英ジョンソン首相がウクライナを電撃訪問した「もう1つの理由」

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地政学・戦略学者の奥山真司が4月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアのプーチン大統領とオーストリアのネハンマー首相がモスクワで会談したことを受け、ウクライナ情勢の今後について解説した。

英ジョンソン首相がウクライナを電撃訪問した「もう1つの理由」

キーウ(キエフ)中心部を並んで歩くゼレンスキー大統領(右)とジョンソン英首相(ウクライナ・キーウ) AFP=時事 写真提供:時事通信

ロシアのプーチン大統領とオーストリアのネハンマー首相がモスクワで会談

日本時間4月11日夜、ロシアのプーチン大統領とオーストリアのネハンマー首相の会談がモスクワで行われた。ロイター通信によると、ネハンマー首相は声明で、停戦や人道状況改善の糸口を探ろうとしたが「友好的な会談ではなかった」と表明した。ロシアによるウクライナ侵略後、ヨーロッパ連合(EU)加盟国の首脳がプーチン大統領と会談したのは初めて。

飯田)「戦争犯罪に関わった者は、責任を問われなければならない」とネハンマー氏はプーチン氏に伝えたということです。

ウクライナを電撃訪問した英ジョンソン首相のホワイト・プロパガンダ

奥山)強く出ましたね。先日は、イギリスのボリス・ジョンソン首相がウクライナを訪問したことが、非常にフォーカスされました。

飯田)そうですね。

奥山)ジョンソン首相は4月9日にウクライナの首都キーウを訪れ、街角に立つ男の人と握手したり、ゼレンスキー大統領と会話をしている映像が出ていました。ジョンソン首相は防弾チョッキも着ずにスーツで入って普通に街を歩くという、「ホワイト・プロパガンダ」と言うのでしょうか、うまくアピールしていました。

飯田)ホワイト・プロパガンダ。

奥山)「NATOの一国であるイギリスとウクライナはともにある」ということを見せつけたのです。とても戦略的なメッセージを出したという印象が強いですね。

ジョンソン首相がゼレンスキー大統領に会いに行ったもう1つの理由 ~チャップリンからチャーチルになったゼレンスキー大統領

奥山)いまゼレンスキー大統領は、西側ではヒーローになっているのです。「ゼレンスキー大統領は、チャーリー・チャップリンからチャーチルになった」といろいろな方が言っています。

飯田)チャップリンからチャーチルに。

奥山)そしてボリス・ジョンソンさんは、それをうまく使ったのだと思います。ゼレンスキーさんは短期間において、喜劇俳優だったものが、ロシアと戦うことでいきなり国家の英雄になり、国際的なヒーローになった。この3段階を経て、一気に名を馳せることになりました。

飯田)喜劇俳優から。

奥山)ボリス・ジョンソンさんは、保守系の新聞記者上がりの人で、ジャーナリストだったのです。彼は『チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力』という、チャーチルを絶賛した本を書いています。ジョンソンさんは「チャーチルになりたい」という意思が強くて、いままさに危機の時代に首相としての自分がいる。そして、国際的なチャーチルとなったゼレンスキーさんがいる。「ここは会いに行かなくてはいけない」ということだと思います。

飯田)チャーチルになっているゼレンスキー大統領に。

奥山)ゼレンスキー大統領は、イギリスに助けてもらわなければいけない立場なのですけれども、政治家としての役者はジョンソン首相より上になってしまっているという、逆転現象が起きているのです。

ジョンソン首相の国内での支持率も上がるか

飯田)ボリス・ジョンソン氏はコロナ禍に首相官邸でパーティーを開いたというような、スキャンダル報道がありました。

奥山)「パーティーゲート」などと言われました。

飯田)一時期は「夏までも危ういのではないか」という話もありました。

奥山)ここでアピールしたことで、少し人気も出てくるのではないでしょうか。実際、不人気の部分もイギリスでは根強くありますが、こういうパフォーマンスができるのは、政治家としての強みですね。

プーチン大統領が街に出て人々と話すなどということはできない ~ロシアに対するもう1つのアピール

飯田)一方で、ロシアに対してこの画がどう見えるのか。「プーチン大統領が街に出て、人々と話すなどということは絶対にできないだろう」ということで、いろいろなハレーションが起こるのではないかという視点もあります。

奥山)今回のリアクションとして、「それと比べてプーチン大統領はどうだ」ということになり、オープンで自由なところを見せつける、西側のいいパフォーマンスになったということです。背景には攻撃されて崩れたキーウの街があり、そこで明るく笑顔で握手をして、みんなと話す。

飯田)ジョンソン首相が。

奥山)チャーチルもみんなが避難している地下鉄のホームに行き、握手するというようなことをやっていました。チャーチルの行ったパフォーマンス面を相当意識しているのだなということが、ボリス・ジョンソン氏の動きから見えてきます。

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