ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月18日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。大手5大銀行の2021年3月期の連結決算について解説した。
大手5大銀行の3月期連結決算
5大銀行グループの2021年3月期の連結決算が出揃った。純利益の合計は前期比1.6%増の2兆275億円と、3年ぶりに増益となった。
飯田)三菱UFJ、三井住友、みずほ、三井住友トラスト、りそなという5つのグループです。これは景気のいいニュースなのですか?
ポストコロナで倒産する企業が出て来る可能性も
クラフト)一見すると増益でプラスのようなイメージがあるのですけれども、気になるのは貸倒引当金などの与信関係費用で、これが2.7倍計上されているのですね。
飯田)与信関係費用。
クラフト)この意味合いが何かと言うと、金融機関がポストコロナでの倒産、それに伴う失業、こういう問題を織り込んでいるということです。海外では、ワクチン普及でコロナが収束と。日本でもやがてそうなるのではないか、「増益でプラスだ」と楽観的な面があるのですけれど、やはり水面下では、痛手を被った企業が非常に多く、これから倒産が来る。政府支援がなくなると、相当厳しい状況がこの先もあるのかと危惧してしまうので、そこは政府としても、柔軟に下支えする対応を取っていただきたいと思います。
雇用の補助やインフラの整備、セーフティネットが問われて来る
飯田)政府がいろいろと要請して、企業を潰すなというところで、実質無利子・無担保でお金を貸すということをやっていました。3月でこれは終わってしまっているのですね。
クラフト)そうなのです。これはモラルハザードがあって、本来倒産すべき企業が救われて、救われなければならない企業が苦しんでいるという状況もあるので、コロナ禍のときは「とにかく全部を下支えするのだ」という政策は間違っていないと思うのですが、これからは、どうしても支えることのできない企業が出て来ます。これに対する雇用の補助やインフラ整備、セーフティネットなどが問われて来ると思いますので、その辺りをしっかりとして欲しいですね。
社会的弱者を救うセーフティネットが必要
飯田)今回のコロナ禍の経済的な影響について、業界・業種によってかなり色が違いますよね。
クラフト)補助金については一律ではなく業界ごと、あるいは企業の特性によって、もっと柔軟に対応して行く必要があります。そして、今回のコロナ禍で最大の被害を受けたのは女性です。特にシングルマザー。ここを手厚く下支えして欲しいと思います。
飯田)女性の非正規雇用、シングルマザー、社会的弱者だといままでも言われて来た人たちが、より厳しい状況になっています。
クラフト)こうやって銀行が予想しているように企業倒産が増えて来ると、そのような社会的弱者がさらに被害を受けるので、そこのセーフティネットは重ね重ね重要だと思います。
飯田)予算的にも予備費等々を積んでいると思いますけれども、必要に応じて補正もいるということですか?
クラフト)必要に応じて、速やかに補正をして準備金を用意し、すぐに使えるようにしておくべきだと思います。
景気回復のためには「ワクチンの普及」を
飯田)経済全体の先行きとしてはどうなのでしょうか?「明るいぞ」と言う人もなかにはいますよね。
クラフト)一点に集約するとしたらワクチンですよね。アメリカの例を見れば一目瞭然で、ワクチン普及と共に景気が急回復しています。特にサービス業。日本もとにかくいまはワクチン普及に全力を尽くすべきです。それによって経済活動も回復して来ると思いますので、まずはワクチンです。
飯田)アメリカの場合、高齢者が先に打つなどの優先順位はあったのですか?
クラフト)あったのですけれど、あまりにもワクチン接種が早くて、高齢者と同時くらいにやるという。とにかく段階的に1年かけて、「まずは高齢者です」などとやっていると、結局は感染が収まらないのですよね。やるときは集中してやることが大事ですね。
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