次期自民党総裁に望む「国防」への気概
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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月14日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。岸田前政調会長が自民党総裁選挙に向けて発表した「外交・安全保障政策」について解説した。
自民党総裁選挙に向け、岸田氏が「外交・安全保障政策」を発表
自民党の岸田文雄前政調会長は9月13日、17日告示、29日投開票の自民党総裁選挙に向けた公約の第3弾として、「外交・安全保障政策」を発表した。このなかで岸田氏は中国に対抗する姿勢を鮮明にし、人権問題を担当する総理補佐官の新設を表明した。
3人に共通する中国への厳しい姿勢 ~安倍政権の功績
新行)総裁選挙に向けて、立候補を表明している3人の方から外交安全保障政策について、さまざま出て来ています。どのようにご覧になっていますか?
奥山)外交安全保障について出ていますが、中国に対する厳しい姿勢が求められています。これは安倍さんが敷いた路線です。どの候補者も、中国に対しての牽制をある程度持たなくてはいけないという意味では、安倍さんの功績が大きいのかなというのが第一印象です。
新行)安倍さんの功績。
奥山)岸田さんは外交・安全保障政策を出して来ました。他に高市候補と河野候補の2人がいらっしゃいますけれども、2人に比べるとバックにいいブレーンが付いているのではないでしょうか。チームで動いているなという印象があります。
日本をしっかりと守るという気概が欲しい
奥山)誰でもいいというわけではないのですが、国防をしっかりやって、日本を守ってくれる気概があるのであれば、私自身は誰でもいいのかなと思います。
新行)日本を守ってくれるのであれば。
奥山)北朝鮮が巡航ミサイルを発射しましたが、北朝鮮はとても小さな国ではないですか。名目GDPで言うと、1兆8000億円程度で、鳥取県や高知県とほぼ同額に過ぎません。そんな国に日本は脅されているという状況です。それは何とかしていただきたいですね。
マーチン・ファン・クレフェルト氏の教え
奥山)2013年、マーチン・ファン・クレフェルトさんというイスラエルの学者が来日されて、国防について話をされました。この方は戦略論の世界では有名な方です。この先生が来日されて、日本で会議があるということで、私もたまたま呼ばれました。六本木ヒルズにあるホールでした。
新行)クレフェルト先生。
奥山)そのときのテーマは「国防をどうするか」ということだったのですけれども、参加していた学者のほとんどが日本の方でした。それとアメリカ人が2~3人くらい。国防について、「日本の安全保障を考えるにはどうしたらいいですか」と言ったら、「経済で周辺国と経済関係を結べば、ウィンウィンですよね」というような感じでした。「経済関係をつくっておけば、お互いに金持ち同士、喧嘩せずでいいではないですか。これで平和が保たれますよね」というように、和やかな感じで話が進んでいたのです。
新行)和やかに。
奥山)しかし、イスラエルは大変なところではないですか。周りはほぼ敵だらけという地域で、四六時中戦争をして、自国のなかにもパレスチナ問題を抱えている。クレフェルトさんも常に戦いを意識されている方なのです。周りの方が「経済でウィンウィンだ」などと言っていたところに、クレフェルトさんがどういう話をするのかなと思ってドキドキしていたのです。
国防は命と命の交換である ~国を守るには、命を懸けなくてはならない
奥山)彼は「日本の国防政策はいろいろあるけれども、安全保障がどういうことか、君たちは知っているのか」と会場に問いかけたのです。会場には300人くらいの方がいたのですが、全員サラリーマンの方だったので、クレフェルトさんの名前も知りません。
新行)聞かれている人は。
奥山)クレフェルトさんはそこで、「国防というのは命と命の交換だ」という話を突然始めたのですよ。「国防はとにかく相手に命を預けることで、国を守るということは、死ねるかどうかだ」と。英語で話していたのですが、「キル、キル、キル」と「キル」という言葉を連発していました。300人くらいいるサラリーマンは全員ドン引きでしたね。
新行)全員が。
奥山)会場では私が1人で笑っていたのですけれども、「国の安全を守る」ということを、改めて感じるところがあったのです。「安全を守るということは、リスクを取らなくてはいけないし、命を懸けなくてはいけない」ということを、クレフェルトさんに教えて貰ったなという感じがしました。
新行)国防とは何かというところ。
奥山)彼自身は情熱的に「安全保障は命を懸けて、相手を殺すくらいの気持ちを持ってやらなくてはいけない」ということを、激しく、冷水を浴びせるように言っていました。それは、日本人が忘れているところなのではないかなと思うのです。北朝鮮にミサイル実験を目の前でされても、「何もしなくていい」と流してしまっている部分があるのですけれども、それで本当にいいのかなと思うのです。
新行)危機感がないと。
奥山)もちろん、戦前の日本のように、メディアも含めてすべてが「戦争に向かって行け!」となることはよくないと思います。ただ、国防とか、国を守るということを考えたら、「私たちは本当にこれで国を守れるのか」とか、「体制を変えないといけないのではないか」など、そういう健全な議論が行われる体制をつくらなくてはならないと思います。今回の北朝鮮の事案もあり、このエピソードを思い出しました。国防や国の安全を守るということは、覚悟を持ってやらなくてはいけないのだなということを、改めて思い出した次第です。
新行)「国を守る」ということはどういうことなのか、真剣に考えなくてはいけませんね。
高市氏に求められること
新行)各候補者の方々の政策を見ますと、グレーゾーン事態にどう対処して行くのかという部分や、敵基地攻撃能力についてもいろいろ書かれていますが、その部分はどのようにご覧になっていますか?
奥山)河野さんと岸田さんは、普通にそつがないなという感じです。高市さんが少し抜けている感じで、「やって行く」と気概は見せていますが、高市さん自身の思想を実現できるだけの仲間がいるのかというところが、気になるところです。岸田さんと河野さんは、ある程度の党内の基盤があると思います。高市さんは戦う姿勢を見せているけれど、それを組織するための人脈が構築できるのか、というところが問われているのではないでしょうか。
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