チームの連敗止めた! 巨人・菅野“我慢”の復活勝利

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、5月12日のDeNA戦で1軍復帰を果たし、チームの連敗を止めた巨人・菅野智之投手にまつわるエピソードを紹介する。

チームの連敗止めた! 巨人・菅野“我慢”の復活勝利

【プロ野球DeNA対巨人】6回 DeNA・藤田一也を三振に打ち取った巨人・菅野智之=2022年5月12日 横浜スタジアム 写真提供:産経新聞社

『粘り強く投げたし、良かったと思います。(4回の)無死二塁、三塁を0点に抑えたというのが大きかったと思います』

~『日刊スポーツ』2022年5月12日配信記事 より(巨人・原辰徳監督 菅野についてのコメント)

5月12日、雨が降る横浜スタジアムで行われたDeNA戦。連敗を「5」で止めた巨人・原監督はそう言って、エース菅野を讃えました。

4月後半に6連勝するなど、一時は首位を独走していた巨人。ところが、GWに入ると暗転。阪神に3連敗、広島に1勝2敗、ヤクルトに3連敗と、まさかの1勝8敗で首位を陥落。さらに、10日には新潟でDeNAにも敗れ5連敗。移動日で試合がなかった11日、中日に勝率で抜かれて4位に転落してしまったのです。

失速の理由は、GW中、キャプテン・坂本勇人と、打撃好調の吉川尚輝が試合中に負傷。またエース・菅野も、4月29日の阪神戦で右ヒジに違和感を訴え、3回で降板し登録抹消。投打の柱が相次いで戦線離脱したのが大きく響きました。

このままだと、昨季(2021年)の終盤戦のようにズルズル連敗しかねないところでしたが、菅野が早期復帰し、中12日で登板。原監督にとっては「智之、頼む!」という思いだったでしょう。

しかし初回、巨人はランナーを2人出しながら先制できず、その裏、守備でミスが出ます。DeNA先頭・桑原将志の当たりはレフト方向へ。打ち取ったはずの打球が、遊撃・中山礼都が捕れず二塁打に。本来であれば左翼・ウォーカーが普通に捕れたはずの左飛でしたが、再三まずい守備を見せているウォーカーをカバーしようと、中山が深追いしたのが仇となりました。

その後、犠打と楠本泰史の二塁打で、アッと言う間に1点を先制された菅野。嫌な雰囲気が漂いましたが、ここでエースは踏ん張ります。四番・牧秀悟を中飛、五番・ソトを三振に仕留め、最少失点で切り抜けたのです。

この“我慢”のピッチングが3回に実を結びます。三番・ポランコと、四番・岡本和真が連続アーチをかけ、2-1と逆転。岡本のすくい上げるような12号ソロは、菅野を何とか援護しようという思いを感じる一発でした。

しかし4回、再び危機が訪れます。無死一塁の場面で、菅野はソトを右飛に打ち取ったはずが、右翼・ポランコが弾いてしまい二塁打に。無死二・三塁のピンチを招きます。ここでも菅野はじっと“我慢”。大和を三振、柴田竜拓を三飛に打ち取ると、嶺井博希を敬遠し、投手・大貫晋一を三振に仕留めてピンチを切り抜けます。

6回も先頭の牧に二塁打を許しますが、ソト・大和を連続三振。四球を挟んで、代打・藤田一也を空振り三振! その瞬間、グラブを叩き大きく叫んだ菅野は、6回5安打1失点、ちょうど100球でマウンドを降りました。

藤田から三振を奪ったシーンについて、菅野はこう語っています。

『1点もあげたくない場面。ゼロで行けば勝利に近づくと確信した』

~『毎日新聞』2022年5月12日配信記事 より

菅野の読みどおり、8回、巨人は中田翔の犠飛と、大城卓三のタイムリーで2点を追加。投げては今村信貴→デラロサ→大勢のリレーで逃げ切り、巨人が4-1で勝利。連敗を止め、再び3位に浮上しました。

これで菅野は今季4勝目。故障明けで、決して調子がいいとは言えないなか、再三のピンチを1失点でしのいだ粘りのピッチングが光りました。打線がなかなか点が取れないとき、味方が守備でミスをしたとき、そこでどれだけ“我慢”ができるかで、エースの真価が問われます。

試合後、菅野はこうコメントしました。

『マウンドでチームを鼓舞するような投球をできればいいなと思っていた』

~『毎日新聞』2022年5月12日配信記事 より

背中でチームを引っ張るのがエース。雨のなか奮闘する菅野の姿を見て、野手たちも感じるところがあったはずで、2回の連続アーチ、8回の貴重なダメ押し点はある意味、菅野が打たせたと言えるかも知れません。

昨季(2021年)は前半戦に、コンディション不良で4度の登録抹消を経験。出場するはずだった東京五輪も辞退することになった菅野。19試合で6勝7敗、防御率は3.19と不本意な1年に終わってしまいました。

今年こそはと、昨シーズン中に得た海外FA権はひとまず封印。V奪回のために巨人残留を決めた菅野が今季目標にしているのは「投球回数200イニング」と「最多勝・最優秀防御率」のタイトルです。

特に防御率は「相手にいかに点を与えないか」の証しとなる指標。ピッチャーが無失点で投げ続ける限り、チームが負けることはありません。防御率とはすなわち、その投手の「信頼感」を示す数字でもあります。菅野は防御率のタイトルを過去4度獲得していますが、5度目となると、稲尾和久と並び、プロ野球史上最多タイとなります。

昨年末、契約更改の席で、菅野はこう語りました。

『ストレートが走っていればある程度、抑えられる自信はある。球速も含めて、まだまだ伸びしろはある』

~『スポーツ報知』2021年12月17日配信記事 より

菅野はまだ32歳。12日の試合も、要所要所で三振を奪い、再三のピンチをしのいだあたりは“エースの意地”を感じましたし、台頭が著しい若手投手たちにも、まだまだ負けてはいられません。頼れる投手陣の柱が戻ってきた巨人がこれからどう巻き返していくのか、注目です。

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