2冠達成・大橋悠依を陰で励まし、刺激した2人の先輩選手

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、東京五輪の競泳で2冠達成の快挙を果たした大橋悠依選手にまつわるエピソードを取り上げる。

【東京五輪2020競泳】2個の金メダルを手に笑顔の大橋悠依=2021年8月1日、東京アクアティクスセンター 写真提供:産経新聞社

「正直実感がなくて、本当に自分がやったことなのかなという感じ。史上初の実感がないのでびっくりしてます」

~『スポニチアネックス』2021年7月28日配信記事 より(大橋悠依のコメント)

8月1日、東京五輪の競泳は全日程を終了しました。日本勢が獲得したメダル数は3個でしたが、うち金メダルを2個も獲得。オリンピック前半戦を盛り上げたのが、女子400メートル個人メドレー、200メートル個人メドレーで2冠達成を果たした大橋悠依です。

他競技を含めても、日本の女子選手が夏季五輪で1大会2個の金メダルを手にしたのは史上初の偉業でした。

「女子で2冠というのは初めてなのでうれしい。勝っても負けても何も後悔ないと言えるように最後泳ごうと思って、それが良かったかなと思う。本当にまだ夢みたいで実感はないが、この大舞台ですごくいい自分の泳ぎができたというのは自信になる。いろんな人にたくさん迷惑かけてきたと思うが、少しは返せたかなと思う」

~『読売新聞オンライン』2021年7月28日配信記事 より(大橋悠依のコメント)

「たくさん迷惑かけて来た」という反省の言葉とともに、平井コーチやチームメイトのおかげで獲れたメダル、と感謝の言葉も忘れない大橋。そういった周囲のサポートを力に変えることができるのも、また1つの才能です。また、そういう選手は周囲がサポートしたくなったり、アドバイスを送りたくなるもの。これは、頂点を極めるアスリートたちに共通する能力です。

そのサポートしてくれた1人が、同じ個人メドレーの3学年上の先輩で、リオ五輪代表の清水咲子です。大橋は「サッコさん」と呼んで慕っており、平井コーチの下でともに練習して来た仲間でもあります。大橋は、清水についてこう語っています。

「誰かの心が折れそうな時は、一番に声を掛けてくれる人です。私も何度も助けられました。400メートル個人メドレーは本当に過酷な種目ですが、年上なのに練習で頑張っている姿を近くで見てきました。サッコさんがいなければ、この種目をやめていた。そう思うぐらい、大きな存在です」

~『読売新聞オンライン』2021年7月19日配信記事 より(大橋のコメント)

清水も今回の東京大会を目指していましたが、日本選手権では代表圏内の2位にわずか0秒21届かず選考漏れ。普通なら、とても他の選手を応援するどころではない心境だったでしょう。ところが清水はこの日、大橋を応援するためのうちわをつくってくれたそうです。

『ともに東京五輪を目指していた清水さんは、同選手権で代表を逃した日、深夜2時までかけて仲間の応援うちわを作製』

~『日刊スポーツ』2021年7月29日配信記事 より

まさに先輩の後押しとともにつかんだ金メダルだったのです。

同様に「応援」という意味で力になったのは、高校時代の仲間たちの存在です。

『母校・草津東高(滋賀県)体育科の恩師や同級生ら40人は開幕前の7月、一人一人の応援の声を吹き込んだ動画を大橋に送った。約10分間のエールは、一貫して温かなものだった。

動画作成を呼びかけた平井優希さん(25)は、水泳部で3年間、大橋と一緒だった。休み時間、男性アイドルグループについて語り合ったり、音楽に合わせて踊ったり。普段は普通の女の子だった。ただ、競泳選手として活躍の場を世界へ広げていく姿に、同級生たちは期待を込めてあだ名をつけた。「ジャパン」。いずれ、日本を代表する選手になると見込んだからだ』

~『産経新聞』7月28日配信記事 より

高校時代の仲間たちが見込んだ通り、「ジャパン」を代表するアスリートとして自国開催のオリンピックのヒロインになった大橋。その胆力にも改めて驚かされます。

また、大橋がレース前、気持ちを高めるための「勝負曲」として聴いていた曲があるそうです。

『大橋が試合前、気持ちを高めるために聴いているのが「PAiNT it BLACK」。

大橋は18年10月に萩野公介(26)に勧められてBiSHの歌を聴き始め「オタク」を自称するほどのファンになった』

~『スポニチアネックス』2021年7月26日配信記事 より

同じメドレーリレーの選手として、また、同じ平井コーチの門下生として、ともに切磋琢磨して来た間柄です。大橋は、かつてこんな抱負を語っていました。

『リオ五輪では大学の先輩でもある萩野公介選手が400m個人メドレーで優勝して、日本人選手の金メダル第1号になりました。東京五輪では私も同じように、競泳でよい流れをつくって、日本チーム全体にいい結果をもたらすような勢いをつけられたらと思っています』

~『Number 940号』(2017年11月22日発売号) より

まさにこの言葉通り、大橋の2冠達成は他競技の選手たちにも大きな刺激となり、日本選手のメダルラッシュが続いている状況です。

そして、互いに刺激し合う存在は、他競技にもいます。陸上短距離で東京大会の代表入りを果たした桐生祥秀は、同じ滋賀県彦根市の出身で、東洋大学でも同期の間柄。大橋は日本人初の100メートル9秒台をマークした同期生の存在に刺激され、より高みを目指して来たのです。

大橋選手が日本勢にもたらしたパワーは、オリンピック後半戦に出場する選手たちにも届いているはず。4×100メートルリレーに出場、メダルを狙う桐生選手にも“大橋効果”を期待しましょう。


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