土地利用規制法案~その「争点」と罰則規定の「必要性」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。6月4日、参議院で審議入りした土地利用規制法案について解説した。
土地利用規制法案~参議院で審議入り
安全保障上の重要施設周辺や国境離島の土地利用を国が調査・規制する土地利用規制法案が6月4日、参議院で審議入りした。領土問題を担当する小此木国家公安委員長は「安全保障の確保のための規制が必要だ」とした上で、土地の所有者や関係者への調査は最小限度とし、国民の権利や自由が不当に侵害されることはないと説明している。
飯田)今国会は16日までとなっていますし、延長はないのではないかと言われていて、日程的に押し迫って来ています。
須田)加えて、一部野党は対決法案的に位置づけていますので、会期末に向けて、与野党の対立をクローズアップするためにこの法案が使われるのかなと思います。
飯田)対決法案として。
須田)既に事実上の都議会議員選挙が始まっていますので、野党共闘の枠組みのなかでこの法案に臨んでいるのでしょう。特に立憲民主党と共産党が反対に回っているものですから、選挙を意識した動きになって来たなという感じがします。
「立法事実がない」と主張する共産党
須田)共産党が問題視しているのは、「そもそも立法事実がないのではないか」というところです。立法事実とは何かと言うと、これは新しい法律ですから、法律を制定するに当たって問題点があり、その問題を解決するための法案と考えるならば、その問題点とは一体何なのか、これが立法事実と言われているものです。
飯田)立法事実。
須田)各自治体や地方から国に対して、外資の土地利用や買収が問題になっているのは、ほとんどが水源の売買など、自然環境に類するものなのです。ですから今回ポイントになっている、「自衛隊基地や重要施設周辺の土地利用の規制に関しては、そもそも問題はないだろう」というのが共産党側の意見です。しかも、小此木国家公安委員長も「それについてはありません」と言ってしまったために、揉めているのです。「自治体からの相談事などはないです」と言ってしまった。
公然と議論しにくい問題~佐世保の米軍基地付近の小島の例
須田)ただ、この手のものは、国会のなかで公然と「こういう事実があって、こういう問題が起こっています」とはなかなか言いにくい話です。仮に自治体からのアプローチが国にあったとしても、水面下での話ですから、表立ってということにはならない。
飯田)なるほど。
須田)では、なぜこんなことを言っているかというと、実は過去にいくつか例があるのです。例えば、佐世保に米軍基地があって、弾薬庫があります。基地の弾薬庫の間近なところに小島がありまして、そこは民有地なのです。所有しているのは会社なのですが、経営状況が苦しくなり、売却しなければならないといったときに、利用価値がないものだから、なかなか買い手がなかった。そのなかで中国資本が手を挙げたのです。中国資本の手に渡ってしまうと、弾薬庫からの弾薬の出入りを中国側にウォッチされてしまう。これは重要な軍事情報になるので、その民間会社は売却していないのです。
飯田)そこで踏みとどまったわけですか。
須田)踏みとどまっているのです。そういう話が公式ベースで出て来るのかどうか。しかも、その土地に対して、国も買い上げるような予算がないものだから、「どうしたものか」というところが進んで来た経緯があるのです。
飯田)それで内々に穏便に済ませて、というケースだってあるかも知れないですよね、そう考えると。
須田)だから何も問題が発生していないというわけではない。表沙汰になっていないだけです。
飯田)表沙汰にすることで、別の情報が出てしまうこともありますからね。そうすると、「ないではないか」と言うのは、「建前としてはそうかも知れないけれども」というところが。
須田)「実態はどうなの?」と。
飯田)逆手に取っているようなところがあると。
罰則規定を入れることで抑止力を上げる効果がある
飯田)国として所有者のチェックなどが、いままでは個人情報の壁等があって、政府の職員が行っても「見せられません」と言われてしまうことが多いという現場の意見もあります。
須田)今回は罰則規定が入って来ますから、そういう点では、かなりの強制力を持つことになります。ただ、罰則規定を盛り込むべきなのかどうかというところも、国会審議の焦点にはなっているのですが。
飯田)この法律があることによって、取引そのものを止めさせる抑止効果を期待するような動きもありますが。
須田)罰則規定がないと抑止効果はなくなってしまいますからね。実際に罰則を加えるということよりも、規定を設けることによって、抑止力を上げて行くというところが重要になるのだと思います。
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