方について語った。
黒木)毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺って行く「あさナビ」。今週のゲストはニュースキャスターの辛坊治郎さんです。よろしくお願いいたします。
辛坊)よろしくお願いします。
黒木)テレビでよく拝見させていただいていますけれども、本当に頭の回転が早くて。
辛坊)恐縮です。そんなことはありません。
黒木)そつがなくて、そしてちょっとクールで。ときどき下を向いて笑われますよね。あれが、なかなか愛くるしくて。
辛坊)「辛坊さん、笑いすぎです」と怒られています。笑っているつもりはないのですが、テレビの用語で「抜く」というのがありますけれども、VTRとか、他の人が答えている最中に小さな窓を画面上につくって、顔が小さく映るときがあるではないですか。あれがね、どのタイミングで抜かれているのかがよくわからないときに、「笑ってはいけないなと思うけれど、プライベートだったら笑うな」ということってありますよね。「オフィシャルでは笑えないけれども、ツボに入って笑うよな」という。その瞬間に画面上の小さな窓に入れられることが多いのですよ。「ここで俺が笑っているのはまずい」と思うのだけれども、出てしまったら後の祭りですね。
黒木)そうですか。その笑顔がなかなか好感度がよろしくて、拝見していて、「辛坊さんは何を笑っていらっしゃるのだろう」と想像するのがすごく楽しみです。
辛坊)あれを解説できれば、すごく面白い話ができると思うときはあります。「ここは笑わないだろう」というときに、全然違うことに頭のなかで関連付けられて、笑ってはいけないタイミングで笑ってしまうことがあるのです。そういうときに限って、抜かれてしまう。観ていらっしゃる方は「このタイミングで笑うことじゃないだろう」と思われるでしょうね。テレビもラジオもそうですけれども、この商売、基本的には聴いてくださっている方、観てくださっている方との共感ではないですか。テレビを観てくださっている方と同じツボで笑えればいいのですが。
黒木)「なぜここで笑われるのかな」と想像していたら、「ご自分がこれから質問しようとしていたことをお答えになった」とおっしゃっていました。
辛坊)菅総理のときですね。ありました。菅総理というのは、そういう意味では勘が鋭いです。私もあんな経験は初めてでした。菅総理に生で出ていただいて、あのときはこちらの心理が読まれているような気がして、ゾッとしました。「うわ、先回りされた」という。菅総理は言われているより、ずっと読みが鋭いかも知れません。すごく手堅くて、前例踏襲型のようなイメージですよね。前政権の遺産を引き継ぎながら、少しずつ独自色を出して行くのだろうというのが、世の中全体の受け止め方だと思います。しかし、今年(2020年)に入って2回私のやっている番組に来ていただいたのですが、2回とも「この人、表面に見えている人とは違うな。また別の広がりがある人だな」ということは思いました。
黒木)そういうことはテレビではおっしゃらないのですか?
辛坊)先ほどの話で言うと、共感ですから。笑いで共感してもらえなかったように、「ここまで言ったら皆さんと共感できるな」「ここから先は共感してもらえないな」というものがあります。私も若いときは、基本的には、テレビを観てくださっている方との共感を第1にやって来たのですが、この歳になりましたから、好きなようにやらせていただこうと思うところがあって、テレビを観てくださる方、ラジオを聴いてくださる方を置いてけぼりにして、自分で楽しんでいるところはあります。
辛坊治郎(しんぼう・じろう)/ニュースキャスター
■1956年、鳥取県生まれ。
■1980年、早稲田大学法学部卒業後、読売テレビ放送に入社。
■アナウンス部に配属され、「ズームイン!!朝!」「ウェークアップ!」などを担当。
■2000年、報道局情報番組部長に就任。
■朝の情報番組「ズームイン!!SUPER」でニュース解説を担当するなど数々の番組で活躍。
■2010年に読売テレビを退社。設立した株式会社大阪綜合研究所・代表に就任。
■現在は「ウェークアップ!ぷらす」「そこまで言って委員会NP」など多数担当。ニッポン放送では「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」を担当。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳