第3極的存在「グローバルサウス」へ日米はどう対応するべきか

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明海大学教授で日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男が12月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米中対立のなかで第3極として存在する「グローバルサウス」について解説した。

第3極的存在「グローバルサウス」へ日米はどう対応するべきか

第7回アフリカ開発会議(TICAD7)で記念撮影に応じる安倍晋三首相(右から3人目)ら=2019年8月28日午後、横浜市 写真提供:産経新聞社

自由民主主義陣営・強権主義国家に入らない「グローバルサウス」の存在

飯田)WTOは世界のかなりの数の国々が加盟しています。そのなかで議論しようとすると、日本から見て当然、アメリカ側が有利な議論になるのではないかと思ってしまいます。アフリカなどには親中派も多いと言われますが、いかがですか?

小谷)「グローバルサウス」という言葉がよく使われるようになりましたが、近年はアメリカを中心とする自由民主主義陣営と、中露を中心とした強権主義国家に世界が二分されていると言われます。

飯田)自由民主主義陣営と強権主義国家に。

小谷)実はそのどちらにも属していない、あるいは両方に属している国がおそらく100ヵ国以上あると思いますが、これらは「グローバルサウス」と呼ばれています。

飯田)グローバルサウス。

小谷)かつて米ソ冷戦のときも、アジアやアフリカの多くの国が「第3極」と言われたわけですが、そのときに比べてグローバルサウスは影響力、さらには国力の面でも大きい。今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、多くのグローバルサウスの国々が侵略自体には反対し、影響力を示しています。

グローバルサウスからの印象が悪いアメリカ ~「民主主義サミット」に呼ばれた国と呼ばれなかった国

飯田)グローバルサウスを取り込もうとしたときに、アメリカは印象が悪いのですか?

小谷)アメリカの印象はよくありませんし、扱いが下手だと思います。バイデン大統領は、「いまの世の中は民主主義国家と強権主義国家に分かれている」と言ってしまったのです。

飯田)2つだと。

小谷)グローバルサウスからすれば、「では自分たちはどちらに見られているのか」と考える。2021年末にアメリカが「民主主義サミット」を開催しましたが、そこに呼ばれた国と呼ばれていない国で分かれてしまったわけです。東南アジアでも、呼ばれる国、呼ばれない国がありました。「世界を二分してしまっているのはアメリカではないか」という批判もあります。

「自由で開かれたインド太平洋」における日本の経済支援やインフラ支援をアメリカは学ぶべき

小谷)その点、日本は「自由で開かれたインド太平洋」という名の下に、その国の政治体制は問わず、経済支援やインフラ支援を行い、地域全体をまさに自由で開かれたものにしようとしてきましたので、その点は評価されています。そこはアメリカも学ぶところがあると思います。

飯田)ある意味、日本が行ってきた方法は、包み込むというか、あまり踏み絵を踏ませない。価値観としてはアジア的かも知れませんが、日本ができる余地のようなものは大きいわけですか?

民主主義的な国を重視してしまうバイデン政権 ~民主主義国家だけにテコ入れをしても、ASEAN全体は動かない

小谷)非常に大きいと思います。東南アジアなどは、いろいろな政治体制の国がありますが、バイデン政権はどうしても民主主義的な国を重視するやり方です。

飯田)民主主義的な国を重視する。

小谷)でもASEANはコンセンサスで決断していきますので、民主主義国家だけにテコ入れをしても、ASEAN全体は動かないわけです。それを日本側はうまくフォローしてきた側面があります。

アメリカ・アフリカ首脳会議の開催中も2ヵ国会談を設けないアメリカ ~バイデン大統領と1対1で話したことが国内的にアピールできるアフリカ首脳だが

小谷)現在、ワシントンでアメリカとアフリカ各国の首脳会議が開かれていますが、50ヵ国近く呼んだものの、どことも2ヵ国会談はやらないというのがアメリカのやり方です。その点、日本は必ず短時間でもみんなと話す時間をつくります。アメリカはその辺りがまだ下手だなと思います。

飯田)いくら全体で集まる機会をつくっても、1対1で行うものには敵わないのですか?

小谷)アフリカの首脳からすると、バイデン大統領と1対1で話せれば、国内的にアピールできる材料になるのです。その機会を提供することもアメリカとアフリカ諸国の関係強化につながっていくのですが、大統領は忙しいのでやらないというのは、外交として下手だと思います。

飯田)仮に立ち話的なことであっても、「1対1で握手した」というところを見せる、写真を撮るということが大事になってくるのですね。

小谷)「自分はアメリカの大統領と話せる」というのが、アフリカ諸国からすれば、国内にアピールできる材料になるわけです。

アフリカ各国に積極的にアプローチする中国の外交に負けているアメリカ

飯田)一方で、中国は習近平氏もそうですし、王毅国務委員兼外相などは積極的に訪問しています。ああいう姿勢が向こうでは評価されるのですか?

小谷)習近平国家主席や中国の外務大臣は、最初の外遊先がアフリカになっているのです。アフリカでの中国の影響力を高めるという戦略の下に進んでいますので、それに対してアメリカの外交は負けていると言わざるを得ません。

日米でどのようにしてグローバルサウスにアプローチするかが課題

飯田)そこを日本がフォローできるかと言うと、国会会期中は海外出張がほとんどできないなど、こちらはこちらで難しいですね。

小谷)アフリカ開発会議(TICAD)も、岸田総理が新型コロナに感染して行けないということもありました。

飯田)そうですね。

小谷)そこも含めて、日米でどうやってグローバルサウスにアプローチするかが重要になってくると思います。

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