ジャーナリストの須田慎一郎が1月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2022年12月に発表された防衛増税について解説した。

2022年12月28日、会議のまとめを行う岸田総理～出典：首相官邸HP（https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202212/28kaigi.html）

自民党が増税に関するチラシを制作

飯田）増税についてですが。

須田）経済、もちろん政治も含めて、増税が大きな影響をもたらすのではないでしょうか。12月8日に突然、防衛費増額に関連して財源確保のために増税を行うという方針が、岸田首相から打ち出されました。当初は12月15日までに決めろと。

飯田）1週間で。

須田）自民党の税制改正大綱に盛り込むよう、指示が出たわけです。さすがに1週間では無理ということで、12月16日、8日間で決まりました。党内議論もほとんどありませんでした。

飯田）8日間で。

須田）党内の増税反対派というか、日本経済をどうやって再生、回復させていくのかという経済優先派の側からすると、「回復に向かう途中で冷や水をかけるのか」という批判が出てきた。自民党内の政調会は大荒れに荒れて、その状況で年末に突入したのです。

「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置Q&A」　～自民党が密かに増税説明のチラシを制作

須田）その税制改正大綱を見ても、「適切な時期に増税します」と言ったきり、いつやるのかどうかもわからない。そのときに岸田政権が続いているのかどうかもわからないという状況で、曖昧戦略に突入したのかと思いきや、驚くようなものが出てきたのです。

飯田）驚くようなものが。

須田）昨年（2022年）末の12月27日に完成したと言われているのですが、自民党が密かにあるチラシをつくったのです。

飯田）チラシですか？

須田）「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置Q&A」というタイトルのチラシです。「税制措置とは何か」と普通の人は思うのだけれども、これは増税です。

飯田）要するに増税を説明していると。

須田）増税を説明するという内容のチラシです。

飯田）そんなに大きなものではなく。

物価高など最近の家計の状況に配慮して、当分の間、個人の所得税を増額しないために、「復興特別所得税」を1%引き下げ、負担額は現状と変わらないようにします

須田）目的と狙いは何かと言うと、年末年始に各国会議員は地元に帰るではないですか。

飯田）帰りますね。

須田）忘年会や新年会もあるでしょう。

飯田）挨拶回りもあります。

須田）そのときに有権者や支持者、支援者から「増税するというのは本当か？」と、突き上げを食らうようなことは必至です。

飯田）そうですね。

須田）そのときに「このチラシを活用してくださいね」ということで、Q&Aをつくったのです。「こう聞かれたらこう答えなさい」と。それを配りなさいということで、12月27日に急遽、国会議員に配布されたということです。内容を見ると、有権者から見ていちばん関心があるのは所得税ではないですか。

飯田）そうですね。

須田）それに対するQの例題として、

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『個人の所得税の増額はないと言ったのではないですか？』

～『防衛力強化に係る財源確保のための税制措置Q&A』より

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須田）……とあります。当然聞くではないですか。

飯田）聞きますね。

須田）それに対するアンサーは、

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『物価高など最近の家計の状況に配慮して、当分の間、個人の所得税を増額しないために、復興特別所得税を1%引き下げ、負担額は現状と変わらないようにします』

～『防衛力強化に係る財源確保のための税制措置Q&A』より

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須田）……とあります。しかし、これで納得するでしょうか？

復興特別所得税は期間が決まっている　～それを延長するということは増税ということ

須田）このチラシのツッコミどころは2つあります。復興特別所得税について、我々は福島の復興のために増税を飲むという形なのです。防衛費の増額に関しては、飲まないわけではないけれども、他にいろいろと手立てがあるのだから、それをどうして考えないのか。「負担額は現状と変わらないから、所得税の増税はしません」ということですが、期間は延長されますよね。それは増税ではないですか。

飯田）そうなのですよね。「特別所得税」は期間が決まっているので、そろそろ終わるという話だったのに、それを延ばしてまた取るのかということになります。本来は2%下がるものが1%しか下がらないという話なのだけれども、そこが飛ばされています。

須田）それで果たして納得してもらえるのかどうか。

今回の増税が政局になる可能性も

飯田）そういう経緯を知らなければ、「所得税が下がるのか。下がるなら別にいいよな」という感じになってしまうけれど、本来、下がるべき額まで下がらない。

須田）それを有権者があとから気付いたときにどうするのか。いまは誤魔化せるかも知れませんけれど。

飯田）いろいろな情報が出ていますからね。

須田）増税という部分は、官邸もピリピリしていることは間違いありません。「いつから増税するのか」をめぐって、まず自民党内部、そして国会が始まれば野党が岸田政権を追及することになるでしょう。場合によっては、増税が政局になるのではないでしょうか。

増税が決定していないのになぜチラシがつくられたのか

飯田）そもそも、まだ決定していないのに、こういうチラシが出るのはおかしくないですか？

須田）おかしいのですよ。既成事実ということになります。

飯田）決まったかのようなQ&Aですよね。

須田）ある政治家の大臣経験者に「これを配るのですか？ 」と聞いたのですけれど、「こんなものを配ったら地元で大変なことになってしまうから、配るわけがない」というようなことを言っていました。

飯田）これから統一地方選が控えているのに、何を考えているのだと。

須田）統一地方選挙で有権者は、これについて怒ってくるだろうと思います。