-新行市佳のパラスポヒーロー列伝-
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます
6月20日、マスコミに向けた選手村内覧会の取材に行ってまいりました。
選手村は晴海にあり、勝どき駅から歩いて向かいました。朝10時半くらいに集合して、終わったのが夕方6時過ぎだったので、1日がかりの取材でした。
選手村は、約44ヘクタール(東京ドーム約9個分)の敷地に「居住ゾーン」と「運営ゾーン」、「ビレッジプラザ」の3つのエリアがあり、最大1万8000人の選手や関係者が宿泊できます。
【選手の生活を支えるビレッジプラザ】
入ってすぐに、木のいい香りにフワッと包まれました。ビレッジプラザは全国の自治体から借り受けた、約4万本の木材を使っています。木材をよく見ると、「秋田県」「高知県大豊町」など、どこの木材が使われているかが書かれています。
このビレッジプラザには、日用品が買える雑貨店、ヘアサロン、日本文化コーナー、郵便局、銀行、ATM、フォトスタジオ、インターネットラウンジ&カフェ、ドライクリーニングなどがあり、パラリンピックの期間中は、車いすや義足などを修理してくれるサービスセンターもオープンするそうです。
ヤマトホールディングス株式会社・クーリエカウンターの担当者の方にお話を伺いました。ここでは、アスリートや選手団が日本国内・国外に送る荷物の受付をします。
全国の小中学生を対象に、東京大会に出場するアスリートに向けた応援メッセージを募集して、約14万作品のなかから選ばれたメッセージが日本語と英語で壁紙に印刷されていました(このメッセージが印刷された特別デザインのトラックは、東京都内でも走っています)。
実際に大会期間中カウンターに立つ方は、「小中学生の皆さんに書いていただいたメッセージを、アスリートの方に見ていただけるのが嬉しいです。そこに立ち会えることは、すごく光栄なことだと思っています。たくさんの方に来ていただけるように、一生懸命接客をしたいです」と、意気込みを語りました。
日本語と英語で接客を行うそうですが、その他の言語については翻訳機を使って対応するとのことでした。
【居住ゾーン】
選手が生活する居住棟(14階~18階)が、21棟ズラリと並んでいます。居住棟以外にもダイニングホール、複合施設、発熱外来などのさまざまな施設がありました。
【ダイニングホール】
「ハラール」「日本食」「グルテンフリー」「ベジタリアン」「ピザ・パスタ」「ワールド」など、さまざまなカテゴリーの料理のお店が1列に並んでいて、フードコートに形態が似ている印象でした。
約700種メニューがあり、カウンターのところには栄養成分の表示もされています。アスリートは大会期間中、主にこのメインダイニングホールで食事をして、コンディションを整えることになります。
約3000席で、本来は1つのテーブルに6席設ける予定でしたが、4席に減らしてアクリル板を設置。換気は1時間に3回~4回ほど行われるそうです。また、料理は調理スタッフがサーブしたものを取って行く形になります。
【複合施設】
総合診療所、ドーピングの検査施設、日本の食文化を発信するカジュアルダイニング、レクリエーションエリア、フィットネスセンターが入っている施設です。
フィットネスセンターは、ロンドン1400平方メートル、リオ1900平方メートルだったのに対し、ここは3000平方メートル。近年の選手村と比較すると、広くスペースを取っています。
特に、コンディショニングエリアをIOCの要望で拡充しました。
アスリートの皆さんは選手村に入る前に身体を仕上げて来るので、筋トレよりもヨガマットやバランスボールを使うような、コンディションを整えるトレーニングに重点を置くのだそうです。
バイクとバイクの間にはアクリル板も設置されています。また、柔道やテコンドーなど、減量が必要なアスリート用にサウナもありました。
【発熱外来】
選手は毎日唾液での検査を行うのですが、そこで陽性が出た場合は発熱外来を受診します。
診療室で鼻から検体を採取し、結果が出るまでは約3時間。陽性結果が出て、軽傷だとホテルへ、重症だと病院へ輸送されます。
検査結果判明までの待機場所として、隔離スペースもありました。診察室には陰圧装置があり、真ん中が区切られています。
アクリル板に穴が開いており、医師がそこから手を伸ばして検体を採取します。
【居住棟】
選手が生活する居住棟の部屋からの眺めは見事なオーシャンビューで、潮風が気持ちよかったです。
いくつか部屋を見せてもらったのですが、部屋によってはベランダからレインボーブリッジや、お台場フジテレビのあの球体が見えます。
全てのベッドルームに窓があるので、2方向換気ができるようになっており、寝具のベッドフレームは100%リサイクル可能な段ボール製です。
クローゼットは、車いすに座った状態でも洋服をかけられる高さに設定しており、廊下は車いす同士がすれ違えるように幅を広くしています。
そして、ここまで紹介した各施設の混雑状況がわかるビジョンが1階にあります。
「ダイニングホール」「複合施設の各フロア」「ビレッジプラザ」がどれくらい混んでいるかが表示されているので、混雑を避けられる仕組みです(※ダイニングホールの入り口などにも確認できるビジョンがあります)。
また、選手村内の移動手段として、村内巡回バス(電気自動車)が運用されます。
選手村内の主要な施設周辺に9ヵ所のバス停を設けて、自動運転で5分~20分間隔で24時間運行。オペレーターと呼ばれる人が、トラブル対応やドアの開閉などを行います。
組織委員会の橋本聖子会長は、「アスリートで7回、団長等で4回、全部で11回、選手村に長く滞在させていただいた経験がありますけれども……間違いなくこの東京大会の選手村が、私のなかではいちばんです。過去のオリンピックには申し訳ありませんけれども、過去最高の選手村だと、私は経験から思っているところです」と発言しました。
選手村は、7月13日に開村を迎えます。
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