-新行市佳のパラスポヒーロー列伝-
ニッポン放送アナウンサー・新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見していきます
7月29日、車いすラグビーの合同リモート取材が開催され、日本代表の橋本勝也選手が本番に向けての現在の思いを明かしました。
「金メダル獲得に貢献することが第一であって、1分1秒でも長くコートに立てたらいいなと思います。ここまで家族をはじめ、職場の方々などたくさんの人に支えられて来たので、コートで恩返ししたいです」
これまで取材して来たなかで、特に印象に残っている橋本選手へのインタビューは、2019年10月に開催された車いすラグビーの国際大会「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」の準決勝後のものでした。
日本がオーストラリアと決勝進出を懸けた試合で、56-57の1点差で日本は敗れました。
「競った試合で、(コート上で戦ったメンバーは)体力的に辛かったと思うんですよ。自分が少しでもカバーできていれば、勝てた可能性もあったんですよ」
試合後、ベンチからチームメイトを鼓舞し続けた橋本勝也選手は、堪え切れず涙を流しながら取材陣に話しました。練習で辛いと感じたとき、この試合で経験した悔しさが原動力になっていると言います。
「いままでは僕を除いて、ハイポインター3人でローテーションさせることが多かったのですけれど、東京パラリンピックでは(自分も含めて)4人でローテーションして、2人体力を温存させて疲れたら交代し、相手チームにとって嫌な回し方をしたいです」
今年(2021年)の3月に高校を卒業した橋本選手は、4月から地元・福島県の三春町役場に勤めています。
「アスリートとして活動するならアスリート雇用もいいかなと考えましたが、三春町役場に就職した方が仕事を経験できるし、地元の皆さんとコミュニケーションをとることができるということで……いままでの恩返しをする意味では最高の環境だと思い、三春町役場に就職しました。乗松聖矢選手や池透暢選手も地方で活動していますが、世界で活躍できているので、努力次第ではできないことはないかなと。いろいろな面で成長するには、地元で就職しながらアスリートとして活動することかなと思っています」
主な業務は三春交流館での窓口業務や貸館業務などで、フルタイムで勤務。週2日、仕事終わりに練習し、月に一度のチーム練習と代表合宿など、仕事と競技の両立を図っています。
橋本勝也選手には後悔していることがありました。それは、2018年の世界選手権で日本代表が金メダルに輝いた瞬間。「次はお前の番だぞ」と島川慎一選手に言われたとき、「はい、頑張ります!(笑)」と、その言葉の重みを感じきれずに軽く返事をしてしまったことです。東京パラリンピックは、自分がチームを支える番。
「期待を裏切りたくないですし、代表のなかでも争って合宿をしているので。いままでは4番手というか、ベンチのなかでも補欠のようでしたけれど、東京パラリンピックでは準レギュラーでもいいから、コートに立てるように頑張りたいなと思います」
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