中国・上海市のロックダウン トップの発言を撤回できない「権威国家のリスク」

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経済アナリストのジョセフ・クラフトが5月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・上海市のロックダウンについて解説した。

中国・上海市のロックダウン トップの発言を撤回できない「権威国家のリスク」

政協全国委、新年茶話会を開催(北京=新華社記者/鞠鵬)= 2020(令和2)年12月31日 新華社/共同通信イメージズ

中国、上海市のロックダウン ~オーストラリアの全人口よりも多い上海市の人口

新型コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウンが続く中国・上海市は5月16日、6月中に企業の生産活動と住民生活を全面的に正常化する方針を示した。上海では3月28日から封鎖が続いており、ようやく解除の見通しが示された。

飯田)当初「4日間」と言われていたものが、2ヵ月近く続いています。

クラフト)6月中だと、まだ1ヵ月以上もあるのですよね。上海の人口は約2600万人です。オーストラリアの人口よりも多いのですよ。

飯田)オーストラリア一国より。

クラフト)それを封鎖するわけですから、すごい国ですよね。

飯田)マンションの入り口に鉄条網を張って、出られなくするなどの対応も行っていますが、火事が起きたらどうするのでしょうか。

イデオロギー主体の国は、何をするか予想がつかない ~アジアの安全保障を不安定化しかねない中国

クラフト)先日、アメリカ国務省の幹部と話したのですけれども、彼らは安全保障の観点から中国のロックダウンに注目しているのですが、経済よりもイデオロギー、政治を優先しているわけです。

飯田)経済よりも。

クラフト)それは、いまのプーチン大統領と同じなのです。プーチン大統領も、戦争よりイデオロギー、経済よりもイデオロギーを優先している。イデオロギー主体の国というのは、今後、何をするか予想がつかないところがあります。今後のアジアの安全保障にとって、「イデオロギー主体のいまの中国政権は、安全保障を不安定化しかねない」として、アメリカ政府は危惧していると言っていました。

コロナ禍によりリスクが下がった中国の覇権争い ~同時に安全保障のリスクは上がった

クラフト)その一方で、イデオロギー主体の国は、経済発展がどうしても停滞してしまいます。経済とイデオロギーはなかなか両立しませんから、そういう意味では、2年くらい前まで、アメリカが脅威としていた中国の覇権争いについては少しリスクが下がった。

飯田)技術的な覇権の方ですね。

クラフト)そうです。経済での脅威が少し停滞したと同時に、リアルな安全保障のリスクは上がったというところで、少しアメリカの姿勢が変わってきていることが印象的ですね。

独裁者は発言を撤回できない ~権威国家のリスク

飯田)これまでであれば、経済的な合理性がないから戦争は起こらないだろうとか、経済的な合理性がないから私権の制限はしないと思われていましたが、権威主義国家は想像を軽々と踏み越えていきます。

クラフト)中国は去年(2021年)、共同富裕によってIT企業の締め付けを行う、あるいは塾を非営利化するという強権的な動きをしました。その続きで、市民をある意味の牢屋に入れてしまうような政策が、今回のロックダウンです。こういうイデオロギー主義は、まさしく何をしでかすかわからない。西側が持っている経済的な合理性は、1つの歯止めにもならない。

飯田)いままでであれば、経済的合理性のなかで予測が立ったわけですけれども、それが立たなくなってきている。そうすると、統治者の頭のなかを想像することが必要になるわけですか?

クラフト)しかもトップの一声で国が大きく、あるいは世界が大きく変わります。そして独裁者は、1回言ったものは撤回できない。今回のロックダウンがいかに失策であるのかという事実がわかりきっていても、撤退はできないのです。

飯田)ある時期は「ゼロコロナ政策が成功した」と宣言してしまいましたからね。

クラフト)ウクライナ侵攻で世界が批判しても、プーチン大統領はまっすぐ進んでいます。これだけWHOが批判しても、中国はゼロコロナ政策を変えません。これがいかに権威国家として危険なリスクであるかということを、日本もより注視しなくてはいけません。

マクドナルド撤退が「冷戦の終わりの終わり」

飯田)かつての冷戦時のように、トップの言動やイベントの際の並び順などで、何かを想像する必要が出てくるのですか?

クラフト)モスクワのマクドナルド撤退が、「冷戦の終わりの終わり」であり、冷戦の始まりということです

飯田)次の冷戦の。

クラフト)これも同じことです。中国、ロシアのイデオロギー主義は、冷戦に先祖返りしているということの象徴だと思います。

飯田)経済合理性、リアリズムで進んだ時代から、「言葉と感情の時代」になるわけですか?

クラフト)ロックダウンは、秋の共産党大会を睨んだ政治的な要因で動いています。個人的に期待したいのは、党大会が無事に終わり、習近平体制が確立されることです。そうなれば落ち着いて肩の力も抜け、ロックダウンも解除して経済を再開するのではないかと思います。

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