ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（1月27日放送）に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。2020年度第3次補正予算案が衆院本会議で可決されたニュースについて解説した。

第203臨時国会が事実上閉会し、記者会見に臨む菅義偉首相＝2020年12月4日午後6時43分、首相官邸　写真提供：産経新聞社

2020年度第3次補正予算案が衆院本会議で可決

新型コロナウイルス対策の費用を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案は1月26日、衆議院本会議で採決が行われ、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。27日から参議院で審議され、28日に成立の見通しである。

飯田）追加経済対策は19兆1761億円と出ています。

東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県を対象に緊急事態宣言が発令された。通勤時間帯で混雑する品川駅＝2021年1月8日午前、東京都港区　写真提供：産経新聞社

閣議決定した際には「大き過ぎる」と批判された予算案

高橋）まったく新しく決まったように報道しますが、これは去年（2020年）12月の頭に閣議決定されて内容も出ていることです。12月の頭のときに私は関与していたのですが、そのときには、各紙一斉に「予算が大き過ぎる」という批判でした。今回はこの予算案に対するマスコミの「大き過ぎる」という批判はないのですかね？

飯田）どちらかと言うと、「予算の組み替えに応じなかったではないか、コロナ対策費をもっと増やせ」という批判はあります。

高橋）1ヵ月以上前から、「3次補正予算が大き過ぎる」という批判はなくなってしまったのですね、不思議です。

飯田）あの当時言われていたのは、補正の19兆に加えて本予算の方、15ヵ月予算の全体で真水30兆円というのが大き過ぎると言われていました。

高橋）いまは「足りない」と言っていて、何が言いたいのでしょうか？

GoToトラベルののぼり＝2020年12月23日午後、東京都中央区　写真提供：産経新聞社

Go To が感染を拡大したというエビデンスはない

飯田）記事を読むと、いま停止しているGo To 関係の予算が補正のなかに計上されているので、これを医療機関や生活困窮者への支援に回すべきではないかと。

高橋）Go To が感染を拡大したというエビデンスはなかったですし、止めても関係がなかったでしょう。Go To は全移動の1％くらいでしかないので、説明はできません。1％の要因で全体を説明するのは無理だということは常識的にわかります。批判されたので止めてみたらこれです。

飯田）Go To を停止した12月半ば過ぎ、その後むしろ感染者が増えました。東京でも1000人を超えたのがそのタイミングです。

高橋）そうすると他の要因だと推測できます。

飯田）京都大学の西浦教授などがGo To で増えたのではないかと言っておりますが。

高橋）あれもいろいろなステージがあります。最初のときに少しあったかも知れないというレベルです。全体に影響があったということではないと思います。移動の1％くらいしかGo To がないのですから、それで全部説明するのはデータ的に難しいです。

飯田）Go To が一部作用したかも知れないというところまではできても、全体までは説明しきれないですよね。

高橋）Go To を止めたら、今度は「飲食や旅行業界はどうなるのか」とまた逆のことを言います。そういう人たちなので、前に言ったことはすぐに忘れて精神衛生上いいですよね。

衆院予算委員会に臨む菅義偉首相＝2021年1月25日午前、国会・第1委員室　写真提供：産経新聞社

第3次補正予算を組んだ12月半ば当時、現在の状況は想定内のことだった

飯田）この第3次補正予算は12月頭くらいには決まっていたということです。あのとき、1月にこれだけ感染者が増えて経済がまた止まるというような想定はあったのですか？

高橋）ある程度はありました。いつ感染が拡大するかわからないので、そういうことが起きても大丈夫なようにしました。予算を組む場合、「何か起こったときに対応できない」ということが最悪なのです。いろいろなシナリオのなかでそれも入っていたし、最後に余ったら残せばいいです。大きいものをつくっておかなければいけません。大は小を兼ねるという話です。

飯田）一部に1月、2月はこのまま行くと凹んでしまうというので、4次補正なども視野にということでしたが。

高橋）4次補正の可能性はなくはないのですが、それであれば用意しておけばいいのです。ある程度考えられるのであれば、そこで用意した方が楽ですよね。3次補正が足りないからまたやるとなると大変です。

【新型コロナ・特別定額給付金申請開始区役所混雑】特別定額給付金のオンライン申請が始まり、マイナンバーカードの取得手続きなどで混雑する浪速区役所の証明発行窓口＝2020年5月11日午後、大阪市浪速区　写真提供：産経新聞社

3次補正予算に一般の人への給付金の予算は入っていない

飯田）東京都足立区、ラジオネーム“ピノ”さんからメールをいただいています。「一律の給付金を菅総理が予算委員会で否定したそうですが、どうなのですか。実際出る可能性はあるのでしょうか。どこかのタイミングで給付に踏み切る可能性も、このままでは厳しいかも知れませんがどうですか？」ということです。

高橋）いまの3次補正には給付金は入っていないので、「できない」と言うしかありません。4月になれば新年度なので、違うフェーズになります。論理的な可能性で言えば、4次補正というのもなくはありません。用意したなかでは、医療従事者などに先に手当てをあてるので、一般の人までは想定していません。3次補正には、一般の人への給付金の予算はありません。

飯田）将来にわたって、「やらない」というわけではないのですね。

高橋）4次補正、または新年度の1次補正の話であれば、まったく違う話です。

飯田）政局と絡めて解説する人は、いま言ってもメリットがないから言わないけれど、選挙が近づいたらわからないと言います。

高橋）そういうことも考えられますが、3次補正では想定していないということです。4次補正の話になったら、またそれは違う話だということです。