『小池百合子 権力に憑かれた女 ドキュメント東京都知事の1400日』(光文社新書)の著者で、週刊文春記者・和田泰明氏が、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」(※ヨット太平洋単独無寄港横断中のため辛坊は不在)に出演、東京五輪と都知事選への小池都知事のスタンスについて自説を語った。
世論が「中止でいいんじゃないか」というときに、一番に言い始めるのでは
飯田)『ドキュメント東京都知事の1400日』ということで、小池都知事の第1期、その選挙のときからずっと取材をしているって、嫌がられなかったのですか。
和田)まあ、嫌がられましたよ。小池さんの記者会見ってすごく独特で、当てる人を小池さんが決めるのです。普通はだいたい事務方が当てるのだけれども。けっこう珍しくて。
飯田)都知事本人が指すというのは、珍しいと。
和田)お気に入りの人を当てるのです。だいたい記者クラブの人たちばかりで、毎回TBSさん、フジテレビさん、NHKさんとだいたい当たる人がいて、私が行っても当たらないので、もう行くのをやめました。馬鹿らしいなと思って。それくらい徹底していますから。
飯田)では、そこからはネタは取れないと。
和田)そうです。だから、周辺をとるという。結局小池さん本人にも今回はインタビューできなかったので。
飯田)今回これを出されたのは、前回(2020年)の都知事選に合わせるというような形で。
和田)そうですね。本が出たのは知事選後になりましたが、知事選前が締め切りで、原稿を入れていましたけれども。
飯田)あれから1年が経って、いまの現状というのはどうですか。つぶさにご覧になっていて、変わってきていますか。
和田)いや、変わっていないですね。これは、もしそうなったら褒めてほしいと思うのですが、本の中に「五輪中止を言い始めるのではないか」と私は書いているのです。その理由というのは、東京都の貯金と言われている財政調整基金というのがあって、いまそれは減っているのですが、無い袖は振れないということで、あと世論が「中止でいいんじゃないか」というときに、小池さんがいちばんに言い始めるのでないかということを書いていて、いまそういう雰囲気になっていますよね。
中止を言い出せない「チキンレース」のよう
飯田)それこそ自民党の二階幹事長がテレビの収録の中でぽろっと言って。
和田)あれはけっこう反省しているみたいですね。二階さんは「言っちゃったな」ということで。二階さんにしては珍しく反省しているみたいです。
飯田)二階さんが発言すると、それこそ「党の実力者たちはすでに中止で動いているのではないか」とか、「小池さんと話をしているのではないか」など、いろいろな憶測が飛んだけれども、そういうことではなく。
和田)本音がぽろっと出てしまったということみたいです。だからチキンレースみたいになっていますよね。自民党の菅さんに近い人ほど、「絶対にやるんだ」ということを言いますが、内心「これはまずいんじゃないか」と思いながらも中止を言い出せないというところがあります。
「コンビニ酒類販売自粛」発言も、都議選を意識した“アドバルーン”
飯田)小池さんは今回の緊急事態宣言に際しても、飲食店の営業も、お酒の提供もやめてくださいとか、看板の火も落とせとか、コンビニで酒も売るなとか、だんだん先鋭化しているようにも見えるのですが。
和田)コンビニの件は、4月28日の記者会見でぽろっと言ってしまったのですが、小池さんってけっこう真面目で、付箋がたくさんあるような資料をどっさり記者会見場に持ち込むのです。相当事前に読み込むので、冒頭発言というのは、役人が積み重ねたものだと思いますが、最後にぽろっと言ってしまったのは、彼女の政治観というか、ちょっとアドバルーンを上げてみようという勘が働いたのではないかと私はみています。
飯田)反応としては「おい、おい」という。
和田)それでいいのです。「おい、おい」でよくて、噂が広まるだけでも、「いまのうちに買っておこうか」になるかもわからないし、「じゃあ、やめておこうか」になるかもわからないし。その辺りの影響というのはみているのではないでしょうか。
飯田)7月には都議選がやってくるぞというタイミングで、都政にとってはけっこう大きなイベントですが、(あの発言というのはこれを)当然意識していますか。
和田)もちろんそうだと思います。都民ファーストの会の特別顧問というのをまだやっていて、1月に千代田区長選があったのですが、小池さんの秘書の樋口さんという方が出て、すごく応援に入ったのです。連日入って。私はこれはけっこう意外でした。自民党にすり寄っていくのではないかと思っていたのですが、次の都議選は、けっこう都民ファーストの会に肩入れするのではないかと私は思っています。
飯田)これは、都政をみている記者の中でもわかれているところがあって、「最近都民ファーストの会に対して冷たいのではないか」みたいな話とか。
和田)そういう希望的観測もあります。自民党側としてはそうされると怖いので。
飯田)がっつり応援に入られるとまた旋風が巻き起こるのではないかと。
和田)そうですね。
飯田)いろいろな情報が乱れ飛びみたいなところですか。
都議選前にバン!と言って「小池さんすごいな」と思わせる
和田)普通、菅さんや加藤長官とか、“オフレコ懇”というのをやるのです。記者さんと。そこから漏れ伝わってくるのです。でも小池さんはやらないのです。だから本音って、知っている人は誰もいないのではないかと思っていて。
飯田)周りの秘書さんとかでもなかなか。
和田)なかなかだと思いますね。本当に小池さんの頭の中だけで。その顕著な例で……希望の党ができたときがあったじゃないですか。ずっと若狭勝さんと細野豪志さんがずっと準備していて、2人に黙って希望の党を立ち上げてしまったのです。2人も当日の朝知ったというくらいですから、相談せずにやる方なのではないかと思ってみています。
飯田)オリンピック絡みに関しても突如ということがあり得るでしょうか。
和田)タイミングだと思いますね。都議選前にバン!と言って「小池さんすごいな」ってなるようなのを狙っている気がします。
飯田)それこそ、今回の発言って、アドバルーンをあげるにしても評判が悪いような気がするのですが。悪名も無名に勝る感じですか。
和田)それでいいと思います。これで議論が沸き起こればいいのではないでしょうか。
(ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」4月29日放送分より)
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[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)