ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。9月17日に告示される自民党総裁選について解説した。
自民党総裁選、立候補表明の3人が支持拡大を呼び掛ける
9月17日に告示、29日に投開票となる自民党総裁選挙。立候補を表明している岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務大臣、河野太郎規制改革担当大臣の3人は、テレビ番組やオンライン会合に積極的に参加。自らの政策や考え方をアピールし、支持の拡大を呼び掛けている。
推薦人20人が集まらず、出馬を見送る方向の石破氏
新行)週末もさまざまなメディアで発信されているという印象でした。石破元幹事長の動きもありますけれど、候補者はこれで出揃ったという感じなのですか?
須田)石破さんはまだ態度を鮮明にしていませんけれど、出られません。「出ない」のではなく、出ることができないのです。推薦人20人のハードルは高いのです。「20人集まった」と、本人も自信を見せていますけれど、集まっていません。
新行)そうなのですか?
須田)もちろん自分の派閥では足りないので、二階派に協力してもらおうとしているのですが、その二階派との間で微妙な感じになっています。「協力してもらえるかどうか」が見えて来ないので、出ることができないということです。
石破元幹事長は出馬を見送るでしょう。石破派閥は17人いるのですが、17人のうち4人は既に他の候補の支援に回っています。残り13人が固まって行動できるのかどうかというところがポイントなのですが、推薦人の20人に足りない人はどうするのか。二階派に協力してもらうという形になっているのですが、問題なのは、協力してもらえるかどうかではなくて、「石破派の残り13人は本当にいるのか」ということです。
新行)17人から他の候補の支援に回った4人を除く13人ですね。
須田)どうも13人のうち何人かは、他の候補の支持に回っているようなのです。そうなると、推薦人20人の確保が難しいということで、出馬は見送り。そして、石破派のなかから支援に回っているのは河野さんなのですよ。
新行)そのようですね。
須田)改革派路線を全面に打ち立てる河野さんの支援に回っていますから、石破さんの方から河野さんの支援に回る可能性も高いのではないかと思います。
3人の候補者のそれぞれのポイント~岸田氏の掲げる「令和版所得倍増計画」の具体策
新行)3人の立候補者の政策が出て来ていますが、須田さんが見ていて気になるところ、ポイントになるところはどこですか?
須田)国民が何に関心を持っているのかと言えば、もちろんコロナ対策です。それに加えて、コロナ後の日本経済をどう立て直すのかということです。コロナショックに見舞われる前から、日本経済は厳しい状況にありました。そこにコロナショックが襲ったわけですから、どう立て直すのか。その経済政策がポイントになると思います。
新行)経済対策が。
須田)そのなかで、岸田さんが「令和版所得倍増計画」というものを打ち立てたのですが、「本当にできるのですか」と疑問に思うのです。だから具体策を示して欲しい。キャッチフレーズは素晴らしいものではあるのだけれども、昭和の時代の所得倍増計画というのは、岸田さんが所属する宏池会、ここから出て来た池田勇人さんという総理大臣が進めていた政策です。
新行)昭和35年ですね。
須田)当時の状況は人口も右肩上がりに伸びていたし、何よりも昭和の高度経済成長期に入る直前だったのです。そういう動きがありましたから、いとも簡単に所得倍増が実現できたのだけれども、いまは人口が減少しています。プラス成長は難しいというなかで、これをどうやって実現して行くのか。やって欲しいけれど、具体策について、今後どういう形で示されるのかというところがポイントなのだと思います。
何をどう改めれば「物価上昇率2%」が実現するのか~高市氏
須田)高市さんは、「物価上昇率2%を目指して行く」と言われています。そのためには財政出動と金融緩和を進める。ある意味でアベノミクスの継承という形なのですけれども、一方で、改革をどう進めて行くのか、何をどう改めて行くのか。いまどういう問題を企業が、あるいは政府が抱えていて、どこを改革すれば物価上昇率2%が実現できるのかという、具体的なところが見えていません。
脱炭素社会のなかで日本はどうやってイノベーションを目指すのか~河野氏
須田)河野さんについては、脱炭素社会というなかで、どうやって日本は技術革新、イノベーションを目指して行くのか。脱炭素、「CO2の排出量を抑制して行きます」というところは、ネガティブなイメージがあるのですが、「技術革新で日本がリーダー役を務めて行きましょう」というところで成長戦略を求めて行く。加えてデジタル化の推進ということなのですけれども、具体的にはどういう形で技術革新、技術改革を進めるのかというところが、ポイントになると思います。
中国と対峙するにはどうすればいいのか~具体策を出して欲しい
新行)メールでも意見をいただいています。千葉市の“キヨ”さんから。「今度の総理大臣には、新型コロナ対策はもちろんなのですが、しっかりと日本を守れる人になって欲しい。衆院選で自民党がどうなるかはわかりませんが、自民党総裁選の論戦はその辺りにも注目していただきたいです」ということです。日本を守る、そして国家観という部分も注目になると思いますが。
須田)国際状況がこれだけ変わって来ているなかで、日本の安全保障問題も大きく変化しているわけですが、もっと具体的に踏み込んで、「どこがリスクなのか、どこが問題点なのか」と言うと、中国なのです。中国とどう向き合って行くのか。もちろん、純粋に軍事の部分もあるし、サイバーの部分もあるでしょう。それをどのように構築して行くのか、そのためには現行の憲法で十分なのか、そうではないのか。「中国に対峙するには、何をどうしなければならないのか」というところにもっと踏み込んで、具体策を示してもらいたいと思います。
候補者が一堂に会して政策論争をして欲しい
須田)岸田さんにしても河野さんにしても、憲法改正については自民党の方向性で行く方針ですから、それはやりますよと。「何をどういう形でやって行くのか、9条はどうするのか」というところが、まだ不明確だと思います。おそらく総裁候補3人による論戦のなかで、具体的な話が語られることになるでしょうけれども、その辺りに注目したいと思います。
新行)これから、さまざまなメディアに出演されることもあると思うのですけれど、どういうことを打ち出して来るのかに注目するべきだということですね。
須田)3人で政策論争をやって欲しいですね。バラバラにやるのではなく、何回か一堂に会して、国民に見える形で。もちろん党員・党友以外に投票権はないのだけれども、結果的に日本国の総理を選ぶわけですから、その結果が次の総選挙にも影響します。その辺りをきちんと見せてもらいたいです。
若手議員による「党風一新の会」
新行)自民党では「党風一新の会」が発足しました。次期衆院選を前に、自民党の当選1回~3回の有志の衆議院議員が結成した議員グループとなります。衆議院の275人のうち、約45%にあたる126人が当選3回以下ということで、いわゆる若手議員の方々がどうなって行くかというのも気になるところですね。
須田)なぜ若手議員がこうやって独自の動きをし始めたのかというと、結論から言ってしまえば選挙に弱いからです。安倍政権下で、安倍さんのおかげで当選して来た。労せずして当選して来た人たちが多いのが、この1回生、2回生、3回生に固まっているのです。
新行)1回生~3回生に。
須田)そうすると自民党の、あるいは内閣の支持率が下がって来ると、「自分は当選できるのか」という焦りが生まれ、こういう動きを呼んでいるのです。やはり選挙は自分の力で勝てないとダメなのです。「こんなことをやっていないで、選挙区を回りなさい」と言いたい。地道で日常的な選挙活動をせず、ただ党の看板、誰が総裁になるかで自分の当落が決まってしまう、こんな情けない話はありません。
皇位継承について
新行)そして皇位継承についても、さまざまなことが言われています。
須田)先ほど新行さんが言われた国家観の問題です。「皇室をどのように位置付けて、日本社会のなかでどう捉われて行くのか」というところが出て来るのだと思います。国家観をきちんと見た上で、男系なのか女系なのか、女性宮家を創設するのかどうかを考える。例えば、「いまは男女同権なのだから」などというあやふやな考え方で、女系天皇や女性宮家創設というところに走るのではなく、日本の国柄というところを起点に、この問題をどう捉えて行くのかを考えないと、浅い議論になってしまいます。
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