坂東彌十郎「これまでに21回も行ったスイス」の魅力
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(12月21日放送)に歌舞伎俳優の坂東彌十郎が出演。たびたび訪れるスイスについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。12月19日(月)~12月23日(金)のゲストは歌舞伎俳優の坂東彌十郎。3日目は、2代目市川猿翁との思い出、海外への思い、スイスでの山歩きについて---
黒木)2代目の市川猿翁さんのところへ門下入りされて、「宙乗り」など、さまざまな新しいことへ挑戦なさったり、古典も取り入れたり。そして、海外公演があるのですよね?
坂東)80年代は、2年に1回は海外公演をされていました。いろいろな国に連れて行っていただきました。
黒木)海外でも、興奮の嵐だったのではないですか?
坂東)海外でのカーテンコールには驚きました。スタンディングオベーションで劇場の床を足で「ドンドンドンドン」と踏み鳴らすのです。涙が出るほど感動しました。
黒木)80年代ですか?
坂東)私が最初にご一緒したのが83年だったと思います。
黒木)それで海外へ興味を持たれたということなのですが、息子さんの坂東新悟さんも海外へ興味を持たれて、自主公演の「やごの会」で、ヨーロッパ公演をなさったと。
坂東)自主公演でやらせていただきました。
黒木)ご子息は女形でいらっしゃるのですよね?
坂東)彼は子役から出ていたのですが、女形が向いているなと思ったので、当人にも言ったら、「やってみたい」ということでしたので、女形でやらせていただいております。彼も背が高いのです。
黒木)芸の継承はどうなさっているのですか?
坂東)私とは違う役柄ですから、逆に私がうるさく言わなくてもいいかなと。子どものころは、動き1つにしても礼儀にしても厳しくしていました。
黒木)厳しくなさっていたのですね。
坂東)彼が二十歳になって、女形としてやっていくと決めてからは人様に教えてもらうようにして、私は何も言いません。これからは一緒に飲めるかなと思ったら、ぜんぜん近寄って来なくなってしまいましたね。
黒木)スイスがお好きだということですが。
坂東)猿翁さんは山がお好きだったので、オペラの演出をヨーロッパでなさったときに助手で付いていくと、休みの日に山へ連れていってくれるのです。長い時間、展望台で腕を組んで、景色を「ジーッ」と見ていらっしゃるのです。「あんた、私たちは、人様に感動してもらう仕事だから、同じ感動をしていたらダメなんだよ。人様の10倍も100倍も感動して、やっと人様に感動を与えられるのだ。感動しなさい」と言われました。
黒木)山を見て。
坂東)いい景色を見ること。美味しい食べ物を食べること。自分の感性を磨けと。それはいまでも続けています。
黒木)雄大だったのですね。それに魅せられて、何回もスイスに行かれたと。
坂東)スイスは、21回ですかね。
黒木)おひとりでも行かれるのですか?
坂東)ほとんどひとりです。それができるのが、スイスのいいところです。治安もそれほど悪く、気を付けていれば大丈夫です。
黒木)治安がいいのですね。
坂東)交通の便がよく、山の頂上にも楽に行くことができます。歩きやすく、たくさん歩くので身体の調子がよくなるのです。体脂肪率が17~8%になって、帰って来ますから。
黒木)それはすごいですね。
坂東)そのかわり最初の4日間くらいは、筋肉痛でベッドから命懸けで起き上がらなければなりません。それを越すと、いくら歩いても筋肉痛にならないですが。
黒木)健康の面でも精神面でも、とても合っていらっしゃるのですね。
坂東)合っていますね。
黒木)スイスは山歩きも楽なのですね。私、行ったことがないのでわかりませんが。
坂東)ぜひコーディネートをさせてください。
黒木)スイスのどこへ行かれるのですか?
坂東)すべて行きます。
黒木)すべて!
坂東)四国くらいの大きさで、列車の本数や時間も正確ですので移動しやすいのです。朝の天気予報を見て、滞在しているところの天気が悪いと、「山の向こうは天気いいな」と、すぐ移動してしまうわけです。ホテルも当日取りますから。
坂東彌十郎(ばんどう・やじゅうろう)/ 歌舞伎俳優
■1956年(昭和31年)5月10日・東京都出身。屋号:大和屋
■往年の銀幕の大スター・初代坂東好太郎の三男として生まれ、昭和48年5月歌舞伎座『奴道成寺(やっこどうじょうじ)』の観念坊で坂東彌十郎を名のり初舞台。
■昭和53年2月『文七元結(ぶんしちもっとい)』の鳶頭役で名題(なだい)昇進。
■昭和58年から15年間、三代目市川猿之助の門下に入り、猿之助一門の若手で構成する21世紀歌舞伎組のメンバーとして活躍
■猿之助演出のオペラ「コックドール」等で演出助手を務め、坂東玉三郎の「夕鶴」では演出も務めた
■コクーン歌舞伎、平成中村座など、十八代目中村勘三郎との共演も多く、平成中村座の海外公演にも参加
■2014年坂東彌十郎・新悟自主公演「やごの会」を立ち上げ、日本橋劇場にて第一回公演を開催。また2016年にはフランス、スイス、スペインの3ヵ国を巡る「やごの会」ヨーロッパ公演を開催した
■映像作品でも活躍され、2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では北条時政役を演じ、TBS「クロサギ」では主人公の復讐相手となる詐欺師を演じている
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳