市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助、花形役者がそろい踏み!シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為』 しゃベルシネマ【第9回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
今月から始まりました「しゃベルシネマ」。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、シネマ歌舞伎。
『歌舞伎NEXT 阿弖流為(アテルイ)』完成披露上映会の模様を交えながら、作品の魅力を掘り起こします。

映画館で観る歌舞伎、それがシネマ歌舞伎!

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歌舞伎の舞台公演を撮影し、映画館でのデジタル上映で楽しむ新しい観劇空間、シネマ歌舞伎。
俳優たちの息づかい、衣装や持ち道の細かな部分まで堪能することが出来るその映像の美しさは、生の舞台とはひと味違うシネマ歌舞伎ならではの魅力です。
サウンドも舞台の臨場感を立体的に再現し、まるで劇場の特等席で舞台を楽しんでいるよう。
歌舞伎の持つ本来の面白さ、美しさをあらゆる角度から追求して制作されています。
「デジタル」と「歌舞伎」。
一見すると相反するようにも思えますが、この融合が独特の化学反応を生み、これまでに20以上の作品が全国の映画館で公開されました。
『歌舞伎NEXT 阿弖流為』は、シネマ歌舞伎第24作目となります。

そもそも「阿弖流為」って何???

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「阿弖流為(アテルイ)」とは、歴史上の人物で蝦夷(えみし)の軍事指導者の名。
20代の頃に彼の存在を知った市川染五郎さんは「いつかは歌舞伎の題材に」と、長年構想を温めていました。
それが結実したのが、2002年。
劇団☆新感線とタッグを組み、いのうえ歌舞伎として『アテルイ』を上演。
虐げられた北の民・蝦夷の闘いと運命を現代的な視点と壮大スケールで描き出し、芸術性と娯楽性を兼ね備えた作品として高く評価されました。
さらに13年の時を経て、染五郎さんといのうえひでのりさん、中島かずきさんが再びタッグを組み歌舞伎化した作品が『歌舞伎NEXT 阿弖流為』なのです。

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シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為』は、2015年に新橋演舞場で上演された舞台を撮影、編集したもの。
蝦夷を率いるリーダー・阿弖流為と、蝦夷を討伐する坂上田村麻呂。
敵同士でありながら、奇妙な友情で結ばれる若き2人の男の戦いを軸に、阿弖流為を導く謎の女・立烏帽子(たてえぼし)をはじめとする、一筋縄ではいかない人物たちが織りなす物語。
阿弖流為を市川染五郎、 坂上田村麻呂を中村勘九郎、立烏帽子を中村七之助がそれぞれ好演。
坂東彌十郎、市村萬次郎、片岡亀蔵らが脇を固めています。
圧倒的なスピード感、出演者たちの迫力ある立廻り、壮大なドラマ展開。
客席と舞台が一体化した、公演当時の強烈なグルーヴを体感出来ると同時に、舞台とはまた違った新たな観劇体験を得ることが出来ます。

6月25日の全国公開に先駆けて開催された『歌舞伎NEXT 阿弖流為』完成披露上映会に、主演の市川染五郎さん、中村勘九郎さん、中村七之助さんが登壇。
私、八雲ふみねが司会を務めさせていただき、上演当時のエピソードを伺いました。

新たな歌舞伎、面白いものを作ろう!一丸となって突き進んだ日々を語る。

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染五郎さんは「『歌舞伎NEXT 阿弖流為』は合戦物なのでとにかくアクションシーンが多かったですね。台本には『なぎ倒す』と一言書いてあるだけですが、実際の立ち回りは激しくて緻密で…。次から次へと何十人もの人を斬らなければいけないハードなものでした」とのこと。
劇団☆新感線ならではのスピード感あふれる殺陣は、スクリーンで観ると迫力倍増。
劇場での臨場感をそのまま体感することが出来るなんて、贅沢ですよね。

「『歌舞伎NEXT 阿弖流為』は染五郎さんが発信する新たなスタイルの歌舞伎、第1弾。それだけにカンパニー全員、稽古の段階からアツイ思いで取り組んでいたと思います。その場にいることが出来、本当に幸せでした」と作品への思い入れを語るのは、勘九郎さん。
その一方で「上演を重ねる毎に、シーンによっては小ネタの部分がどんどん変化していったんですよ。このシネマ歌舞伎の撮影日はどうなってたかなぁ…」と、ご自身のお芝居について振り返ってらっしゃいました。

舞台は生もの。
そのライブ感を体感出来るのも、シネマ歌舞伎ならではの楽しみですね。

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さて、歌舞伎の世界には通常、いわゆる“演出家”は存在しません。
しかし本作『歌舞伎NEXT 阿弖流為』では劇団☆新感線での上演時と同様、中島かずきさんといのうえひでのりさんがそれぞれ、脚本・演出を手がけています。

七之助さんが、いのうえさんの演出で印象的だったことと言えば…。

「いのうえさんの演出は『二歩歩いて左を向いてから台詞を言う』という風に型が決まっていて、その型にどう感情を乗せていくか…というスタイル。歌舞伎と似ているなと思いました。それまでは新感線出身の古田新太さんたちのお芝居を見ていて『なんて自由に芝居をしてるんだろう…』と思って見てたんですけど(笑)、彼らも普段はいのうえさんの演出を受けているわけで…。型を踏襲しながらも自由自在に芝居が出来るという意味では、劇団☆新感線の役者さんはすごいな、と。自分もそこまで到達しなければと思いました」と、楽しそうにお話して下さいました。

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シネマ歌舞伎を観た時にいちばん驚くのが、単なる「劇場中継」ではないということ。
10年を超える経験の積み重ねと最新の技術を駆使することで、毎作品、その進化を続けています。
本作『歌舞伎NEXT 阿弖流為』では、シネマ歌舞伎製作史上でも最多となる19台のカメラを劇場に仕掛け、躍動感あふれる舞台をあらゆる角度から捉えています。

「シネマ歌舞伎は何度やっても我々は疲れない。年も取らない!映像なので一生残るし、時が経つほど価値が上がるのがシネマ歌舞伎だと思います」と、染五郎さん。
歌舞伎俳優たちの至極の芸、いまこの瞬間を捉えたシネマ歌舞伎は、一見の価値アリですよ。

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これぞ新しい歌舞伎!新たなエンターテインメント!
シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為』は2016年6月25日から東劇、新宿ピカデリーほか全国公開です。

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シネマ歌舞伎第24弾『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり(劇団☆新感線)
出演:市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助、坂東新悟、大谷廣太郎、中村鶴松、市村橘太郎、澤村宗之助 、片岡亀蔵、市村萬次郎、坂東彌十郎 ほか
公式サイト http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/

連載情報

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シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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