八重山日報・編集主幹の仲新城誠氏が12月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾有事が囁かれるなか、中国の脅威が現実的になりつつある八重山諸島の現状について語った。
中国の脅威が現実的になった国境の島・石垣島
2022年8月、中国は日本の排他的経済水域(EEZ)内に弾道ミサイル5発を撃ち込み、沖縄県の国境の島を震撼させている。一方、中国海警局の船による尖閣諸島周辺への領海侵入や航行は、12月27日で9日連続となっている。
飯田)中国の軍事的脅威について、一気に現実感を帯びてきたように思えますが、8月には弾道ミサイルが撃ち込まれました。皆さんはいま、どのような思いを抱いていらっしゃいますか?
仲新城)これまでは台湾有事や尖閣諸島の問題と言っても、住民が明確に中国の脅威を感じることは、それほどなかったと思います。しかし最近、「自分たちの問題だ」と明確に意識し始めたような空気を感じます。
飯田)日本政府の対応は、電話での抗議のみだったという話がありました。
仲新城)かなり弱腰な感じで、中国に対する明確な抗議の姿勢を感じられなかったように思います。
中国に対して平和外交でこれまで明確に抗議したことがない玉城沖縄県知事 ~言うことは米軍基地の廃止ばかり
飯田)県側の反応はいかがでしたか?
仲新城)玉城デニー知事は、中国に対してずっと平和外交で、尖閣諸島問題も含め、これまで中国に明確に抗議したことはありません。
飯田)安全確保の道筋など、島民に対しての投げかけなどもあまりないということですか?
仲新城)玉城デニー知事は、一貫して「平和外交」ということしか言わないので、実際どこまで離島の厳しい状況を理解しているのかも、離島に住んでいる我々にはわかりません。彼が言っているのは米軍基地の廃止ばかりで、なかでも辺野古移設の反対しか彼の口からは出てこないので、本当に沖縄の安全保障を考えているのかどうかは疑問だと思います。
2023年3月に石垣島に陸上自衛隊の駐屯地が開設予定
飯田)島のなかでは、「台湾有事は我々にとっても有事である」ということについて、想定の話もされるのでしょうか?
仲新城)各市町村では、飛行機でも1日あたり何万人を運ぶなどという計画自体はつくられているのですが、八重山だけでも約5万人の人口があるので、実際に有事になったら、そんな暇があるのかという懸念は拭えません。
飯田)陸上自衛隊の駐屯地が石垣島にもいよいよできるということですが。
仲新城)2023年3月くらいには開設すると言われています。
飯田)規模感などは、ある程度わかりますか?
仲新城)500~600人規模のミサイル部隊の隊員が移住してきます。
空港や港湾などのインフラが整備され、相手方の標的になる石垣島や八重山の島々
飯田)やはり、それが相手に攻めさせないことにつながりますか?
仲新城)石垣島や八重山の島々は、空港や港湾などのインフラが整備されていて、自衛隊が整備されていようがいまいが、相手方の標的になるのはほぼ間違いないような状況になっているのです。
飯田)なるほど。「基地があることによって狙われるのだ」というような批判がいつも出ますが、そもそもその前から標的になっているということですか?
仲新城)基地があるから攻められるわけではないと思います。
日本の漁船が尖閣周辺で操業しようとすると中国艦船が妨害行為を行う ~日本の巡視船がいなければ拿捕されてしまう
飯田)尖閣には、地元漁民の皆さんも近付けない状況が続いているのですか?
仲新城)漁民が周辺で操業しようとすると、中国の艦船が接近してきて妨害行為のようなことをします。日本の巡視船が日本の漁船を警護していますけれども、巡視船がいなければそのまま中国に拿捕されるのではないかという状況です。
飯田)12月22~25日にかけて、70時間以上にわたって領海に居座り続けましたよね。
仲新城)あのときは日本の漁船が操業を続けて頑張ったのですが、その分、中国の船もずっと居座り続けて、周辺から離れませんでした。
飯田)東京では「中国海警局の船がいる」ということだけが報じられていますが、あそこで操業し、踏ん張っていた漁民の皆さんがいらっしゃったのですね。
仲新城)数は少ないのですが、ここは「日本の領土だ」ということも含めて、操業している方々はいますから。
中国艦船から命懸けで日本漁船を守る海保
飯田)海上保安庁も、もちろん守るために近くにいる。
仲新城)中国艦船を上回る勢力で警護はしているのですが、中国側の船はいつでも増援を受けたら増やせる体制にいます。日本の漁船が2隻、3隻と増えていくと、中国側もさらに応援で入ってくるので、一触即発の状況でした。
飯田)東京で報じられているところでは、逆に漁民の皆さんが行こうとするのを、海保が「危ないから来ないでください」と止めているというような報道もあります。しかし、仲新城さんのお話を聞いていると、むしろお互いに協力しながら、「どう主権をきちんと主張するのか」と考えているように思えます。
仲新城)尖閣周辺の漁業は誰でもできるわけではなく、漁業者でないと出航を認められません。漁業者が向こうに自分の足で行くことに関して、日本政府が止めることはありません。
飯田)漁業者が行くことを止めることはない。
仲新城)それに関して、「命懸けで日本の漁業を守る」という気概を持って、海保の方々は日夜奮闘しています。
飯田)海の男たちの心意気を感じますね。
仲新城)そうですね。あの周辺から帰って来た漁業者の方々に話を聞くと、みんな「海保がずっと守ってくれた。中国の船を近付けないようにしてくれた」と言います。
台湾有事は尖閣有事 ~しかし、沖縄のなかでもある本島と離島の温度差
仲新城)日本が尖閣を国有化したのは10年ぐらい前です。それを口実に、中国は領海侵入を常態化させていきました。単なるパフォーマンスなら10年も続かないと思います。本気で尖閣諸島を獲りに来ているのだと思うし、中国側の宣伝では、尖閣諸島は台湾に付属する島々ということになっているので、台湾有事と尖閣有事は連動して起こるのではないかと思います。
飯田)向こうのロジックでは、「台湾を獲る=尖閣も獲る」ということになってしまう。
仲新城)そうなります。
飯田)日本全体で共有しなければならない意識の1つですね。
仲新城)そうです。ただ、既に沖縄のなかでも本島と離島では温度差があり、分断されている感じもするので、「日本が一丸となって尖閣や離島を守る」という雰囲気には程遠いと思います。
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