「香港の投資会社」がハウステンボスを狙う本当の理由
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青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が7月25日、ニッポン放送「新行市佳のOK!Cozy up!」に出演。香港の投資会社に売却する方針で検討されているハウステンボスについて解説した。
ハウステンボス
7月21日、大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)が長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」の運営会社の株式を香港の投資会社に売却する方針で検討していることがわかった。新型コロナの影響で業績が悪化し、財務内容を改善する狙いがあるとみられる。
長崎県が進めてきたIR予定地の1つでもある
新行)ハウステンボスは1992年に開業し、2003年に会社更生法の適用を申請して経営破綻しますが、2010年にエイチ・アイ・エス(HIS)が買収。翌年には黒字化して経営を立て直しました。しかし、ここへきて香港の投資会社に売却されるという報道が出てきました。
峯村)長崎では、長崎県が推進するカジノを含む総合型リゾート施設(IR)の誘致を進めていて、ハウステンボスはIR予定地に含まれています。なぜIR誘致が進んでいたはずなのに、この話が出たのでしょうか。不可解です。
新行)売却することになったのか。
峯村)そしてもう1つ重要なのが、香港の会社という点です。実は長崎のIR自体、事業者を選ぶときも香港系の企業がいちばん有力だったと言われていたのです。
米軍基地や住宅地が隣接しているハウステンボス ~その場所に中国が建物を建てるということは安全保障上、大丈夫なのか
峯村)これも実は経済安全保障に絡んでいる話で、予定地のハウステンボスには米軍基地や幹部の住宅地がフェンス越しに隣接しています。なので、記者時代に現場周辺を取材しました。
香港企業には「パナマ文書」に登場する中国共産党の幹部に近い人物の名前
峯村)この香港企業を調べてみました。会社の幹部リストを調べたところ、2016年に国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ)の一員として取材をした「パナマ文書」に出てきた人物がいたことがわかったのです。世界各国の首脳や富裕層が、英領バージン諸島、パナマ、バハマなどのタックスヘイブン(租税回避地)を利用した金融取引で、資産を隠していたことが明らかになったものです。
新行)ありました。
峯村)マネーロンダリング(資金洗浄)をしている。あの「パナマ文書」に出てくる人物だったのです。
新行)そうなのですか。
峯村)当時、まさにその香港企業の幹部は、中国共産党の幹部の、マネーロンダリングを請け負っていたという話がありました。つまり、普通の香港企業ではなく、極めて中国共産党と密接な関係のある会社なのです。
オーストリア系の企業になり、そしてまた新たな香港の企業に ~なぜハウステンボスにこだわるのか
峯村)結果としてその香港企業は参入から外れて、オーストリア系の企業になりました。もうこの問題は解決したと思っていたら、別の会社ではありますが、香港の投資会社が関与したわけです。ここまで佐世保の地にこだわる理由は何なのでしょうか?
新行)そう思いますよね。
佐世保の安全保障上の重要性が高まっている ~そこにリンクか
峯村)そう思わざるを得ないですよね。一つの仮説として、安全保障が絡んでいるのではないかとみています。沖縄に重点的に配備されているアメリカ軍の一部を佐世保に移す計画があります。そこで佐世保の安全保障上の重要性が高まっている。そういうところの動きがリンクしている可能性は否定できません。
中国が民間のふりをして米軍と接点を持って情報を取る可能性も
峯村)ハウステンボスのなかを誰がどう買おうが、別に米軍基地から見えるわけではないし、住宅が監視されても関係ないと言う人もいるかも知れません。しかし、実は監視だけの問題ではないのです。
新行)監視だけの問題ではない。
峯村)これまで中国が国外の基地周辺の土地を買う時は、普通に民間企業を装ってやっています。ただ、気付いたときにはもう遅く、「えっ! こういうことだったの」となっているのです。
新行)気付いたときには。
峯村)だから、「何をするのだろう」ということを様々な可能性で考えなければならないのです。いくつかの仮説があるのですが、米軍の人の中にはカジノが好きな人が少なからずいる。そういう人たちが通いやすくして、米軍との接点を持って情報を取ろうとしているという思惑も、ゼロとは言い切れません。
新行)そこから情報を。
峯村)そう考えると、監視という小さな話ではなく、もっと大きなことを考えてくる可能性もあるということです。そこを全部排除するというわけではなく、「この会社はどのような会社なのか」というバックグラウンドを調べた上で、「本当に大丈夫なのか」と確認するべきです。これも経済安全保障なのです。
インテリジェンスと経済安全保障は両方なくてはならない
峯村)そういうところをしっかり検査したり、調査したりする機能が必要ですし、どこの日本の機関が調査できるのかということも問題になってくるのです。
新行)日本の機関が調査できるのか。
峯村)インテリジェンスと経済安全保障は、両方なくてはならないものです。セキュリティー・クリアランス(適格性評価)と言って、「この人がどれだけの情報を触れるか、触れないか」ということも調査しないとわかりません。「この企業が大丈夫か、怪しいのか」ということも調査しなければならないというところです。
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