ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。横浜市の山中竹春市長によるIR誘致の撤回の宣言について解説した。
山中竹春横浜市長がIR誘致の撤回を宣言
横浜市の山中竹春市長は9月10日、就任後初となる市議会の本会議に出席し、所信表明演説で「IR誘致の撤回を宣言する」と正式に表明した。予定地の山下ふ頭については、再開発に向けた検討を進めるとしている。
新行)カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致反対を掲げて当選した、横浜市の山中竹春市長ですけれども、誘致撤回を宣言しました。横浜市としても大きな方向転換になるということですね。
山中市長が横浜市政を引っ張って行く求心力を維持できるか
須田)公約のトップに位置していたのが、IRからの撤退ということですので、当初の予定通りの行動だと思います。しかし、山中市長がこの方針を貫き通すことができるのかどうか。今後の状況を見守りたいと思います。なぜ、「貫き通せるかどうか疑問なのか」というと、横浜市政を引っ張って行くだけの求心力が、今後も維持できるのかどうかというところがポイントとして出て来ています。
新行)市政を引っ張る求心力が。
須田)今回、自民党を中心とする政権与党サイドは、野党側に回っています。とは言え、これだけ大きな政令指定都市になると、与野党激突で市長選が行われても、議会はオール与党体制になって行くのです。与党体制でスムーズに議会運営をして行こうということになるので、本来であれば、そういう方向性で流れて行くことが予想されたのだけれど、どうもそうなりそうにない。今回、自民党サイドは元国家公安委員長で菅さんの側近と言われた小此木八郎さんを立てて戦い、約18万票の差をつけられて大敗しました。
山中市長は「データサイエンスの専門家」
須田)ただ、結果的には選挙が終わってしまえば、与党体制で回るのかと思ったのですが、どうやら自民党が「山中さんに協力しない」という方向に動きそうな気配が出て来たのです。山中さんに関しては、選挙戦のなかでも指摘されていたのですが、特に選挙が終わってから、さまざまなスキャンダルや問題点が浮き出て来たからです。
新行)スキャンダルが。
須田)その1つが、今回の争点はIR誘致だったのだけれども、有権者の投票行動は「市民に対してどのようなコロナ対策があるのか」というところがある意味で中心でした。そのなかで、立憲民主を中心に山中候補、現市長の山中さんは「コロナの専門家だ」と言い続けて来たのです。
新行)そうでした。
須田)「元横浜市立大学の医学部教授である」というところで、コロナ対策についても情報発信して来た。「コロナの専門家」ということで、「いまの横浜市にはこういう人が必要だね」という市民感情になって行ったのです。これは当選の1つの大きな要因になりました。ところがよく見てみると、実は山中市長は医学部の教授であっても、お医者さんではない。医師の免許を持っていない。感染症の専門家でもない、ということなのです。
新行)お医者さんでもなく、感染症の専門家でもない。
須田)「データ処理、データサイエンスの専門家」だったのです。つまり情報処理なのです。集まって来たデータを処理して分析するという専門家なのだけれども、医者でもなければ、感染症の専門家でもないと。「これは嘘をついていたのではないか」と。選挙戦において、虚偽の経歴を使うと公職選挙法違反になってしまいますから、そこまでには行かなくとも、ある種の虚偽の経歴を使っていたのではないかという疑惑が浮上して来た。
新行)なるほど。
須田)それから、これがいちばん問題なのだけれども、横浜市立大学に出入りする業者に対して、恫喝があったのではないかという疑惑が出て来ています。これについては、市民が刑事告発を行うという事態にまでなったのです。既に山中市長に対して、刑事告発が行われている。そういうスキャンダル満載な人だけに、自民党サイド、野党サイドも手ぐすねを引いて待っているという状況なのです。
IR誘致の撤回が貫徹できるのかどうか
須田)そういうところで、リーダーシップが発揮できるのかどうか、というところになって来ているのです。場合によっては、本当に「IR誘致の撤回が貫徹できるのかどうか」という問題も出て来ます。
新行)そうなると、今後の横浜の未来がどうなるのかというところですよね。
須田)今後、議会運営をするなかで、野党も含めて協力が得られるのかどうか、そこが1つ大きなポイントになると思います。立ち往生して、任期途中で退任せざるを得ないという状況になる可能性もあります。
今後のIR誘致~東京になる可能性も
新行)日本において、IRは今後どうなって行くのでしょうか?
須田)最大で3ヵ所選ばれる見通しです。先行している大阪はほぼ確実なのかなと思いますけれど、残り2ヵ所で候補地に手を挙げているのが和歌山県と長崎県です。横浜が撤退するとなると、もしかしたら東京が手を挙げる可能性もあります。
新行)そういう可能性もあるのですね。
須田)大阪は、ほぼ決まりなのでしょうけれど、それ以外の2ヵ所については、全部を埋める必要もないのです。大阪1ヵ所という可能性もあります。いずれにしても、アフターコロナのなかでIRがどのような位置付けになるのか、日本の国家戦略が問われることだと思います。
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