ふかわりょう~順風満帆でなかったからこそ見られる“いまの風景”
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にお笑い芸人・DJのふかわりょうが出演。最新刊のエッセイ集『世の中と足並みがそろわない』について語った。
黒木)今週のゲストはお笑い芸人、DJなど、多方面で活躍なさっているふかわりょうさんです。『世の中と足並みがそろわない』という本の最後に「このわがままに育った悲しい男に隙を見出してもらったら幸いです」、「どうぞ、私が溺れてしまう前に私の隙を見つけて」と書いてあるのですが、隙があるのですか?
ふかわ)人によっては、「いや、あなた隙だらけだよ」とも思われているとは思うのですが、隙がもしあるとしても、「隙を見せたくない」と思っていました。2020年の2~4月の3ヵ月、このエッセイを書くことになったのですが、1つだけテーマがあって、それは「いままでさらけ出せなかったものを出す」ということでした。いままで、隙を見せずに、もし隙があったとしても、「それは私の隙ではない」という、意固地なところがありました。
黒木)そうなのですか。
ふかわ)「何も失うものもないから全部出してしまおう」という、そういう魂の開放というか、「嘘偽りなく出す」というテーマで綴ったものです。それを隙と感じてもらったら、それはそれで嬉しいなという心境になれたのです。
黒木)事務所に入られて、「お給料を上げないでください」とおっしゃったそうですね。「珍しい人だな」と思われたと。その後、「少し高額なところに越すと頑張るから」という先輩の教えで高額なマンションへ引っ越したのですね。
ふかわ)昨今の第7世代の人はわかりませんが、私が若いころはそれがみんなの共通認識でした。デビューはしたものの、そのあと順風満帆ではなかったし、心ない言葉も浴びましたが、いまとなっては、どれも自分に必要なことだったと思います。厳しい冬の寒さで糖度を増す作物のようなことでしょうか。20歳でデビューしてチヤホヤされたまま今日まで来ていたら、たぶん違う景色になっていただろうし、ここにも来られなかっただろうし、この本もできなかったと思います。
黒木)例えば、「〇〇さんはきょう出社されていますか」と聞かれて、「はい、います」と答えるけれど、「それは変だ」とありますが、私も変だなとは思っていたのですよ。でも、変だなと思っていても、日々のなかで流れて行くので、いちいち心に留めておかないではないですか。
ふかわ)まあそうですよね。でも私の場合は引っかかってしまうのです。喫茶店にいても……。
黒木)オムライスについて書かれていますね。
ふかわ)そうなんです。ずっと湯気が立っていて、「これはどこに出すのだろうな」と思っていたのですが、もう見かねて、店員さんに「これは何ですか」と言ったら、何ごともなく、「これ、オムライスです」と。「いやいやいやいや、そうではないでしょ」というのがあるではないですか。
黒木)湯気が立っているうちにお客様のところに運べばね。美味しく食べられるのに、「これは何ですか」と言ってしまったのですよね(笑)。
ふかわ)そうなんです。これはオムライスだということはわかった上で、「これをどうしようというビジョンがあるのですか?」ということなのですが。
黒木)ないんですよ。「これは何ですか」「オムライスです」(笑)。
ふかわ)ただ、私はそこで怒りで終わるのではなくて、そこでモヤモヤっとしたものを体内に蓄電し、やがてはそれでスマホの充電ができればな、という未来への展望なのです。
ふかわりょう/お笑い芸人・DJ
■1974年8月19日生まれ。神奈川県横浜市出身。
■慶応義塾大学在学中の1994年にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバンを装着し「小心者克服講座」のネタでブレイク。
■現在は「5時に夢中!」のMCや「ひるおび!」のコメンテーターなどを務める。
■またROCKETMAN、ryo fukawa名義で音楽活動も継続。全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムをリリースするなど、多彩な活動を展開。
■2020年11月に最新エッセイ集『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)を発売。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳