菅政権が無観客でも東京五輪を開催したい本当の理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月26日放送)にテレビ東京 政治部・官邸キャップの篠原裕明が出演。菅総理を取り巻く現状について解説した。
菅総理の政務秘書官が交代した理由
通常国会がスタートして1週間が経った。このコーナーでは、テレビ東京・政治部官邸キャップの篠原裕明に、菅総理の話題を中心に話を伺う。
飯田)“日時計の上にハムエッグ“さんからメールをいただきました。「篠原さんに質問です。先日、菅総理の政務担当秘書官が交代になったというニュースがありました。坂井官房副長官も一部報道(週刊文春など)では、二階幹事長とうまく行っていないのではないかとの記載がありましたが、平時はもちろん有事の際は、総理官邸の調整能力というのが重要だと思うのですけれど、これらのニュースを見ているとちょっと不安に思うのです。実際のところどうなのでしょうか?」ということです。秘書官交代の報道は2020年末にありました。
篠原)そうですね、菅事務所の若い秘書官から、寺岡氏という官房長官時代に秘書官をやっていた財務省の方に変わりました。
飯田)そして、総理官邸の調整機能についてはどうでしょうか?
篠原)この秘書官の交代は、調整機能強化、発信力強化が狙いでしょうね。この寺岡氏は、官房長官秘書官時代にインバウンド政策を手掛けた人です。菅総理はインバウンドに力を入れていました。
飯田)海外からお客さんを呼び込むという。
篠原)その中心的な人物がこの寺岡氏だと言われています。菅政権はいろいろなことで受け身な状況になりつつあったので、官邸から発信することを強化するという意味合いで、寺岡さんが呼び戻されたと言われています。
飯田)この間も山田太郎さんを官邸に呼んで、SNSをどうやったらいいか聞いたという報道が出ていましたけれど。
篠原)発信するだけではなくて、発信する政策をきちんとつくるというところで、菅総理のなかでは寺岡氏に期待しているのだろうと思います。
坂井官房副長官を相手にしていない幹事長室
篠原)坂井官房副長官のことについては、確かに幹事長室とはほぼ没交渉になっています。幹事長室としても、「もう坂井副長官を相手にしなくていい」、「俺たちは加藤官房長官や、菅総理と直接やるから」という感じです。実は、安倍政権のときは、総理室と幹事長室は結構距離があったのです。というのも、二階さんと安倍さんは「戦略的互恵関係」と安倍前総理自身も言っていたように、人間的にそんなに近しいわけではありません。しかし、菅総理と二階さんは、この政権をつくった盟友なわけです。二階さんを支える林幹事長代理も含めて、菅さんと昵懇ですから、直接トップ同士でやっているのですよね。だから「坂井副長官がいなくても、どうとでもなる」という思いを幹事長室は持っているのです。
飯田)官房副長官と言うと、国対委員長との調整においても機能していないというような話がありますが。
篠原)坂井副長官は、河野大臣と同じく、菅総理が大変気に入っている政治家の1人です。しかし、坂井氏は菅総理だけしか見ていないのではないかという指摘があります。
飯田)官房副長官には、周りは「もっと現場で汗をかいて欲しい」というような思いがあるのでしょうか?
坂井官房副長官にはもっと汗をかいて欲しい~公表する前に根回しをする
篠原)大島衆議院議長は海部内閣のときに官房副長官をやったのですが、「俺はもっと汗をかいたぞ」と坂井さんを叱咤したようですね。
飯田)もう少し国会にも顔を出すとか、リレーションシップを取った方がいいという話ですか?
篠原)いろいろなところに行けと。
飯田)そういうところで、いろいろなところへ行こうとすると、コロナというのはいい免罪符になってしまうのかも知れませんね。
篠原)ソーシャルディスタンスだと言えばそうですからね。しかし、電話だってできるわけですからね。加藤官房長官は調整力がないとの指摘もありますが、事前に重要な方針が決まるときは、幹事長や林幹事長代理などに連絡を入れるということは徹底しているようです。
飯田)「聞いてないよ」というのは許されませんからね。
篠原)それは政治家がいちばん嫌いなことです。「俺は聞いていない」というのが。「公表される前に根回しをする」ということが重要です。これは安倍政権より、いまの菅政権の方が細かくやっているように思います。安倍政権は官邸の力が大変強かったので、「与党は官邸が決めればついて来るだろう」という自信があったのです。でも菅政権は、与党の後押しがなければ立ち行かないという感覚があるように感じます。
政権幹部はコロナの鬱々とした状況をオリンピックで一掃して、いい雰囲気で「解散総選挙」に臨みたい
飯田)一方で、オリンピックがどうなるのだろうということですが。
篠原)海外で「日本政府が東京オリンピックの中止を検討している」という報道が妙な形で出ましたけれど、私がいま取材している感じでは、政権幹部は「たとえ無観客でもいい、一部の国が来なくてもいいから、何としてでもオリンピックはやりたい」という感じです。その心は「このコロナの鬱々とした状況をオリンピックで一掃して、いい雰囲気にして解散総選挙に臨みたい」ということです。
飯田)やはりそこと連動して来ると。衆議院議員の任期は2021年10月ということになっていますが、オリンピック・パラリンピックが終わるともう9月くらいですか。
篠原)パラリンピックが9月5日くらいに終わりますからね。そうすると「9月は総裁選をやって、総選挙」というのがいまのメイン・シナリオです。もし、オリンピックが中止になろうものなら、「総理を変えて空気を変えよう」ということも出かねないのではないかということを、政権幹部は心配しています。その政権幹部は、「もしオリンピックが中止になったら即、総裁選をやる」とも言っています。
飯田)前倒しでやってしまうと。
篠原)いま総裁選をやっても、「菅総理以外に勝てる人はいないだろう」という強気な姿勢なのです。
支持率が2割台になると赤信号~しかし党の執行部に「反旗を翻す」というマインドはない
飯田)それは支持率とも連動して来ますか?
篠原)そうですね。いま各社の世論調査の支持率は3割台です。これが2割台になると赤信号ということになります。以前の自民党であれば、「菅おろし」とすぐ言われました。ところが以前とは自民党の体質が違うのですよ。そういうのは大体若手が声を挙げるのですが、いまの若手は2012年の当選以降、ずっと安倍政権のもとでやって来た人たちですから、党の執行部に反旗を翻すというマインドはないし、そういう経験をしたことがありません。かつての2000年代後半の「安倍おろし」、「麻生おろし」を経験した人はいちばん若くても2005年当選、当選5回生以上です。
飯田)なるほど。あの当時、安倍おろし、麻生おろしをしていた若手の人たちというのは政治改革、政権交代という流れの90年代を知っている人たちだったりすると。そうすると執行部というのは、意外と脆弱なものだというのがわかっていたりする。
篠原)そういう感覚が受け継がれていない。それはいいことなのか、悪いことなのかわかりませんが。かつての自民党とは違うなという感じがします。
野党に政権を獲られるという危機感もない
飯田)では菅おろしみたいなものが始まるとしても、それはボス同士の権力争いのようなところで始まって行くのですね。
篠原)そうかも知れませんね。あとは野党に政権交代の気迫がないというか、野党に政権を獲られるという危機感がないということもありますけれどね。
飯田)その辺はやはり、政策論争のようなものがなくなってしまっているということとも関連しますか?
篠原)それもあるかも知れません。
篠原裕明 テレビ東京 政治部 官邸キャップ
【テレ東 官邸キャップ篠原裕明の政治解説】
https://www.tv-tokyo.co.jp/news/series?id=2&cornerId=0
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