石油価格の混乱は当分続く ~その背景にあるもの
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月11日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。UAE当局者の相反する発言によって混乱する原油市場について解説した。
原油増産をめぐってUAE当局者が相反する発言
原油増産をめぐるアラブ首長国連邦(UAE)当局者からの相反する発言によって、原油市場が混乱している。UAEのアルオタイバ駐米大使は3月9日、原油増産をUAEは支持しているとして、石油輸出国機構(OPEC)に検討するよう働きかけると述べた。これを受けて9日の原油先物相場が急落した。北海ブレント先物は13%安の1バレルあたり111ドル14セントとなり、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック発生初期以来、最大の下げとなった。しかしその後、UAEのマズルーイ・エネルギー相が、OPEC加盟国と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の合意や現行の生産調整の仕組みにコミットしていると表明。この発言などを背景に、10日の原油先物は116ドルを超えた水準に回復した。
飯田)発言1つで相場がかなり揺れているということです。
宮家)かなり混乱していますね。オタイバ駐米大使の発言は、おそらくアメリカとの関係を意識した政治的な発言でしょうね。しかし、マーケット側はそうもいかないので、早速エネルギー大臣がそれを打ち消したということですよね。
石油価格の混乱は当分続く
宮家)私はもともと中東専門ですが、決して原油マーケットの専門家ではないので、それを差し引いて聞いていただきたいのですが、要するに石油というのは売り物です。
飯田)商品ですよね。
宮家)埋蔵量の多い国もあれば、あまりない国もある。商店で言えば、在庫が多いか少ないかということです。でも、在庫がたくさんある商店だって、商品の値段が高ければ高いほどいいというものではないのですよ。
飯田)高ければ高いほどいいわけではない。
宮家)石油の場合は、値段が高すぎると「今度は代替エネルギーに変えるか」と、「もう石油はやめよう」と言われてしまいます。、在庫が多い商店は、値段がほどほどであっても、在庫が多いので売上を最大化することができる。ところが在庫が少ない商店では、値段はできるだけ高い方がいいのですよ。どうせ在庫はなくなってしまうのだから。
飯田)そうですね。
宮家)叩き売るわけにはいかないし、いちばん高いときに売りたい。これと同じように、OPECのなかでも埋蔵量が多い国と少ない国では対応が微妙に違います。さらにOPECの外には、ロシアやベネズエラなどの変わった国もたくさんあるので、みんなの意見が一致することはなかなかありません。
飯田)一致することは。
宮家)最近、原油価格が高いと大騒ぎしていますが、実はいままでがとても安かったのです。最近ある程度値段は上がってきたのですが、あまり早く増産すると再び値段が下がってしまうので、産油国はなかなか増産したくなかったのです。ところが、ここでウクライナ侵攻が起きてしまった。「これは大変だ」ということで、増産するよう消費国からの圧力が高まったのだけれど、原油生産はそんなに急に増やせるわけではない。いまこういうことを言うべきではないかも知れませんが、この種の混乱は当分続くだろうと思います。政治的な思惑と経済的な合理性、2つの狭間ということですね。
飯田)いま足元で、指標の米国産標準油種(WTI)は1バレルあたり105ドル83セント、イギリスの指標北海ブレントは109ドル15セント。言われた水準よりはやや安くなっていますが。
宮家)でもまだまだ100ドルを超えていますから、高いですよ。
飯田)80ドルくらいでも「高くなって来たなあ」という話がありました。
宮家)70~80ドルあたりがいいところではないでしょうか。
飯田)UAEのような豊富な国は、その水準でも構わないくらいですか?
宮家)そうですね。UAEなどは人口も少ないですし。一方、サウジアラビアはもっと厳しいかもしれません、最近は人口が増えていますからね。必ずしも安ければいいというわけではない。このように各国で事情は微妙に異なるのですよ。
飯田)考えてみれば、パンデミック初期は先物の値段がマイナスになっていましたね。
宮家)そうですね。あれは象徴的ですが、その経験があるからこそ、なかなか簡単には増産したくないのでしょうね。
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