コロナ禍における音楽業界の現状と未来……エンタメ・音楽業界のキーマンが語る

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一般社団法人日本音楽制作者連盟理事長・野村達矢氏、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長・中西健夫氏が2月3日、ニッポン放送「辛坊治郎ズーム そこまで言うか!」に出演。新型コロナウイルスの感染拡大のなかで大きな打撃を受けている音楽業界の現状と課題について語った。

コロナ禍における音楽業界の現状と未来……エンタメ・音楽業界のキーマンが語る

コロナ禍における音楽業界の現状と未来

毎年拡大していたライブエンターテイメントのマーケットに大きな打撃

辛坊)コロナになってから大変ですよね。

野村)去年の2月26日に安倍首相(当時)の方から大型のイベントの自粛要請が出まして、それ以来我々のエンターテインメント業界ではコンサートを中止したり延期することが毎日のように起こっています。今年の年明けも緊急事態宣言が出たのでたくさんのイベントやライブ、コンサート、演劇も含めて延期や中止の措置を取っている状態です。

辛坊)去年の2月26日は、東京ドームで大きなコンサートがある当日に中止になって大騒ぎでしたよね。

野村)Perfume(パフューム)のコンサートの1日目が終わったところで、2日目から中止になりました。

辛坊)逆に言うと、ちょうど1年前のいまは普通にやっていたということですよね。

長野)いろいろ気をつけながらやっていた状態が2月の上旬くらいです。

辛坊)コンサートを中止にすると支払いが発生しますよね。チケットを売った場合は返金しなければいけないですし、ホールを押さている場合はキャンセル料が発生するのかわかりませんが、そういった出銭というのは、業界全体で去年1年間どうだったのですか。

野村)非常に大きな打撃を受けています。ライブエンターテイメントのマーケットというのは6千億強くらいあります。夏フェスなどでそういったものが盛んになっていて、ライブエンターテイメントは毎年増えていっていました。去年が80%減ですね。2020年度は1300億ぐらいになってしまうのではないでしょうか。外食産業が2020年12月が前年度月比で15%減と言っていましたが、我々は80%減です。

コロナ禍における音楽業界の現状と未来……エンタメ・音楽業界のキーマンが語る

新型コロナウイルスの感染防止をめぐり、東京ドームで開催される予定だったPerfume(パフューム)のライブが開場直前に急遽中止となり、電光掲示板に表示された中止のお知らせ =東京都文京区 撮影日:2020年02月26日 写真提供:産経新聞社

飲食業とは違い直接的な補助金がない音楽業界

辛坊)きついですね。いま小さい飲食店は、休業あるいは時短にすると1日6万円というのがありますが、音楽業界への国から補助金はどうですか。

野村)直接的なものはないです。ライブをやったときに補助されるJ-LODlive(ジェイロッドライブ)という補助金とか、文化庁から文化表現する演者に対して多少の手当てが出ることはあります。基本的に直接的なものはいまのところないです。

辛坊)一部のミュージシャンの皆さんはネットを使ったライブ配信のようなものを始めている方は多いですが、ある程度商売になっているのですか。

野村)いままでなかった分野として、オンラインライブという配信によるライブの新しい表現、興行が始まりました。たしかにいままでなかったものから新しくできたのでマーケットは増えましたが、ライブの代替になるかと言うとそうではありません。オンラインを通して伝えられるものは視覚と聴覚だけです。ライブ会場で体験できるような温度感や臨場感はそこまで伝えきれない部分もありますし、技術的な部分でも送信の費用や制作の費用がかかるのでペイメントするのはなかなか難しい状況です。

辛坊)オンラインライブだと救済できないのが現場で働いている膨大な人です。オンラインでも設備がいるとは言いながら実際のコンサートとは違うと思います。リアルなコンサートが少しずつ始まっているとはいえとてつもない打撃ですね。

中西)「ライブ(をやる)」と言うと、ミュージシャンとか演者とかに一般の方から「何でやるのか」という話が行って、我々も困っています。そうではなく、我々は関連産業を支えながらやっている業界だと思いますよ。例えばGo ToトラベルとGo Toイート、Go Toイベントにしても、音楽にインクルードされていると思います。そういう意味で言うと多大なる影響を与えている産業です。

辛坊)そうですよね。

コロナ禍における音楽業界の現状と未来……エンタメ・音楽業界のキーマンが語る

(左)一般社団法人日本音楽制作者連盟理事長・野村達矢氏、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会会長・中西健夫氏

ライブ従事者を支援する民間の基金「Music Cross Aid」

辛坊)ちなみに中西さんは協会の会長でもありますが、会社(ディスクガレージ)の社長でもありますよね。一般によく知られているミュージシャンの人たちとお付き合いがあるのですね。うらやましいです。

中西)まったく逆で、アーティストと飲むのはきついです。「いつライブできるのか」と言われて困ります。昨日も(アーティストと話したのですが)、そのアーティストにはライブをやるやらないで葛藤があり、どちらにせよ正義はありません。昼間から長時間話して、「やる」という話に落ち着きました。この苦しさはアーティスト本人もあります。

辛坊)そんな状況のなか、「Music Cross Aid(ミュージッククロスエイド:ライブエンタメ従事者支援基金)」という活動をしていらっしゃるということで、(車を)運転しているときも(ラジオで)この案内が流れるので、私も名前自体は知っています。どういったものでしょうか。

野村)コンサートに関わっている従事者の人、舞台をつくる人、照明をやる人、音響、楽器を扱う人、ミュージシャン、映像クリエイターなどいろいろな方々が関わってコンサートをつくっています。2月26日以来コンサート活動が制限される状況で、そういう方々が職を失い収入もなくなっています。まず我々は音楽団体として、中西さんやホリプロの堀(義貴)会長など音楽団体で政府との交渉をしていますが、補償や補填など経済的な支援をとっていくのは難しい状況です。相互援助できるように民間の力で基金をつくりそこにお金を集めてライブの従事者に支援する仕組みをつくったのが「Music Cross Aid」という基金です。

辛坊)応援したい方はどうすればいいのですか。

野村)「Music Cross Aid」(※)と検索していただければ、(サイトが)でてきます。

辛坊)Musicは「音楽」、Aidは「援助」、間のCrossはどういう意味ですか。

野村)「横断的」という意味と、赤十字のような助け合うと意味もあります。

辛坊)「Music Cross Aid」と検索すれば出てくるのですね。

野村)そこに募金をする応募フォームが出てきます。最低金額1000円から申し込むことができます。これは個人の皆さん、音楽に関係する法人の方々も協力していただきいま1億6000万円くらいです。

辛坊)そのお金は仕事を失った現場の皆さんに配布されるのですね。

野村)第1次、第2次、いま第3次の募集を始めていますけれども募集期間を設けて困っている方々を支援する仕組みになっています。

辛坊)そういった困っている方々の声が、実際聞こえているのではないですか。

中西)我々の仕事は、急に明日から違う仕事をやれと言われてもできない、ある意味専門職のようなものです。離職されると今度再開されるときに“人がいない”という話になるのではないかという不安があります。ここで、何とかこの職種にとどまっていただきたいという希望があります。そのため基金や政府への要望をしています。世の中全体が要望ムードなので我々だけとはいきませんが、この産業にいるかぎり音楽業界を守らなければいけません。

辛坊)音楽業界1人1人を助けるのもそうですが、日本の音楽文化の未来を支えるという意味でしょうね。

中西)かっこよく言えばそうなると思いますが、いまこういう状況のなかでも音楽を聞いてライブに来ていただいて感動して帰っていかれる姿を見ると、やってよかったと思います。そのことを非難されることもありますが。やることに対しての非難だけはやめていただきたいです。

(※)「Music Cross Aid」https://www.musiccrossaid.jp/

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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