待望のフルトン戦実現か 井上尚弥「2階級で4団体統一」への道のり

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、スーパーバンタム級2団体王者、スティーブン・フルトン(米国)との対戦が合意に達したと報じられた、ボクシング・井上尚弥選手のエピソードを紹介する。

待望のフルトン戦実現か 井上尚弥「2階級で4団体統一」への道のり

【ボクシング 世界バンタム級4団体王座統一戦 井上尚弥対ポール・バトラー】4団体統一王者となった井上尚弥はベルトを抱えてガッツポーズ=2022年12月13日、東京都江東区・有明アリーナ(代表撮影) 写真提供:産経新聞社

『色々と噂が飛び交っている まじでやれるんか!?!? やってやろうじゃねぇか!!!』

~井上尚弥ツイッター(2023年1月19日のツイート)より

日本時間の1月19日、複数の米メディアが報じた「井上vsフルトン戦」合意のニュース。試合を配信するスポーツ専門局「ESPN」は「5月に日本で開催予定」と具体的な日程まで報じていますので、かなり実現性は高いとみられます。

現在スーパーバンタム級(以下、Sバンタム級)で2本のベルトを持つフルトンは、WBC王座を1度、WBO王座を2度防衛。プロでの戦績は21戦全勝(8KO)という無敗のチャンピオンです。

2人の対決は、かねてからボクシングファンの間で「屈指の好カード」「ぜひ観たい」と言われていたもので、井上本人もツイッターでさっそく反応。スーパーバンタム転向の初戦が、いきなりタイトルマッチになる可能性が高まってきました。

昨年(2022年)12月13日、WBOバンタム級王者、ポール・バトラー(英国)との統一戦をKOで制して、アジア人として史上初となる4団体完全統一を果たした井上。快挙達成からちょうど1ヵ月後の1月13日、全ベルトの返上と、1階級上のSバンタム級への挑戦を表明しました。

「バンタムではもう戦いたい相手がいない」と言っていた井上にとって、タレント豊富なSバンタム級への転向は予定の行動で、すぐにでもこの階級の王者との対戦が観たいところですが、「初戦からいきなりタイトルマッチは難しいだろう」と言われていました。

現在Sバンタム級では、2人の王者が2本ずつベルトを分け合っています。1人が、WBC・WBO王者のフルトン。もう1人がWBAスーパー王者とIBF王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)です。

井上としてはこの2人を倒せば、目標とする史上初の「2階級で4団体統一」が達成できるのですが、マッチメイクはそう簡単にはいきません。アフマダリエフは手を負傷したため、昨年6月から戦線を離脱。復帰してもまずマーロン・タパレス(フィリピン)と防衛戦を行う義務があり、その前に井上と対戦することはできないのです。

またフルトンも、WBC・WBO統一戦を戦った宿敵、ブランドン・フィゲロア(米国)との再戦が報じられていました。フィゲロアはフルトンに敗れたあと階級を上げ、現在WBC世界フェザー級1位。このカードは「WBC世界フェザー級暫定王座決定戦」として2月25日に米国で行われる予定でした。

しかしフルトン陣営は、階級を上げてフィゲロアと戦うより、Sバンタム級王者として井上と戦うことを優先させた模様です。井上と戦わないままフェザー級に移ると「逃げた」という印象を持たれるのも、フルトンとしては不本意なのでしょう。井上にとっても、フルトンがフェザー級に上がる前に倒せばいきなり2本のベルトを手にできるわけで、願ったり叶ったりです。

フルトンは昨年6月、ESPNの取材で、ファンが望む井上との対戦についてこう語っていました。

『(井上戦は)とてつもないことだとは思わない。(俺がフェザー級に移る前に)間に合うようであれば現実的だと信じている。俺はビッグファイトをためらわないし、多くの人が見たいと思っている』

~『J-CASTニュース』2023年1月19日配信記事 より

フルトンはこれ以前にも、井上との対戦について何度か言及しています。2021年には、こんな挑発的な発言も。

『もし俺が奴との試合を分析するなら、俺が圧勝する。俺には小柄すぎるし、背も低すぎる。リーチも及ばないから、ずっとパワーショットを受け続けることもない』

~『THE ANSWER』2021年6月9日配信記事 より

井上の優秀さは認めながらも、体格差があるので自分には勝てないだろう、と豪語したフルトン。井上は身長165センチ、リーチ171センチ。対してフルトンは、身長169センチ、リーチ179センチとどちらも上回っています。

確かに、ライトフライ級からプロでのキャリアをスタートさせた井上と、スーパーバンタム級で戦ってきたフルトンでは体格が違います。しかし「井上のパンチ力とスピードは別格」とみる専門家は多く、元WBA・IBF世界ライトフライ級統一王者の田口良一氏は、井上vsフルトン戦が実現した場合の展望について、こうコメントしています。

『両者が対戦すれば井上が勝つと思う。彼のパンチ力は規格外。さらに3階級上のライト級の選手もKOできるレベルだ。階級を上げたことによって、よりパワーを爆発させられる』

~『サンケイスポーツ』2023年1月20日配信記事 より

また井上自身も、昨年、米国の老舗ボクシング雑誌『リングマガジン』電子版のインタビューで「階級を上げるごとに、より支配的と思える力を発揮してきたのはなぜか?」という問いにこう答えています。

『やはり減量から解放されたというのが大きいのでしょう。自分も含め、日本人ボクサーは減量し過ぎているというのはあるかもしれませんね。だから階級を上げていくにつれてパワーが増していく。スーパーバンタム級に上げたら、まだパワーが増しそうな気はしますし、より強いパンチが打てるんじゃないかと思っています』

~『Number Web』2022年9月6日配信記事 より(元のインタビューは米『リングマガジン』電子版)

また、フルトンについては、こう語っています。

『フルトンはテクニックがある選手ですね。自分の距離をしっかりとキープして戦う選手。ただ、フィゲロア戦しか見てなくて、あの試合は乱戦だったので、だからまだ何とも言えないところではあります。対戦したら、すごい技術戦になりそうだなというイメージはあります。やり易くはないんじゃないですか。リーチがありますし、距離の遠さをどれだけ感じるかというところかと思います』

~『Number Web』2022年9月6日配信記事 より(元のインタビューは米『リングマガジン』電子版)

フルトンは高いディフェンス力を持つ選手ですが、井上には踏み込みの速さという武器もあり、増量してもスピードが維持できるベストウェイトのSバンタム級なら、体格の差はあまり問題にならない気もします。

黒人選手との対戦は初めてになりますが、それも井上にとっては「楽しみ」の1つ。フルトンに勝ったあと、防衛戦を終えたアフマダリエフを撃破すれば、Sバンタム級でも4本のベルトが揃います。本人は慎重姿勢ですが、大橋ジム・大橋秀行会長はさらに上の「フェザー級でも」と意欲を見せており、井上の無双状態はどこまで続くのか? 「モンスター伝説」はまだまだ続きそうです。

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