ジャーナリストの佐々木俊尚と筑波大学教授の東野篤子が12月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナのゼレンスキー大統領のアメリカ議会訪問について解説した。
ゼレンスキー大統領、アメリカ議会を訪問し演説か
米ニュースサイト「アクシオス(Axios)」は12月20日、ウクライナのゼレンスキー大統領が週内にワシントンの米議会を訪問し、演説する計画があると報じた。
飯田)ゼレンスキー大統領がウクライナを出る可能性がありますが、これまでにこういうことはありましたか?
2022年7月はオレナ・ゼレンスキー大統領夫人が訪米 ~兵器の供与を強く要請か
東野)ありませんね。ゼレンスキー大統領は戦争が始まってから、ずっとウクライナに居続けていました。2022年7月には、オレナ・ゼレンスキー夫人が米議会で演説したことはありましたが。
飯田)大統領夫人が。
東野)逆にアメリカのバイデン大統領がウクライナへ行くという話もあったのですが、結局のところ、ウクライナ国内には入らず、国境近くのポーランドに行き、アメリカの支援関係者に激励を行ったということです。
飯田)ポーランドへ行きましたね。
東野)ですので、今回行くとなると、歴史的な状況になると思います。大きなポイントとなるのは、「兵器の供与」だと思います。これを強くアメリカ側に要請するのではないでしょうか。
「ウクライナなしにウクライナのことを我々は決めない」ブリンケン国務長官
飯田)アメリカ人のプロバスケットボール選手が拘束されて、捕虜交換ではないですが、交換するような形でロシアの武器商人に関する交渉がありました。そこからの連想で、「実は米露で話し合っているのではないか」という指摘もありますが、その辺りについてはいかがですか?
東野)実際に米露の話し合いは頻繁に行われていますし、あまり隠してもいないと思います。「誰と誰が会った」という報道は常にあります。
飯田)米露の話し合いは。
東野)しかし、多くは核兵器の使用に関して、アメリカ側がくぎを刺すような動きが多かったと思います。先ほどの捕虜交換の話も、アメリカとロシアの間で頻繁に行われていたのだろうと思います。
米露が話をしているのは直接的な事柄について
東野)一方、アメリカ側は非常に神経を使っていて、特にブリンケン国務長官などは「ウクライナのことをウクライナなしで我々は決めません」と頻繁に言っています。
飯田)ウクライナなしで決めることはないと。
東野)ウクライナに和平を求める、また停戦させるような話をするというよりは、米露関係のより直接的な事柄に関して、話をしているのではないでしょうか。
飯田)そうすると、米露が(ウクライナの)頭ごしに動こうとしているので、ゼレンスキー氏が行ってくぎを刺そうということではなさそうですね。
東野)戦争が長引いてくると、「ウクライナだけに任せておくわけにはいかない」というような世論が出てきてもおかしくありません。現状でもあるのだろうと思います。
飯田)ウクライナだけに任せられないと。
東野)アメリカやヨーロッパが圧力を掛けて、「ウクライナに諦めさせた方がいいのではないか」という話は、強くはありませんが、常に存在しているのだと思います。しかし、「それは我々の望むところではない」ということです。いまはロシア側と交渉する意志がウクライナ側にはないし、それはロシア側も同じだと思います。
アメリカが武器の供給をやめることは、ウクライナの敗北を意味する
佐々木)米軍のウクライナに対する兵器供与が続いていて、米軍の備蓄そのものがなくなってきているという話があります。その辺りで、「もうそろそろアメリカは手を引いていいのではないか」という世論のようなものが高まっている状況はないのですか?
東野)実際に「ウクライナばかり支援するのはどうなのか」というような話は、やはり出ているのだろうと思います。しかし、現在のコンセンサスとしては、「ではロシアに侵攻させたままでいいのか」と考えると、アメリカとしては受け入れ難いということです。
飯田)ロシアに侵攻させたままでいいのかと。
東野)議論はあるでしょうし、提供するからにはしっかり兵器の管理を行う。これは必要最低限のことだとアメリカは主張しているので、兵器は提供しつつ、管理もしっかりしていく。供給をやめることがウクライナの敗北を意味するというのは、最低ラインのコンセンサスとして、アメリカ側にもあるのだろうと思います。
12月21日にホワイトハウスでゼレンスキー大統領とバイデン大統領が会談という報道
飯田)米CNNテレビは12月20日、ゼレンスキー大統領が21日にホワイトハウスを訪問し、バイデン大統領と会談する計画があると報じたということです。
佐々木)きょう(12月21日)ではないですか。
飯田)急転直下ですね。
佐々木)電撃的な報道です。
ゼレンスキー大統領はホワイトハウスをどのような恰好で訪問するのか
飯田)中間選挙が終わって、(2023年)1月には新しい議会になります。その前にメッセージを出しておくというのが、計算としてあるのでしょうか?
東野)そうだと思います。アメリカにおいて、さまざまな異論も出始めているということは、ウクライナがいちばんわかっていると思います。冬も直前になり、自分たちにとっては苦しい局面で戦っているにもかかわらず、ここで支援の手を緩められたら困る。「早く勝ちたいからもっと武器をくれ」というようなメッセージを強く打ち出すのでしょう。
飯田)正面で戦っているのはもちろんありますが、挑戦の部分が大事になってきますね。
佐々木)SNSの時代なので、世論をどのように味方につけるのか。ゼレンスキー大統領は、テレビに出るときに必ずスーツではなく、ミリタリーファッションを着ています。見せ方が非常にうまい人なので、訪問が実現した場合、どのような格好で行くのか。ホワイトハウスにもミリタリーファッションで行くのか、その演出が気になるところです。
東野)バイデン大統領がどのようにそれに合わせるのかも気になりますね。
この記事の画像(全1枚)
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。