驚異の防御率 阪神・青柳晃洋の凄さを示す「もう1つの数字」

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、最下位脱出を図る阪神タイガースを引っ張るエース・青柳晃洋投手にまつわるエピソードを紹介する。

驚異の防御率 阪神・青柳晃洋の凄さを示す「もう1つの数字」

【プロ野球中日対阪神】阪神先発・青柳晃洋=2022年5月6日 バンテリンドームナゴヤ 写真提供:産経新聞社

昨季(2021年)最多勝&最高勝率の2冠に輝いた阪神・青柳晃洋が、5月14日のDeNA戦で今季5度目の先発マウンドへ。6回を投げて、毎回の8安打を許しながらも2失点。粘りの投球で、チームトップの4勝目を挙げました。

15日終了の時点で、チームの勝ち数が14勝の阪神。新型コロナ陽性で今季(2022年)は開幕から出遅れた青柳が、14勝のうち3分の1近い4勝を1人でマーク。その存在の大きさが改めてわかります。

青柳は14日の試合で規定投球回に達し、防御率1.09でリーグトップに躍り出ました。規定投球回はチームの消化試合数と同じですが、15日の時点で青柳の投球回は41回1/3。阪神の試合数は41試合なので、17日に阪神が試合を行うと再び規定回不足となり、青柳の名前はランキングから消えます。

とはいえ、次回登板で長いイニングを投げて好投すれば、またトップに復活。2位の同僚・西勇輝が2.11ですので、たとえ一時的に名前が消えたとしても、青柳が実質トップの状態が続きそうです。

そんな青柳ですが、4勝目を挙げた14日、試合後に残したコメントは反省も交えた内容でした。

『制球が良くない中で、自分のできることは全部やり切ろうと思っていた』

~『日刊スポーツ』2022年5月14日配信記事 より

「制球が良くない」という言葉とは裏腹に、この試合でDeNA打線に与えた四球はゼロ。それどころか、今季は5試合に投げて、許した四球はわずか5つだけなのです。これはセ・リーグで規定投球回に達した投手のなかでは最少の数字。青柳が抜群の制球力を持っている証しです。

いまや球界屈指のコントロールを誇る青柳ですが、入団当初は制球が乱れることも多く、キャッチャー・梅野隆太郎が、まるでサッカーのゴールキーパーのように横っ飛びでキャッチングする場面もしばしばありました。阪神OB・中西清起氏もこんな証言をしています。

『特筆すべきは抜群のコントロールだろう。数年前まで、調子が良くない日は制球も乱れて四死球から崩れるケースが多かった。だが、下半身で粘って投げられるようになって制球が安定し、逆球もほとんどない。この日の四球0が象徴するように、ピンチでもゾーン近辺で勝負でき、状態は良くなくても、ベンチも安心できる投球だったはずだ』

~『日刊スポーツ』2022年5月14日配信記事 より

同じく元阪神監督の岡田彰布氏も、かつての青柳の姿と比較しながら、こう語っています。

『青柳の課題はコントロールだった。崩れるのは四球絡みがほとんど。それでもパワー投球でねじ伏せてきたという印象が強い。もちろん今シーズンも同じ課題を背負うが、ここまでを見る限り、自滅することはないと判断できる』

~『週刊ベースボールONLINE』2022年3月25日配信記事 より

現在の青柳がいかに飛び抜けた制球力を持っているか、データで見てみましょう。「与四球率」という指標です。算出方法はまず、その投手が与えた四球の総数を投球回で割り、1イニング当たり平均何個の四球を許すかを求めます。その数字に9を掛けたのが「与四球率」です。

つまり、その投手が9イニング完投したとすると、1試合平均で何個四球を与えるか、を示す指標ですが、今季、青柳の与四球率は何と「1.08」と驚くほど低いのです。つまり青柳は、四球を許したとしても1試合せいぜい1個、ということです。

ちなみにこの「与四球率」が2.00を切ると、その投手は「抜群のコントロールを持っている」と言われます。参考までに、昨季(2021年)規定投球回に達し、かつ与四球率が2.00以内だった投手は、セ・リーグでは大野雄大(中日、1.63)と大瀬良大地(広島、1.90)の2人だけでした。パ・リーグも、加藤貴之(日本ハム、1.26)、田中将大(楽天、1.68)、山本由伸(オリックス、1.86)の3人だけ。顔ぶれを見ると「なるほど」と頷けます。

青柳は、入団1年目の与四球率が5.26でした。しかし、最多勝のタイトルを獲得した昨季は2.76と半減。今季はさらに減って1.08です。青柳がここ数年で、いかに制球力を磨いてきたかを物語っています。

では、なぜここまで制球力がよくなったのか。その要因の1つは、福原忍投手コーチとともに取り組んだ「脱力投法」です。

『青柳晃洋投手(28)が自主練習でブルペンに入り、“脱力投法”でオール直球30球を投げた。力を抜いた状態で体重移動や下半身の動きを確認するもので、福原投手コーチに勧められて3年前に始めた。シーズン中も取り組む練習で、「力を抜いて質のいい真っすぐを投げる練習をしてからコントロールが良くなった。リリースの感覚もそうですし、投球フォームを見直す一番の練習」と効果を明かした』

~『日刊スポーツ』2022年2月23日配信記事 より

さらに、最多勝を獲得した昨季も、シーズン後半は疲れからか思うように勝てない時期がありました。その理由を自己分析した青柳。出した結論は「疲労などで上体の抑えが利かず、体と手の距離が離れてしまうので、体が開いている状態になっていた」。

そこで昨年オフ、さらなる制球力向上を図るため、青柳はフォーム改造に着手しました。

『疲れてきたときに、同じ再現性(のフォーム)でできるように、どこをどう意識したら動かせるとか、大学からお世話になっているトレーナーさんと話しながら、トレーニングメニューを組んだりしてやっている』

~『iZa』2022年1月14日配信記事 より(青柳のコメント)

青柳の今季の目標は「開幕投手」と、昨季よりも2つ多い「15勝」。新型コロナ陽性により「開幕投手」の座は逃してしまいましたが、15勝は十分達成可能な数字です。ファンが切望する「寅年、虎の大逆襲」を実現させるためには、エースが負けないことが不可欠です。

考えてみれば今季、中日・大野雄大の「完全試合」を阻止したのは、9回まで中日打線に得点を許さず、延長戦にもつれこませた青柳の好投があったからこそ(あの試合も、普通なら「9回完封勝利」でした)。もしかしたら、今度は青柳が大記録を達成するのでは……そんな予感すらしますが、さて?

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